28 / 60
第二十八話
しおりを挟む
北の森の中にある白く朝もやがかかるこの湖は、ただただ水面を静かにたたえていた。
「ここは【レベクレイク】、ここらじゃ一番大きな湖ですよね。 ここにモンスターが...... 確かに黒い魔力を感じる。 さっきの話と関係があるんですか?」
「ああ、ここも昔戦場になったんだ」
静かな湖畔を歩きながらアスティナさんはそういった。
「そうなんですね。 こんなきれいなところなのに...... ということはここに、イビルモンスターがでる......」
その時、湖の底のほうから、大きな黒い魔力が上がってくるのを感じた。
「きます! 湖の底から近づいてきます! 大きい!」
「きたか......」
水面に泡がたくさんはじけると、黒い巨影が一瞬みえるとともに水面が見上げるほどにもりあがる。
現れたそれは青い首長竜のような姿のモンスターだった。
「クォォォオ!!」
咆哮のようになくとこちらに首をもたげた。
ぼくは魔晶剣を抜き構える。
「グルルル......」
モンスターは牙を向けて威嚇はしているが、だが一向に襲ってくる気配はない。
「どうして襲ってこないんだ...... どうみても黒い魔力をもっているのに」
「そうだな......」
アスティナさんが、もがくように首をふるモンスターを悲しげにみてつぶやく。
「アスティナさん」
「こいつは【ミスティックサーペント】だ。 元々はホーリーモンスターだった。 それがイビルモンスターになってしまった姿......」
そうかなしげにモンスターを見上げている。
「どういうことですか」
「......このモンスター、ルナークは元々私の母が育てていたんだ」
「えっ!?」
「この湖のほとりで弱ってるのを保護した。 あたしはこのルナークと共に育った」
そうもがくルナークをみてアスティナさんはいった。
「だが、数年前何者かが母を殺した。 その姿を見たルナークは悲しみのあまり破壊の魔力に染まり、イビルモンスターになってしまった......」
「それじゃ攻撃してこないのは」
「まだあたしのことを覚えているんだろう...... 破壊衝動を抑えながら抗っているイビルモンスターになってまでな。 とても苦しいはずなのにな......」
そういって背をむけ湖からはなれた。 ぼくもついてはなれた。 ルナークは暴れながらも湖の中へと消えていった。
「......人間に近づき過ぎたモンスターはとても繊細で傷つきやすくなる。 心があるし人との関係があるからな。 そして望まないのにイビルモンスターへと変わるかもしれない」
「こむぎも......」
「ああ、あのこが一人で生きられるようにしておいた方がいい。 おまえを失えば、最悪ルナークのようにイビルモンスターへとなり苦しむかも知れん」
そう後悔したように言った。
「あのルナークをもとに戻せる方法はないんですか! イビルモンスターに変わるなら、逆にホーリーモンスターにだって......」
「そういっておやじは旅だったよ......」
そう言葉少なにアスティナさんはいった。
(アスティナさんは、こむぎに同じようになってほしくないから、みせてくれたのか......)
ぼくたちは黙ったまま森をでた。
「ぴぃー」
店に帰り、甘えてすり寄るこむぎを撫でながら考える。
(こむぎが心をやんで苦しむのはいやだ...... ただ群れのモンスターだともしっているから、一人で生きていかせるのも危険だしできない。 どうすれば......)
「一人は...... そうだ!」
「ぴぃ!?」
「なに!! 群れを探す!?」
次の日、アスティナさんに話をしにいった。
「ええ、群れがいればこむぎも心配しなくてもすむ。 一人だとやはり放置はできないですから」
「............」
アスティナさんは黙ったまま考えている。 しばらくしてぼくの目をみた。
「しかし、かなり難しいぞ。 ゴールデンバードの生息圏はヒトが住めない極寒、しかもゴールデンバードはとても強く、賢い。 ながくいきるだけ知恵をまし、言語を介するものがいるという記述すらある。 自分たちの領域を守るため攻撃してくるかもしれん」
「ええ、でも、もし群れにかえせたら、こむぎのことは安心できますから」
「......わかった。 ならあたしもついていく」
「えっ!?」
「なんだいやなのか」
「いえ、別に......」
「ちょっと待ってろ!」
そういってアスティナさんは用意を始めた。
「ここは【レベクレイク】、ここらじゃ一番大きな湖ですよね。 ここにモンスターが...... 確かに黒い魔力を感じる。 さっきの話と関係があるんですか?」
「ああ、ここも昔戦場になったんだ」
静かな湖畔を歩きながらアスティナさんはそういった。
「そうなんですね。 こんなきれいなところなのに...... ということはここに、イビルモンスターがでる......」
その時、湖の底のほうから、大きな黒い魔力が上がってくるのを感じた。
「きます! 湖の底から近づいてきます! 大きい!」
「きたか......」
水面に泡がたくさんはじけると、黒い巨影が一瞬みえるとともに水面が見上げるほどにもりあがる。
現れたそれは青い首長竜のような姿のモンスターだった。
「クォォォオ!!」
咆哮のようになくとこちらに首をもたげた。
ぼくは魔晶剣を抜き構える。
「グルルル......」
モンスターは牙を向けて威嚇はしているが、だが一向に襲ってくる気配はない。
「どうして襲ってこないんだ...... どうみても黒い魔力をもっているのに」
「そうだな......」
アスティナさんが、もがくように首をふるモンスターを悲しげにみてつぶやく。
「アスティナさん」
「こいつは【ミスティックサーペント】だ。 元々はホーリーモンスターだった。 それがイビルモンスターになってしまった姿......」
そうかなしげにモンスターを見上げている。
「どういうことですか」
「......このモンスター、ルナークは元々私の母が育てていたんだ」
「えっ!?」
「この湖のほとりで弱ってるのを保護した。 あたしはこのルナークと共に育った」
そうもがくルナークをみてアスティナさんはいった。
「だが、数年前何者かが母を殺した。 その姿を見たルナークは悲しみのあまり破壊の魔力に染まり、イビルモンスターになってしまった......」
「それじゃ攻撃してこないのは」
「まだあたしのことを覚えているんだろう...... 破壊衝動を抑えながら抗っているイビルモンスターになってまでな。 とても苦しいはずなのにな......」
そういって背をむけ湖からはなれた。 ぼくもついてはなれた。 ルナークは暴れながらも湖の中へと消えていった。
「......人間に近づき過ぎたモンスターはとても繊細で傷つきやすくなる。 心があるし人との関係があるからな。 そして望まないのにイビルモンスターへと変わるかもしれない」
「こむぎも......」
「ああ、あのこが一人で生きられるようにしておいた方がいい。 おまえを失えば、最悪ルナークのようにイビルモンスターへとなり苦しむかも知れん」
そう後悔したように言った。
「あのルナークをもとに戻せる方法はないんですか! イビルモンスターに変わるなら、逆にホーリーモンスターにだって......」
「そういっておやじは旅だったよ......」
そう言葉少なにアスティナさんはいった。
(アスティナさんは、こむぎに同じようになってほしくないから、みせてくれたのか......)
ぼくたちは黙ったまま森をでた。
「ぴぃー」
店に帰り、甘えてすり寄るこむぎを撫でながら考える。
(こむぎが心をやんで苦しむのはいやだ...... ただ群れのモンスターだともしっているから、一人で生きていかせるのも危険だしできない。 どうすれば......)
「一人は...... そうだ!」
「ぴぃ!?」
「なに!! 群れを探す!?」
次の日、アスティナさんに話をしにいった。
「ええ、群れがいればこむぎも心配しなくてもすむ。 一人だとやはり放置はできないですから」
「............」
アスティナさんは黙ったまま考えている。 しばらくしてぼくの目をみた。
「しかし、かなり難しいぞ。 ゴールデンバードの生息圏はヒトが住めない極寒、しかもゴールデンバードはとても強く、賢い。 ながくいきるだけ知恵をまし、言語を介するものがいるという記述すらある。 自分たちの領域を守るため攻撃してくるかもしれん」
「ええ、でも、もし群れにかえせたら、こむぎのことは安心できますから」
「......わかった。 ならあたしもついていく」
「えっ!?」
「なんだいやなのか」
「いえ、別に......」
「ちょっと待ってろ!」
そういってアスティナさんは用意を始めた。
24
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる