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第38話 魂継の儀② 魂源島《こんげんとう》

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 会合から1ヶ月後、灰、鍊、うずめ、蕈留と共に魂継の儀のある魂源島に僕達は来ていた。 


「皆、こめん、僕のために危険な戦いに参加を頼んでしまって、でも必ず当主に戻って術士の世界を変えたいんだ」


「何言ってやがる。 お前が駄目だといっても戦うぜ!」


 灰が笑いながら言った。


「お前には恩がある、妹を救ってもらった、命をかけるほどの恩がな」


 フッと鍊は笑う。


「神無兄ちゃんに恩があるしね、僕に任せてよ!」


 うずめは笑顔でそう言った。


「神無の為だけじゃない、僕の願いは今の術士の世界を変えることだからな......」

 
 蕈留は目を閉じていった。


「みんな、ありがとう」

 
「あれ......雅は、あいつ敵になっちまったのか」


 麟は僕にそう言う。 


「ああ、雅も候補者の一人なんだ......」


「あいつは、お前と敵対するなんて思わなかったがなあ」   


 麟がそう言った。 灰が僕に、


「あいつ、チーム戦のメンバー四人どうすんだ?」


「わからない、あれ以来、話もしてないんだ。 この間の会合で話そうとしたけど、何も言わず行ってしまったから......」 


「ふられたのかな?」
  

 うずめが言うと、灰がうずめの口を押さえた。

 
「土光薙家当主の座を欲しいのかもしれないな」


 蕈留はそう言った。


「......雅には考えがあるはず......僕はそう信じているから」


「だが、敵対する以上、倒さねばならないぞ」


 鍊がそう言うと、

 
「ああ、負けるつもりはない」


「行こう」


 僕達は会場に向かった。 屋根のないドーム状の会場には武道会のような舞台が置かれ、外側の観客席にすでに多くの人達がいた。


  
「おいこんなでかいとこなのかよ! それにめちゃくちゃ観客がいるじゃねーか! あ、あれ水瀞理事長だ! 多々良のおっさんもいる」

 
「あっ、ほんとだ! おじいちゃんがいる!」 


 灰とうずめが言うように、観客席の中央には五行家の当主達が座っていた。


「ああ、今回は当主の証明の為に外部の陰陽師達、財界、政界の大物を呼んだらしい」   


 僕がそう言うと、鍊は、


「家の実力を見せつけて、凋落してないと見せたいのだろう」   


「まるで見世物だな......だが、確かに当主の正統性は証明させられるかもな」


 鍊の言葉を受けて、蕈留は呆れたように言った。


「あっ、雅がいる!」


 麟が言う方向に雅がいたが、雅はこちらを見ることもなく無表情で立っている。 僕が近づこうとすると、去っていった。


「完全にふられたね」


 といううずめの口を灰が塞いだ。


 舞台上に長老、墓守が立ち観客に向けて、


「皆様、我が土光薙家当主を決める儀式、魂継の儀に来ていただき、誠にありがとう存じます。 この儀式はトーナメントで、チームは16チーム、ひとチーム五人、《先鋒、次鋒、中堅、副将、大将》の順に一対一で戦って勝ち星で勝敗を決めます。 では皆様、当主の座につかれる方をご自身のまなこにてご覧くだされ」

  
 そう言うと、観客から歓声が沸いた。 僕達は選手控え室に向かう。 


「僕たちは、一回戦、第九試合、土光薙 大蜘のチームと当たる、雅は第五試合か」   


 僕が言うと、灰は、


「いきなり《獣王》大蜘か、《蜃使い》の圧也とか、《封咒》壊、有名な奴もいるが、知らん奴も多い、あれは誰だ」


「いや、僕も全く知らない人の方が多いんだよ灰」

 
「神無が知らなくても無理はない、土光薙の裏の部隊も参加しているからな......裏の世界では有名らしいが」


「なんで、そんなこと知ってるんだ鍊」


「うちの当主に聞いたのさ」


「あの怖い姉ちゃんか......確かに裏の世界の人間なら知っているか......」


 灰が頷くと、蕈留は、


「ただ、名のある者も、ない者も、かなりの手練れだ。 一目でわかるレベルのな」


「でもこの五人なら楽勝だよね」


 うずめが答えた。 僕は、
 

「そうだね、僕達は必ず優勝する」


 そう言うと皆が頷いた。


 そう話していると、早速一回戦、第一試合が始まった。 

 
 一回戦から高難度の術の応酬で、磨術祭とは比べ物にならないレベルだった。 二試合、三試合、四試合共にハイレベルな戦いだった。


「すごいな、かなりの使い手がいる。 さすが土光薙といったところか」 


 麟がいうと、うずめが、


「ほら、雅姉ちゃんの出番だよ」


 といった方を見て灰が驚く。


「おい嘘だろ!? あの四人!」


「虎堂 風音、巽 雷火、乾 なずむ、そして黄龍 よみか、本気だな」


 蕈留がそう言った。


「だが、相手は蜃《しん》使いの圧也、かなり名の通った術士、メンバーもこの世界では名前が知られた奴ばかりだ」
 

 蕈留がそういったが、試合が始まると、雅チームは勝利した。 あまりの圧勝に観客からざわめきが起こるほどだった。


「おい、あやつら強くないか......相手もかなりの霊力を持つ強者だったのに、触れさせもせず倒したぞ」


 麟が驚いて言った。


「元々、雅はほとんどの系統の術を高レベルに使いこなす術士だ。 封印術や結界術も使える侮れん相手だぞ」


 鍊が言うと、


「ああ、ずっと雅は努力してきた、幼い頃から死んだ両親の代わりに犬境家の当主として......」


 僕は幼い頃のことを思い出して言った。
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