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第25話 人工霊獣② 封印破壊

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「こっちでいいんだな、大陰」


 灰は黒土山に入り、隣を飛ぶ小さな式神、大陰に聞いた。


「うむ、確かにこちらより異様な霊力を感じるぞ。 心しろ」


 山頂付近の沢にでると、何か霊力を放つ者とその後ろの男が見えた。


「あれだ! 灰よ、あの後ろの者が人工霊獣だ!」


 灰が沢に降りると、


「何故ここが!」


 男はその姿を大きな鮫に転じ灰を襲ってきた。 空中を泳ぎ噛みつこうとする鮫をかわした。


「おわっ! 空中を泳ぐなんてありかよ!」


 そう言いながら、灰は術式を唱えた。


「火行、炎戦輪乱舞《えんせんりんらんぶ》!」


 大量の炎の輪が鮫に当たり穴が空いた。


「お主なかなかやるではないか!」


 大陰に褒められ、


「ありがとよ!」


 鮫の体は元に戻り空中を高速で移動してくると、ヒレが灰の服にかすり、服が溶けだした。


「当たったら、溶けるのかよ! 逃げても無駄か、なら!」


「全身どろどろに溶かしてやろうぞ!」


 灰は術式を唱えた。


「火金水行、阿須羅王「あすらおう》!」


 灰は金属の腕を四本つくり炎を纏った。 突進してくる鮫を四本の金属の腕で受け止めると、


「馬鹿め!このまま溶けるがいい!」


「そりゃどうかな!」


 四本の腕が溶け鮫に入っていくと、鮫の体が固まり始めた。


「なっ! 何だ! 私が溶かした腕が!?」


「その腕はお前が溶かしたんじゃない、俺の熱で溶けた錫なのさ、そしてお前の中で冷えて固まり始めたんだ」


「......」


 鮫は地面に落ちると動かなくなっていった。


「だめだな......もう、封印は解かれておる......」


「そうか、他のを探そう!」


 大陰の言葉に灰はそう返して、走り出した。




「うずめよ、貴公、大丈夫か、この先は危険だ」
  

 うずめは阿衣川に着いた。 横を飛ぶ小さな緑の龍、青龍《せいりゅう》が言う。


「大丈夫だよ青龍。 僕は必ず水瀞 漿を止めないといけないんだ......」


(そうだ、必ず......) 


 川を上流に走ると、滝が見えてきた。 その前に女性が二人いる。


「あれだ! あの後ろにいる者が人工霊獣だ! 今他の式神を呼ぶ」


「いや、僕が止める!」


 止める青龍を振り切り、女の前に立ったうずめは、


「水瀞 漿はどこにいる! 答えろ!」


「......漿様を知っている? 貴様何者だ......」


 女はその姿を大きな青い蟹に転じると、蟹は火を吹いて攻撃してくる。 うずめは術式を唱え、水の壁、水盾《すいじゅん》で防ぎつつ、水の戟、水戟《すいげき》で攻撃するも、固い殻に阻まれ飛び退いた。


「そんなものでは傷一つつかぬ」


「......みたいだね......」


 うずめはそれでも、水弾を撃ち続ける。 


「無駄だと言っておろうが!」


 大きなハサミがうずめに迫る。 その時、うずめは術式を唱えた。


「水行、氷柱陣《ひょうしょうじん》!」


 蟹の体が瞬く間に凍りついた。


「ま、まさか......水を我の体に撒くため攻撃を......」


「答えろ、水瀞 漿はどこにいる」


「クックッ......もう全ての封印は壊れた。 我らの王が甦る......」


「我らの王......」


「まずい! うずめ! よみが陰陽学園の地下で何かを感じると伝えてきておる!」   


 は青龍と走って向かった。




「神無! どうなっとるこれは!?」

 
 貴人がそう言う、


「わからない、でも学園地下に何かが復活したのは間違いない! 早く行かないと!」


 僕は誰かが見つけたであろう地下への道を走りながら言った。 その道は遥か昔に作られたもののようだった。


(強大な霊力が地下から感じる。 封印されてたもの? いや違うこれは......)


 最下層につくと大きな部屋になっていて、奥で何かが戦っているよう凄まじい音と衝撃がきた。


 奥で見たのは水瀞理事長と戦う、異形の獣の姿だった。 それは頭が猿、胴が狸、手足か虎、尾が蛇の獣だった


「あれは、鵺《ぬえ》じゃ! 源 頼政《みなもとのよりまさ》公と猪早太《いの はやた》に討たれた霊獣、あんなものを封印しておったのか!」


 鵺は宙を飛びながら雷を纒い、水瀞理事長と戦っている。


 見ると向こう側に一人の男が立っていた。 


「父さん!」


 その声に振り向くと、うずめと灰達がいた。


「うずめか......」


「父さん、何故こんなこと......」


「知れたことだ、ただ強さが欲しかった。 私は霊力が少なく、五行家には相応しくなかった。 お前が生まれて私は愕然がくぜんとした、私など相手にもならない程の霊力と力を持っていた。 父上も息子もその力を持つのに私だけが力を持たない......だから力を欲したそれだけだ」


「そんな下らないことのために......」 


「お前にはそうだろうが......同じ世代には多くの才能がある者がいた。 私がどれ程、努力しようとも並ぶことすら叶わない......この屈辱と劣等感がどれほどのものか、お前のように力ある者には力無き者の気持ちなどわかるはずもない!」


 漿は絶叫した。


「それで、無名に鵺のことを聞いたのか!」


「ああ、あいつはここに鵺が封印されてることも、封印の場所も知っていた」


「だが残念だったな、理事長のじいさんが鵺をやっちまいそうだ」


 灰の言うとおり、鵺がかなりのダメージを受けたのか、肩で息をしていた。


「漿よ、お主封印を守られると考え、ちいーと焦ったの、完全復活させるには早すぎたのじゃ」


 そう水瀞理事長に言われた。 漿は口を歪ませると、


「いいえ......これでいいのですよ父上、私は研究のすえ人工霊獣には、核となる魂には術士が必要という結論に至りました。 そして無名の持ってた魂を移す秘術を用いれば......」


 そう言うと手に水を集め鋭利にすると、術式を唱えると自らの首を切り倒れた。


「父さん!?」


 うずめがそう言うと、鵺が苦しみだし地上に落ちると光る球体となった。


「まずい! あの球を皆攻撃するのじゃ!」


 水瀞理事長の声で皆攻撃を行った。 だが光の球体はゆっくりと人影を映した。 それは人型となった鵺だった。
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