上 下
54 / 81

第五十四話

しおりを挟む
「な、なぜだ......」

「こんな暗いところで糸なんて見えるわけないよね。 あなたの剣か魔力は多分音波を操るんだ。 それで物体の場所を把握してた」 

「だが、お前はあそこに......」

 そこにはおれが糸を変化させて作った人形があった。

「あなたは目がみえないんだね。 人形をおれだとおもった。 でも【形魔力】で剣の形に変えたおれの姿はわからなかった」

「そ、そうか...... あの投げた剣はお前か......」

 そういって気をうしなったリズミラを糸で拘束した。


「扉は鍵がかかってたらしいけど、おれなら」

 ガチャ、ガチャ、ガチャン

 柔らかくした自分の腕を鍵穴に押し込むと金属化して、鍵をあける。

「あいた」

 中に入るとベッドのような石の台座がありだれかが横になっている。

「これがベルスレイブ!?」

 おれは驚いた。 そこにいたのは天秤のようなものを胸にだいている長い銀の髪の少女だったからだ。

「こんな女の子なんだ。 本当に眠っているようだ」

 耳をそばだてたいが、おれに耳はない。 

(おれなんで音聞こえてんだ...... まあいいか、呼吸はないな)

「この子を起こすには、あの偽の剣の中にあったこの魔石に魔力を......」

「まて......」

 後ろを振り向くと、バルステアと六人ほど剣を持つものがたっていた。

「くっ! バルステア」

「リズミラの緊急音できてみれば、お前が書類を持つものか...... その書類と魔石をわたせ」

「いやだ......」

(おれの八本の手足収縮の最速跳躍なら抜けられるかも...... 隙を見つけよう)

「逃げるな」

 後ろからミリアナが剣をあてられてつれられてきた。

「......おかしな真似をしたら王女の首が飛ぶぞ」

(く、くそっ! これじゃ逃げられない)

「トーマ、私は覚悟できていますわ...... あなたがすべきことわかっていまして」

 そう真剣な眼差しでミリアナがいった。

(見捨てて逃げろ...... だがそんなことは)

 六人の一人がこちらに近づく。

「さあ渡してもらおうか...... まさか、我ら七人の剣将とやりあおうなどとはおもわんよな」

「くっ!」

(どうする!? 何か、何かないか)

 目の前まで男が迫る。 そして男は剣を振り下ろした。

「トーマ!!」

 ミリアナが叫ぶ。

 ドゥッ!! 

「がっ......」

 おれの目の前で男が倒れた。 そのそばにはバルジャンさんがいる。

「なに......」

 バルステアの後ろからハーバランドさんとメリムたちがいる。

「トーマ!」

「メリム!」

「ハーバランド、貴様なぜここに......」

「しれたことだ。 貴様の悪事をくじくためだ。 ジェガリアの手紙は届いたぞ」

「やはり、ジェガリアが裏切ったか...... 連絡が途絶したからもしやとおもったが、よくあの裏切り者を信じたな」

「そうだな。 最初は罠かともおもったがな」

 ここにくる前にジェガリアさんに手紙を書いてもらい。 おれは近くのまちに町の人に届けてもらえるように伝えていた。

(メリムたちが信じられるようにタコの絵を書いておいてよかった)

「だが、状況は変わらんな...... 狙うならマージではなく、ミリアナを助けるべきだったなバルジャン」

「......問題ない」

「なんだと......」
 
 バシュッ

「ぎゃあ!」 

 水しぶきが上がり、ミリアナに剣を突きつけていた男の腕から鮮血がまった。

 タンッ!

 その瞬間、バルジャンさんがミリアナを抱きハーバランドさんの横にたった。

「水...... まさか」

「そのまさかよ......」

 水しぶきの後ろからエルティッタさんが現れた。

「エルティッタ...... 貴様、酒に溺れていたのではなかったのか」

「あんたが私に追手を放っていたのはしってたからね。 剣を預ければ警戒もされないとおもってたけどずいぶん用心深いわね。 しつこい男はもてないわよ」

(そうか、こいつの目を欺くためにわざと......)

「まあいい、全員集まったのだ。 どうせ逃がさなければかまうまい。 お前たち」

 剣将の五人が散り剣をかまえる。

「ハーバランドたちはお前たちがやれ」

「はっ!」

「トーマ!」

「ハーバランドさん! こいつはおれが倒します! そっちをお願いします!」

「わかった! なんとかこらえてくれ! こいつらを倒して加勢する!」

「倒すだと、貴様程度の小僧がか......」

 そういってバルステアが剣を抜くと、金色の剣身を蒼い火花が散った。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

処理中です...