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第四十四話

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 おれたちはアフィカさんが用意してくれた馬車で、神剣士協会のあるバースレオへと向かっていた。

「メギアナさまがメンダコを認めてくれてよかったね!」

 メリムが剣を手入れしながらそう微笑む。

「ああ、これで交易がさらに進む」

「ソールたちもやっとこちらに呼び寄せられたしな」

「ライネの弟子になったって?」

「そう。 神剣士になりたいらしい。 輸送護衛を手伝いながら訓練してる」

「危ないけど、ライネなら大丈夫か。 大分移住者も増えてるしな」

「まあ、それだけ戦争が多いってことね」

 メリムが悲しそうにいう。

「そういえば、ここ最近戦争が増えてるって聞いたけど......」

「ええ、大陸各地が起こってるみたい。 この十年辺りはほぼどこかで戦争しているわ......」

「なぜか多くの神剣が人の手に渡って、それを悪用するものたちが現れてるみたいだな」

「そうですわね。 愚かなものが強い力を持てば、その力を悪用するのは必定」

(それって、セファイラたちが剣をばらまいてるからじゃ...... ん?)

「アゼリアそんな饒舌だったっけ?」

「私しゃべってない......」

「えっ? じゃあ」

 後ろにおいた荷物のあいだからミリアナ王女がでてきた。

「な、な、なんで王女が!」

「神剣を抜くための方法をしるためですわ! あなたたちは神剣を探してるのでしょう。 あなたたちについていけば、いずれ私の神剣も見つかるはず! 私が神剣に認められないなんてあり得ないのですわ!」

 そう胸をはって答えた。

「だめですよ! 勝手にでてきちゃ! 城に帰ってください!」

「いーや! 無理に帰そうとするなら、あなたの秘密をばらしますわよ」

「ひ、秘密」

「......あなた人間ではないのでしょう」

 馬車の運転手に聞こえないように耳元でささやく。

「なっ、なぜそれを!?」

「ふふふっ、私には物質を透過して見える魔力がありますの。 あなたが剣武祭の優勝者なのに剣とは不釣り合いに小さいから、失礼ながらのぞかせてもらいましたのよ。 モンスターかなにかしりませんが、悪意はないようなので許しますが、どうしますの?」

 そうちょっと意地悪そうにミリアナさまが微笑む。

「くっ、はぁ、しかたないな......」

「では、私も旅に同行するということでレッツゴー!」

 こうしてミリアナさまも同行することになった。


 バースレオの隣国ブレンダイムにはいると、近くにあった大きめの町におりた。

「なんだ? 神剣士協会にいくんじゃないのか?」

「そうだけど、まずこの国で神剣をみてもらいましょう」

「みてもらう?」

「このプレンダイムは神剣の修理ができる唯一の国なんだ。 ただ、お金があまりないな。」

 レフィーネがそういう。

「じゃあハントでもするか」

「まあ、私は神剣ももってないのですから、神剣を探しもしたいですわ。 ついでに盗賊でも締め上げましょう」

 そういってミリアナさまは町の酒場へとむかう。


「ハントか...... 確かに頼みたいことはあるがたいして値段はだせねえぜ」

 店主はこちらをみている。

(明らかに子供だからなめてみてるな。 まあ無理もないけど)

「この者は剣武祭優勝者ですわよ。 さっさと仕事を教えなさい!」

 ミリアナさまが強気にいう。

「本当か!? うーむ、確かに神剣をいくつかもってるようだな。 よし! 実は山の鉱山に山賊が居座ってな。 そいつらを退治してもらいたい」

「その程度なら国が兵を送るんじゃないの?」

「いや、実はいま隣国アーシェフェルが不穏な動きをしていて、警戒中なんだ。 その隙をついていくつかの犯罪者どもがこの国に根城をつくっててな。 兵士も町や城をモンスターたちからまもるのに一杯一杯なのさ」

 店主はこまったようにいった。

「この国は大陸で一番神剣士が多いという。 そんな国に攻めこもうとしてるというのか?」

「まあ、普通ならそんなことはしねえが...... どうも上がごたついてるようでな......」

 レフィーネがそう聞くとさらにおでこにシワを寄せる。

「上? この国に王はいないでしょう?」

「確か十人の神剣士が国を運営していますよね」

 そうメリムとミリアナがきいた。

「ああこの国には十人の神剣士【十剣将】の会長が変わっちまってから、おかしくなっちまった」

「それで...... もめているのか」

 見るとメリムが悲しそうにしていた。

(まあ、憧れの神剣士がそんな状態ならむりもないな)

「とりあえず、その山賊を倒せばいいんだね。 報酬は倒したあとでいいよ」

「ああ、たのむ」

 おれたちは依頼をうけて山賊を倒しに鉱山へと向かう。

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