ブラックバイトウィザード

曇天

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第三話 戦闘

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「でヒミコさん、ホントに歩いてるだけで見つかるんすか?」  
 
 夜の町を歩きながら俺は聞いた。
 あの話のあと、
 ヒミコさんがオレに外に出るよういったからだ。

「ああ、いま近くにいる。
 僕の身体は微弱ながら僕と共鳴するからね。
 近くにあれば共鳴が強くなってわかるよ」 

「でも、身体にそんな貴重な情報があるなら、
 バラさないで一人が独占して持ってるんじゃないんすか?」

「ふむ、僕も最初はそう思った。
 殺さないと危険だから身体をバラバラにしたとね。
 でもどうもおかしい......
 反応がかなりわかれてるんだ」

「売ったとか......」

「......可能性はあるね。
 それこそ欲しい者はいくらでも出すだろう。
 ただ金目あてで僕を狙うとはどうも考えづらい......
 あまりにもリスクが高すぎるし、
 僕を殺せる者なら金などいくらでも稼げるからね......」

「そんな魔法って稼げんすか」

「まあ、大抵のことは叶うからね」

「そもそも、なんすか魔法って」

 オレは少し気になってたことを聞いた。

「前も言ったけど真理の鍵さ。
 この世界には物理を越えた事象がある。
 音や線、形、動きなどの特定の組み合わせを行うと、
 物理を越えた事象を起こすのが魔法だ。
 それらの鍵、法則を見つけ魔力を用いて使うのが魔法使い、
 真理の探究者さ」

「その組み合わせがヒミコさんの身体にあるすか?」

「そうだよ。
 それらを知れば人智を越えた力を用いることができる。
 生命の創造、時間や空間の操作、不老不死......
 知りたがるのも納得だろう」

「オレだったら、そんなのどーでもいーすけどね」

「君はこの世界の真理を全て、
 解き明かしたいとは思わないのかい?」

「きょーみないっすね。
 オレは少しのお金とえちぃなオネーサンがいれば満足っす」
 
「ふふふっ、面白いな君は」

「そーすか」

 そんな話をしていると、遠くの方、
 都会のオフィス街に不似合いな、
 ローブ姿の見るからに怪しい人物がいる。

「ま、まさかあれ、あんなはっきり怪しいやつなわけ......」

「いや、そうだ共鳴する。
 君には見えているが、
 普通の人間には見えないように、
 魔法をかけているから堂々と歩いているのさ」

 オレが近づくとこちらを察してか、
 裏路地の方へと足早に去った。

「逃がすなよタイガくん」

「あいよ」

 ローブの人物を追い裏路地を走る。
 目の前に見えた。
 長い箱を抱えている。

「キサマ何者だ!」 

 振り返り男はそう怒鳴った。

「あー、あんたが持ってるモノ返してほしいんだけど」

「返す......
 ふざけるな!
 これは私が全財産をはたいて買ったモノだ!」

「クエルラ・テンレ・グレンテレア!」

 そう言うと上空に巨大な炎の球体ができる。

「す、すごい! 今まで倍いや五倍はある!
 これほどの力か! 
 これなら真理へと近づける!」
 
 そういうと男は腕を振り下ろした。
 
「消し炭となれーーー!」

 オレンジ色の火球が頭上に落ち業火がオレを包む。

「ぎゃあああああ!!」

 オレは叫んだ。

「ふはははは!
 この力で私は真理へと至るのだーー!!」

「ケホケホ、ひどいな......
 いきなりびっくりするじゃないっすか」

 オレは炎から咳をしながら出ていく。

「なっ! なんだ!?
 なぜ生きている!?」

 男は驚いてそう叫んだ。

「いや、知らないっすよ。
 でも熱くもなかったな。
 ビックリしただけ」
 
「う、嘘だ!
 鉄でも溶解させる温度たぞ!!
 その若さで防げるわけ......」

「まあ、知らんけど、その手に入れたもん返してくださいよ」

「いやだ!
 お前になど渡さん!
 これは私が真理へと至る......」

「別にオレはいいんすけど、
 この持ち主が返してほしいって言ってるんで」

 そういうと、オレは男に左手の甲を見せた。
 
「なんだその傷は......
 いや違う! 魔力がある......
 なんだと!? 開いて、目玉が!?」

 そう、それは昨日のヒミコさんと契約した時のことだった。

「でも魔法の力を与えるってどうくれるんですか?」

「簡単さ僕が君の身体に寄生するだけだ」

「い、寄生!?」

「この眼球だけでは魔力が足りないんだ。
 それに移動もできないからね。
 君の身体に寄生すれば、
 タイガ君も守れるというわけだ」

 そういってヒミコさんはオレの左手の甲に寄生した。

「君には悪いけど、僕の身体返してもらえるかな」

 ヒミコさんはローブの男にそういった。
 そしてその時ヒミコさんは魔力を感じないオレでもわかるほどの、
 禍々しい程のプレッシャーを放っていた。
 そうそれは逆らえば死ぬという絶対の圧力だった。
 男は震える手で抱えてた箱をオレに渡すと力無くうなだれた。

「よかった。
 ひとつ返ったよ」

 ヒミコさんは楽しげに話す。

(マジでやベーなこの人......)

 オレは今更ながらこのバイトを受けたことに後悔していた。
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