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第32話 咒縛監獄⑤ 咒宝具《じゅほうぐ》

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その人型は無疫となった。


「はっはっはっ! やはり神は俺に苦しみを与えよと言われているのだ!」

 無疫は両手をひろげ天を仰ぐと笑い始めた。


「なぜだ!?」


「......この場所では霊力が不安定だったから、自壊したんだろう......」


 蕈留の問いに鍊が答えた。


「無駄死にだ......その小僧の命に意味など無かった」


「貴様!」


 灰が叫んで前に出た。


「止めろ! 奴は不死だどんな攻撃も効きはしない! 死ぬだけだぞ」


 蕈留の訴えも虚しく、皆が攻撃を始めた。 だが無疫はどれ程攻撃を受けようが再生して、皆次々と咒疫に感染して倒れていく。 雅は倒れながら神無に寄り添っている。 


「......そっちの爆破の小僧以外は必要ない......」


 蕈留は雅に近づく無疫に、術を使おうとするも、使えなかった。


(もう、霊力もない......何も出来ない......)


 無疫が手を伸ばし、蕈留があきらめかけたその時、


「な、なに!?」


 無疫の手を神無が掴むとそのまま壁に投げつけた。    
 

 ドガッ!! 


 投げられた無疫は壁に叩きつけられた。 


「ぐはっ!......なぜだ!? 確実に死んだはずなのに! 霊力も感じない! なんだお前は!」


 無疫は術式を唱え咒疫の血を放った。 だが、それは神無についたが光のように消えていった。 


(......あれは、土光薙の霊力は感じない、いやそもそも確実に死んでいた......それになんだこの圧倒的な威圧感は......)


 神無は手から光る弾のようなもの撃ち出すと、無疫を貫き穴が空いた。


「馬鹿め、私は何度でも再生する......いや、再生しない......どういうことだ!?」


 神無は光の弾を連発し、無疫は穴だらけになっていく。


「俺は......消える......やっと目的が出来たのに......そんな......俺は苦しんで......何のために......生きて......死......ぬ......の......だ」


 そう言うと無疫は粉々になり消えていった。 


 そのまま神無は倒れると、皆の体の斑が痛みと共に消えていった。 そして皆が神無に近寄る。 しかし、


「生き返ってはおらん......やはり死んだままじゃ......」


 小さな式神は静かにそういった。



 
「皆さん有り難う御座いました。 あなた方が無疫を倒したおかげで、ほとんどの囚人は大人しく捕まりました。」


 咒界学園に戻った灰達にそう木導院 楔はそう頭を下げた。 


「いえ......」


 皆一様に暗い顔をしていた。 あれから一週間、神無の容態は変わらず死んだままだった。 あの時何故生き返ったのかも分からない、皆疲れきった顔をしている。 今も雅は神無の側にいた。


「楔姉さん、あの話をしてもいいか......」


 蕈留が聞くと姉さんは無言で頷いた。


「実は......土光薙を甦らせる可能性が一つだけある......」


「!?」


 皆が驚いた顔で蕈留を食い入るよう見ている。


「あくまで可能性だ......それに難度も高い」


「かまわねえ、1%の可能性でもあればやる! 教えてくれ!」


 灰が蕈留の両肩を掴んだ。


「ああ......この界樹咒学園の結界で守っている咒宝具、反魂香《はんごんこう》それを使えばあるいは......」

 
「反魂香! ここにあるのか!」


「落ち着け......灰」


 鍊が止めにはいる。


「悪い、つい......」


「それで、その反魂香を使えば、神無兄ちゃんは生き返るんだよね」


 嬉しそうにうずめが言った。


「そう簡単じゃない、まず甦らせるには魂がいる。 それに繋がる体が無いと普通、魂は探せない」


「そういえば、お前はあの時すぐに結界の中に神無を連れていくよう言ったな」


「ああ、魂を探せなくなるからな、そのための処置だ。 だから、そっちは大丈夫だと思う......問題は反魂香の結界の方だ」


「結界? 解けないのか」


 灰が不思議そうに聞いた。


「実は、その結界はあの安倍晴明の結界で我々にも解くことができないのです......」


「元々反魂香は、安倍晴明が父親を甦らせるため作った物らしい、三つあって残りは二つ」


 楔の言葉を受け、蕈留がそう言うと、


「......一つは誰かが、無名を生き返らせるために使った......」


 灰は思い詰めたようにそう言った。


「それで、結界を解く方法はあるのか? お前の爆破なら結界を解けるんじゃないのか」


「俺の爆破は、霊力の大きさに反応する、おそらく反魂香だとこの学園ごと吹き飛ばしてしまいかねない、だから他の咒宝具を使わないと」


 蕈留は鍊の疑問に答えた。


「他の?」


 うずめが聞いた。
 

「そうだ、火具槌家の特別な咒宝具がいる」


「結界破りの咒宝具《じゅほうぐ》......黒焔刀《こくえんとう》か......」


 灰の言葉に蕈留は頷いた。 うずめが、


「詳しいな灰兄ちゃん、そうか! 咒宝具作りの家系、火具槌家の人だったね!」 


「ああ......仕方ねえ、本家に頼みに行くしかねえ!!」


 灰はそういって立ち上がった。
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