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第十八話

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「ふぅ、やっと虫を倒したな」 

 地面を埋め尽くすほどの虫にコボルトたちはあぜんとしている。

「サクト、コボルトたちの傷を治してあげて」

「はっ!」

「な、なあ、あんたなにしたんだ?  なにか爆発したり、姿を消したり、なんかの魔法か」

 ゼオンがそう聞いた。 

「ああ、あれは精霊だよ」

「精霊?」

 おれは空気の小精霊を数体つくっていた。

「空気の魔力から作るの難しいんだよ。 なにせこのなにもないところの魔力を凝縮するの。 散っちゃってさ」

 そういうと、目の前にいたゼオンたちは顔を見合わせ、地面に膝を屈した。

「あんた...... いやマサトさま! 我らの主となってくれないか!!」

「ええ!?」

「あのバグラ、俺達の手にはおえない...... また襲われたら正直俺達は滅ぶ。 頼む! あんたの傘下にいれてくれ!」

「ええ? どうしたらいいの? サクト」

「よいではないですか。 かれらコボルトはプライドの高いものたち。 それがこのように頭を垂れるのは、それほど切迫した事情ゆえ、我らゴブリン族も受け入れることはやぶさかではありませんよ」

 そうにこやかにサクトはうなづいた。

「うーん、確かにこのままだとまたあいつらに狙われるな...... それにおれたちも、わかった仲間にしよう」

「本当ですか!! ありがたい!」

 コボルトたちは沸いた。

「ひとまず、おれの家で対策をしよう」


「さてどうするか?」

 おれたちはゴブリンの集落に戻り、相談する。

「あいつらは複数いて、魔王とやらを復活させるために行動しておるようですな」

「ああ、それで魔力を集めようとしている......」

 サクトとゼオンはそううなづく。

「だがどうしてだ? おれたちを殺して食べるつもりなのか?」

「わかりませんね。 何か魔力を集める方法でもあるのかもしれません」

「そうだね。 それがあるから、あたしたちをぶつけて共倒れを狙ったのかも」

 そうリオンがアプラに同意する。
 
(精霊ちゃん。 魔王ってなんなの?)
 
『よくはわかりません...... ただこの世界にはるか昔に現れてその強大な負の力で、支配者として君臨していました』
 
(負の力......)

「しかし、どうしますか? ゴブリンの集落と我らの集落はかなりの距離、どちらかを狙ってくるはず」

 ガオンの言葉にコゴルがうなづく。

「ここに支配するものたちはいないんだろう? なら二つの集落を繋げていけばいい」

「それができればいいですが。 この中間は【黎湖】《ブラックレイク》もありますし......」

「ブラックレイク?」  

「水などに多くの負の魔力がたまると生き物を殺す黎湖《ブラックレイク》となります。 川などなら流れて濃度が減りますが、湖はうごかないので生き物さえすめません」

「へえ」

「それはさければいいが、厄介なのは......」

 そう困ったようにゼオンがいった。

「ああ、それは手がある。 ただまずはコボルトを強くしよう」

「俺たちを強く......」

 ゼオンたちはキョトンとしている。


「おお! ゼオンなんか狼男みたいになったな」

「ええ、進化してウェアウルフになりました! ガオンとレオンはコボルトグラディエーター、ネオンはコボルトヒーラーへと進化し、他のものはコボルトチーフになりましたよ!」

 ゼオンはそういって喜んだ。 おれは倒した虫たちを魔力結晶化させ、コボルトたちを進化させた。

「なるほど! ゴブリンたちがあれほどの進化を見せたのはこのせいなんだね!」

「これではかなわぬはずだ」

 リオンとガオンは納得したようだ。

「ここは確か鉱山だよね」 

「ええ、我らには使い道はないですが」

「いま、サクトに製鉄技術を調べてもらっている。 ここの鉱物を使おう」

「よくはわかりませんが、皆に切り出させましょう」

「できるの?」

「ええ、我らは魔力をまとう【マジックオーラ】を使えますから」

「ならおねがい。 あとはその魔力をまとう技術をゴブリンたちにもおしえてくれる。 ここに家屋と家具などを作らせているから」

「それは助かる! わかりました。 ガオン、リオンにその役を担わせましょう」

「ああ、頼むよ」

「失礼ながら、マサトさま...... 正直全体を守るのは難しいでは?」

 ネオンが不安げにそうきいた。

「ああ、そこで次の手だ。 仲間を増やす」

「仲間ですか?」

「サクトに聞いて、ある種族がいるらしいんだ。 そこまでサクト、ゼオン、ネオン一緒にきてくれ」

「わかりました!」

「はい!」

 おれたちは仲間を探すため、森へとでかけた。


「本当に会うつもりですか......」

 そうゼオンとネオンは緊張している。

 おれたちは森のなかを進む。 そこは枯れている木々も多く、ひっそりとしている。

「そんなに危険なの?」

「それは...... ここに更に強いモンスターに、襲われないのは彼女たちがいることも理由のひとつですからね」

「サクトどののいうとおり、ここが比較的安全なのは、やつらがいるからです。 やつらは入ってこないものには関わってはきませんが、自分たちの領域をおかすものは容赦なく捕食します」

「アルラウネの領界、ここに入りこんで帰ってきたものはいません......」

 ネオンはおれの後ろに隠れながら、そう左右をキョロキョロとみている。

(話はきいてたけどアルラウネってなに? 精霊ちゃん)

『植物のモンスターですね。 女性型しかない...... ぐらいしかわかりません』

(女性?)

「......みてくださいマサトさま」

 サクトにいわれて地面をみると、モンスターだろうか骨があるが形をなしていない。 

「魔力を吸われてこんな感じですね」

 そうゼオンにいわれてみると、溶けたような骨が散乱していて、太い植物の根が至るところにある。 

「ここにはいったものから強制的に魔力を奪い取ってるみたいですな」

(サクトのいうとおり、確かに魔力が体から流れてるような感覚はあるな)

 ざわざわと木々がゆれた。

「ふふふっ......」

 そう笑うような声が聞こえる。

「来たようです......」

 ネオンが後ろでそうつたえると、サクトとゼオンが前にでる。
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