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第9話 磨術祭② 控え室

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 出場者控え室に戻った僕達は、一回戦をモニターで見ていた。 モニターでは森の中、山、都市等で戦っている姿が映っていた。


「これ戦ってるの、森とかの映像だけど、結界なの」


「そうだ空間結界《くうかんけっかい》だな。 舞台上に別の空間を作り出す術だ。 かなり広くて周囲に被害を出さないように作ってあるんだ。 相当な術だぞ」


 麟がそう答えた。


「あっ! テメー、どっから現れた! さっきの借り......」


「まあまあ、灰。 今はこの試合に集中して」


 灰が麟を睨むと、麟はふんと鼻を鳴らした。
 

「それより、僕は114番だけど、灰は何番?」


「あ、ああ俺は20番だよ、別のブロックだ」


「なら、当たるのは後半だね」


「ああ、俺と当たるまでは負けるなよ。 次の一回戦が始まった。 雅だ」


 モニターに雅が映った。 戦いの舞台は森の中で相手は巨漢の男だ。 


「おいおい、相手高等部の三年だぞ。 大丈夫かよあいつ」


「霊力的には男を凌駕してる。 大丈夫だろ」

 
 麟の言葉に灰は驚き、


「お前も、霊力感知ができるのか」


「できて当然だろ」


「余程近くならな。 こんな距離感知できるのは神無ぐらいだ。 お前意外にスゲーな」

 
 麟は、そう素直に褒められて、まんざらでもない顔をしていた。


 巨漢の男は、その体に似合わず、俊敏な動きで木々を飛び回る。 雅は動かず男を見ている。 男が術式を唱えると、地面から多数の木の根が伸び、雅の体を縛り上げた。


 男は木の根を更に鋭く伸ばし雅を襲うが、その瞬間、男の下から、


 ゴゴゴ!! 
 
 と巨大な岩が付き出した。 男は飛んで逃げようとするが、


 バン! 


 と何かに当たったように見え、岩に突き上げられた。 地面に落ちた男を見ることもなく雅は、ゆうゆうと舞台を後にした。


「おい......今の結界術か......」 
 

 灰が驚いて僕に聞いた。


「結界かどうかはわからないけど、気づかれないように相手を閉じ込めたんだと思う」


「そんな高度な術式使えんのかよ。 あいつ」


「僕が土光薙家に行くまでは、当主候補だったらしいよ」


「まじかよ......こりゃ、あいつも侮れねえな......おっと、もうすぐ俺の番だ」


「頑張って!」


 僕が言うと、おう! と言って灰は走っていった。


 入れ替わるように、雅が戻ってきた。


「おかえり、凄いね、あの閉じ込めたやつ」


「は、はい、そんな大したことないですよ......っていうか、またあなたですか! ここは出場者の控え室ですよ! 出ていきなさい!」

 
 麟に雅が食って掛かる。 麟は舌をだし雅を挑発してる。


「で、でも、術式を使ったの気付かなかったよ」


「あれは術式を使いません。 霊境《たまざかい》、霊力で作った球体なので、術式を唱えたりしないので気づかれないんですよ」


「霊力? 僕と同じ」
  

「は、はい、 神無様の真似をしたんです。 神無様より少ない霊力なので足止め位しか使えませんけど......」


「凄いね! あんな使い方があったんだ。 僕も使ってみよう」


 僕が褒めると雅は両手を出して言う。


「はい! どうぞお使いください」


「あっ! 灰だ!」


 灰がモニターに映る。 舞台はどうやら水辺のようだ。 
 

「鬼灯さんは火行術の使い手、相手は水行術使いのようです。 五行で火は水に弱い、相性は最悪ですね」


 相手は水の上に立って、水弾を灰に撃ち込んでいる。 灰はそれをかわし炎弾を撃ち込むも、波の盾を作り防いでいる。 相手は巨大な水の球を頭上に作るとぶつけて、灰を水球の中に閉じ込めた。 


「このままだと気絶しますね。 あれだけ息巻いてたのにがっかりです......」


 雅がため息をつくと、


「よく見なよ、これで終わらないから」

 
 そう麟が言うと、灰の体ががみるみる赤くなっていき、水球が弾けた。 大量の蒸気に包まれ、相手が灰の姿を見失うと、蒸気の中から飛びだした灰は、相手が出した波の盾ごと殴り付けた。 相手は水面を何度か跳ねて水の中に沈んでいった。


「なんですか!? あの熱量!!......体に纏えば大火傷なのに......」

 
 驚く雅に、僕はいった。


「多分、火行だけじゃなく金行の術も使ったんだよ」


「なるほど体を金属化して、それで炎に耐えたと......修行するといってたのは、本当だったのですね、それにしても神無様、術の種類もわかるなんてさすがです!」


 僕は霊力コントロールのおかげで、相手の術の性質を感じ取れるようになっていた。


 灰が戻ってきて、


「ついてねえ、水辺に水行使いとはな。 まあ俺の新術で倒せたがな」

 
 灰は自信たっぷりに言った。


「金行まで使えるとは、見直しましたよ」


 雅が言うと、灰は驚いて、


「なぜだ!? 俺の術を知っているだと!」


「神無様は、お見通しでしたよ」

 
 そう雅に言われて、


「くそっ! まさか簡単に分析されるとは......だが、全て見せたわけじゃねえ、まだとっておきがあるからな。 俺と当たるまで負けるなよ!」


 そう灰に言われてた。


「わかった、頑張るよ」


 その後、次々と試合が進み、金形代君も簡単に初戦を突破した。


「あいつ、やっぱつえーな、大学一年に圧勝だったぜ」


「ええ、あの金行術、固いから攻撃にも、防御にも転じられる汎用性があるんですよね。 かなりの強敵です」


「どこがだよ、霊力ぶれぶれじゃねーか」
 

 麟がそう言った。 確かに僕も少し違和感を覚えていた。

 
(前はもっと洗練された霊力の動きだった。 何か思うところがあるのかな)


 僕の番が来た。 控え室を後にする僕に、


「頑張れよ! こんなとこで負けんなよ!」

 
「当たり前です! こんな所で神無様が負けるわけないでしょう!」


 二人は変なプレッシャーを与えてくる。


「うー、負けたら、どうしよう」


 僕はそう思いながら会場に入った。
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