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第五十七話
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一週間ほど滞在して、ジェガリアさんの工房で預けてあった剣を渡してもらった。
「おお!輝きが違う! ありがとうございます!」
「神剣はそうそう折れることもないが、手入れしないと魔力の出力がうまく行かなくなることもある。 これで問題ないだろう」
そうジェガリアさんが額の汗をふいた。
「ふぁぁあ!!」
ミリアナが剣を掲げ興奮している。
「つ、ついに私に使える剣がありましたわ!!」
「それってバルステアの......」
「ああ、【嘶霆剣】《アヴォルドーク》だ。 どうやら王女は所有者となったようだ」
ジェガリアさんは微笑んだ。
「私たちも、新しい神剣を手に入れたわ」
「ああ」
「うん......」
メリムは【樹海剣】《ベルタチッド》、レフィーネが【砂陣剣】《アシルス》、アゼリアは【響振剣】《ワドレフ》を手に入れていた。
「これって......」
「十剣将が所有していたものだ」
「それが四人に......」
「ああ、本来そんなことはあり得んが、ここ最近、所有者の数が異常に増えてきている」
そうジェガリアさんは厳しい顔をした。
「何かあるということですか?」
「かつて所有者が増えるときは、きまって戦争が起こっていたという......」
そうベルスレイブが真剣な顔でいう。
(戦争...... この国をとめたのに、また)
「それはそれとして...... なんでベルスレイブがいんの?」
ベルスレイブはこちらを不機嫌そうにみていた。
「お前が目覚めさせたのだから、お前が私を養え!」
「ええ!?」
「当然だろう。 私は三百年もの間眠っていたのだ。 この世界のことは、ほとんどなにもしらんのだからな」
ベルスレイブは胸を張っていう。
「そもそもなんで眠っていたの?」
メリムがそう聞くと、ベルスレイブは眉をつり上げた。
「クレイメーヤ、あやつが私を眠らせたのだ!」
「クレイメーヤ!?」
ジェガリアさんが驚いている。
「だれですか?」
「夢葬剣ユーハライゼの使い手で、黒き太陽と戦ったとされる英雄の一人だ」
(確か八極剣の一振りか)
「おそらく私が黒き太陽の存在をしれば向かっていくと考え、私を眠らせたのだろう...... あの愚かものめ」
そうベルスレイブは目を伏せる。
「だが! 三百年、なぜだれも起こさぬのだ!」
「それはクレイメーヤさまが残した文献に『裁けぬ悪意が振りかからねば起こしてはならぬ、でなければ国を滅ぼすであろう』という記述があったからです」
ジェガリアさんがそう説明する。
「くぅう、あやつめ!!」
「いたた、いたた......」
納得せず、なぜかおれをポカポカなぐってくる。
「だからいく場所がない! トーマお主が責任を取れ!」
「そんな無茶な......」
「まあ、仕方ないんじゃない」
「かまわないじゃないか」
「そうですわ。 責任を取るしかありませんわ」
「がんばって......」
そうメリムたちが簡単にいった。
「ええ......」
「たいへんだトーマ!」
その時、レフィーネがドアを開けてはいってきた。
「なに、どうしたのそんな急いで」
「ライネから連絡がきた! メンダコが攻められるかもしれないらしい!」
そうおれたちにつげた。
「戦争とはな。 隣国といえばグリムデンか......」
エルティッタさんが聞く。 おれたちはすぐにメンダコに向かっていた。
ハーバランドさんたちも援助を申し出ててくれたが、状況がわからないのと、まだ反乱の可能性があるのでやめてもらった。 代わりにエルティッタさんがきてくれることになった。
「レフィーネどうなの?」
「ライネの話だと、ガルバイン王からの通達らしい。 グリムデンとワイゼンフラムが同時に軍備を増強しているという」
「二国!? 確かワイゼンフラムって......」
「南の最近戦争で三国を併合した国よ。 まさか北のグリムデンと南のワイゼンフラムが同時に攻めようとしてるかも」
メリムが不安げにいった。
「おれは先にかえってみる! 四人はガルバイン王から話を聞いてきてくれ!」
馬車をおりるとおれは高速でメンダコまで向かった。
「それで、どうなっているの?」
メンダコにつくと、バルクティスとライネに話を聞いた。
「ええ、ガルバイン王のいうとおり、二国が兵の再編をしているのは間違いないです」
「ああ、食料、武器や防具も大量に入手しているという。 どうやら同時の挟撃を企んでいるようだ」
二人はそういった。
「だけど、なんで急に」
「おそらく、町の拡張時のモンスター討伐で数が減っていることも一因なのかも......」
「ああ、それにこの町が潤っていることがある。 経済的に困窮しているグリムデンやワイゼンフラムのものをうけいれているから、その中に諜報員もいただろうしな」
ライネとバルクティスがそう説明した。
「なるほど、町の拡張や豊かになったことで狙われているのか...... 兵力は」
「こちらが千、ワイゼンフラム、グリムデン両国あわせて二万といったところだろう」
「二十倍...... ライネとバルクティスの二人はこの戦況どうみてるの?」
「兵力差こそあるけれど、少なくなったとはいえ強いモンスターの森と守るほうの地の利、厚い鉄の壁ということで防衛は可能でしょうね」
「私もおおむね同じ考えだ。 ただ厄介なのは......」
バルクティスはそう腕を組んだ。
「食料か...... ここじゃ小さな畑しかつくれない。 あとは森の果樹ぐらい。 ということは他の国への食料輸送の道を狙われたら」
「終わりですね...... 食料の備蓄がつきると籠城できませんから、こちらから攻めねばなりません。 もって一月...... まさか二国から襲われるなんて......」
ライネが暗い顔をした。
「うむ、グリムデンもそうだが、ワイゼンフラムは他の国と迎合したりはしないはず......」
バルクティスは釈然としないといった風だ。
「どちらにせよ戦争が始まったら被害は甚大、何とか戦争を回避したいけど、なにか策はある?」
「グリムデンもワイゼンフラムもまだ動いていない。 なにか問題が起こっているとみるべきでしょう」
「グリムデンは民の不満が最大になっている。 もはや決壊寸前の堰のようだ。 なにかあれば混乱し戦争どころではなくなるが...... 兵の士気は高いようだな」
「なぜ国がそんな状態で士気が高いんだ?」
「ベネルガ山にいたクラウンアントをベルデ将軍が倒したことになっているようだ」
「クラウンアント...... ああ、おれたちが倒したやつか」
「ああ、その手柄を横取りしたのだが、それでなにも知らない兵士たちは士気が高いのだ」
「なるほどそれで...... こちらにはおれたちと元十剣将のエルティッタさん。 それにリズベンダの王女ミリアナがいるけど......」
「リズベンダ...... 破剣妃の娘か」
「どうしたの? バルクティス」
「かつて大国だったグリムデンは小国だったリズベンダに攻めこみ、当時は王女だったメギアナに大敗して弱ったところを他国に攻められ、領土を奪われている。 その時、王となったばかりの若い頃のアルバハルを心底恐れさせたという。 私が騎士団に所属する前の話だが......」
「......メギアナ女王さまを怖がっているのか、でもどうしようもないな」
「ええさすがに派兵を求めるわけにもいかないでしょうね」
「とりあえず、メリムたちが戻り次第、グリムデンに潜入して撹乱する方法を考えるよ」
メリムたちが帰ってすぐ、グリムデンへと向かった。
「おお!輝きが違う! ありがとうございます!」
「神剣はそうそう折れることもないが、手入れしないと魔力の出力がうまく行かなくなることもある。 これで問題ないだろう」
そうジェガリアさんが額の汗をふいた。
「ふぁぁあ!!」
ミリアナが剣を掲げ興奮している。
「つ、ついに私に使える剣がありましたわ!!」
「それってバルステアの......」
「ああ、【嘶霆剣】《アヴォルドーク》だ。 どうやら王女は所有者となったようだ」
ジェガリアさんは微笑んだ。
「私たちも、新しい神剣を手に入れたわ」
「ああ」
「うん......」
メリムは【樹海剣】《ベルタチッド》、レフィーネが【砂陣剣】《アシルス》、アゼリアは【響振剣】《ワドレフ》を手に入れていた。
「これって......」
「十剣将が所有していたものだ」
「それが四人に......」
「ああ、本来そんなことはあり得んが、ここ最近、所有者の数が異常に増えてきている」
そうジェガリアさんは厳しい顔をした。
「何かあるということですか?」
「かつて所有者が増えるときは、きまって戦争が起こっていたという......」
そうベルスレイブが真剣な顔でいう。
(戦争...... この国をとめたのに、また)
「それはそれとして...... なんでベルスレイブがいんの?」
ベルスレイブはこちらを不機嫌そうにみていた。
「お前が目覚めさせたのだから、お前が私を養え!」
「ええ!?」
「当然だろう。 私は三百年もの間眠っていたのだ。 この世界のことは、ほとんどなにもしらんのだからな」
ベルスレイブは胸を張っていう。
「そもそもなんで眠っていたの?」
メリムがそう聞くと、ベルスレイブは眉をつり上げた。
「クレイメーヤ、あやつが私を眠らせたのだ!」
「クレイメーヤ!?」
ジェガリアさんが驚いている。
「だれですか?」
「夢葬剣ユーハライゼの使い手で、黒き太陽と戦ったとされる英雄の一人だ」
(確か八極剣の一振りか)
「おそらく私が黒き太陽の存在をしれば向かっていくと考え、私を眠らせたのだろう...... あの愚かものめ」
そうベルスレイブは目を伏せる。
「だが! 三百年、なぜだれも起こさぬのだ!」
「それはクレイメーヤさまが残した文献に『裁けぬ悪意が振りかからねば起こしてはならぬ、でなければ国を滅ぼすであろう』という記述があったからです」
ジェガリアさんがそう説明する。
「くぅう、あやつめ!!」
「いたた、いたた......」
納得せず、なぜかおれをポカポカなぐってくる。
「だからいく場所がない! トーマお主が責任を取れ!」
「そんな無茶な......」
「まあ、仕方ないんじゃない」
「かまわないじゃないか」
「そうですわ。 責任を取るしかありませんわ」
「がんばって......」
そうメリムたちが簡単にいった。
「ええ......」
「たいへんだトーマ!」
その時、レフィーネがドアを開けてはいってきた。
「なに、どうしたのそんな急いで」
「ライネから連絡がきた! メンダコが攻められるかもしれないらしい!」
そうおれたちにつげた。
「戦争とはな。 隣国といえばグリムデンか......」
エルティッタさんが聞く。 おれたちはすぐにメンダコに向かっていた。
ハーバランドさんたちも援助を申し出ててくれたが、状況がわからないのと、まだ反乱の可能性があるのでやめてもらった。 代わりにエルティッタさんがきてくれることになった。
「レフィーネどうなの?」
「ライネの話だと、ガルバイン王からの通達らしい。 グリムデンとワイゼンフラムが同時に軍備を増強しているという」
「二国!? 確かワイゼンフラムって......」
「南の最近戦争で三国を併合した国よ。 まさか北のグリムデンと南のワイゼンフラムが同時に攻めようとしてるかも」
メリムが不安げにいった。
「おれは先にかえってみる! 四人はガルバイン王から話を聞いてきてくれ!」
馬車をおりるとおれは高速でメンダコまで向かった。
「それで、どうなっているの?」
メンダコにつくと、バルクティスとライネに話を聞いた。
「ええ、ガルバイン王のいうとおり、二国が兵の再編をしているのは間違いないです」
「ああ、食料、武器や防具も大量に入手しているという。 どうやら同時の挟撃を企んでいるようだ」
二人はそういった。
「だけど、なんで急に」
「おそらく、町の拡張時のモンスター討伐で数が減っていることも一因なのかも......」
「ああ、それにこの町が潤っていることがある。 経済的に困窮しているグリムデンやワイゼンフラムのものをうけいれているから、その中に諜報員もいただろうしな」
ライネとバルクティスがそう説明した。
「なるほど、町の拡張や豊かになったことで狙われているのか...... 兵力は」
「こちらが千、ワイゼンフラム、グリムデン両国あわせて二万といったところだろう」
「二十倍...... ライネとバルクティスの二人はこの戦況どうみてるの?」
「兵力差こそあるけれど、少なくなったとはいえ強いモンスターの森と守るほうの地の利、厚い鉄の壁ということで防衛は可能でしょうね」
「私もおおむね同じ考えだ。 ただ厄介なのは......」
バルクティスはそう腕を組んだ。
「食料か...... ここじゃ小さな畑しかつくれない。 あとは森の果樹ぐらい。 ということは他の国への食料輸送の道を狙われたら」
「終わりですね...... 食料の備蓄がつきると籠城できませんから、こちらから攻めねばなりません。 もって一月...... まさか二国から襲われるなんて......」
ライネが暗い顔をした。
「うむ、グリムデンもそうだが、ワイゼンフラムは他の国と迎合したりはしないはず......」
バルクティスは釈然としないといった風だ。
「どちらにせよ戦争が始まったら被害は甚大、何とか戦争を回避したいけど、なにか策はある?」
「グリムデンもワイゼンフラムもまだ動いていない。 なにか問題が起こっているとみるべきでしょう」
「グリムデンは民の不満が最大になっている。 もはや決壊寸前の堰のようだ。 なにかあれば混乱し戦争どころではなくなるが...... 兵の士気は高いようだな」
「なぜ国がそんな状態で士気が高いんだ?」
「ベネルガ山にいたクラウンアントをベルデ将軍が倒したことになっているようだ」
「クラウンアント...... ああ、おれたちが倒したやつか」
「ああ、その手柄を横取りしたのだが、それでなにも知らない兵士たちは士気が高いのだ」
「なるほどそれで...... こちらにはおれたちと元十剣将のエルティッタさん。 それにリズベンダの王女ミリアナがいるけど......」
「リズベンダ...... 破剣妃の娘か」
「どうしたの? バルクティス」
「かつて大国だったグリムデンは小国だったリズベンダに攻めこみ、当時は王女だったメギアナに大敗して弱ったところを他国に攻められ、領土を奪われている。 その時、王となったばかりの若い頃のアルバハルを心底恐れさせたという。 私が騎士団に所属する前の話だが......」
「......メギアナ女王さまを怖がっているのか、でもどうしようもないな」
「ええさすがに派兵を求めるわけにもいかないでしょうね」
「とりあえず、メリムたちが戻り次第、グリムデンに潜入して撹乱する方法を考えるよ」
メリムたちが帰ってすぐ、グリムデンへと向かった。
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