虹彩異色のネクロマンサー

曇天

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第二十五話

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「......なるほど、人間や大型の動物からの星幽石生成か。 それは国なら手が出るほど欲しいものだな」

「確かに......」

 レンブラント隊長とカイル隊長は腕をくむ。 

「よく、彼女が話したわね」

 そこにはもう一人、長身の三番隊エマ隊長がいた。 三人は元々一番隊同期だったらしい。

「ええ、フィオさんも奪われた秘術の使用を止めたがっていますから......」

 ぼくたちはフィオさんから許可をもらい、三人にきいた話をした。

「もともとフィオさんはレンブラント隊長には話をしたかったらしいのですが、覚悟が決まらなかったそうです」

「私から軍にこれを伝わればどうなるか、考えれば躊躇もして当然だ」

 レンブラント隊長はメガネをとり、そう目がしらを抑えた。

「本来なら国に伝えなければならない案件だが......」

 カイル隊長は言葉をとめた。

「もしこれを国がしったら、短期に研究を命じられるはず、動物実験から死刑囚などを使った人体実験、拒否すれば他の部隊で行うだろうな」

「......そうね。 仮に研究が成功しても、帝国への宣戦布告まであり得るわ。 そんなことをすればこの国は勝っても、とてつもない代償を払うことになる」

 そう三人は思案している。

「......ただ白き聖者《ホワイトセイント》はその技術を手に入れている。 そして真人教徒から星幽石を集めた」 

 カイル隊長がいうと、エマ隊長はうなづいた。

「白き聖者《ホワイトセイント》は真人教を利用、監獄への襲撃、他にもいくつかの事件を起こしてる。 星幽石を集めて何かしようとしてるのは間違いないわ」

(そうキャリアやユグナさんの町でも...... あれは人間を自分の手で殺さずに星幽石を集める手段だったのかも)

「星幽石で大規模な策謀をおこそうとしている。 厄災か.....」

 カイル隊長は飲み物をのむコップの手を止めた。

「やはり、白き聖者《ホワイトセイント》を探るしかないな」

「多くの星幽石を手に入れようとしてるとするなら、この国での争乱を望むはずだね」

「怪しいものを早急にリストアップし各隊に渡すわ。 それを調査しましょう」

 エマ隊長がそういった。


「ここが本部か、入隊以来だな」 

 大きな建物の広い部屋にぼくたちはいた。 周りには他の隊の隊員たちが整列している。

 数日あと、ぼくたちは首都にある黒き使徒《ブラックアポストル》本部に呼ばれていた。 

『こんなことしてていいのか? 私たちは白き聖者《ホワイトセイント》をおわないといけないのに』

「しかたない。 第一隊ロード総隊長の招集だ。 カイル隊長たちはまだその事を伝えてないだろう」

『まあな。 誰が信頼できるかわからないしな』

 そう静かにミーシャはいった。 

 部屋の扉がひらくと、壇上に威厳のある老人がたった。 ロード総隊長だ。 そのそばには長身黒髪の一番隊の副隊長がいる。 そして下には各隊の隊長が並んでいる。

(黒き使徒《ブラックアポストル》をつくった創始者で、一番隊の前身の伝説の部隊を率いた大戦の英雄)

「......黒き使徒《ブラックアポストル》の隊員諸君、集まってもらったのは他でもない。 君たちからの情報をもとに調べた結果、伝えねばならないことがある」

(まさか......)

「各地で起こる事件や異変、それには自我のある人型ディーシストの組織、白き聖者《ホワイトセイント》の存在が確認された」

 総隊長の言葉に周囲がざわつく。

「自我のあるディーシストだと!?」

「そんな噂は聞いていたが、まさか実在するのか......」

「帝国がつくったのかしら」

「厄介なことになる」 

「対策をとらねばならないが......」

 皆動揺してはいるが、訓練された隊員たちだ。 表情にはださない。

「へっ、いまさらかよ。 そんなもんずっとわかってたろう。 のろまどもめ」

 となりの隊にいた顔にタトゥーのはいった男がそう軽口を叩いた。 他の隊員も驚いてある風はない。 

「ギデルやめろ」

 大柄な男が制止した。

「いいじゃねえかガーム」

(五番隊か...... やはり気づいていたか。 あとは二番隊もなんの反応もなく静かにしている)

 二番隊はフードを深く被り異様な姿をして整列していた。

「かなりの数、軍や我々の隊員が失踪、殺害されているのはしっていよう。 彼らの目的や帝国との関係は不明だが、この国の脅威となる。 我ら黒き使徒《ブラックアポストル》は、全力をもってかの組織の壊滅をめざす。 よいな!」

 そう総隊長は力強くいった。 

「はっ!!」

 みな敬礼で返した。


「おう。 クルス、ミーシャ」

 ソアラさんが手を上げ近づいてきた。

「ソアラさんも呼ばれたんですか」

「ああ、各隊の隊員が呼ばれている。 全員じゃないがな。 それより二人とも、あそこと後ろにいる奴らには気を付けろ」

 そう後ろをみえないようにいった。 そこにはフードを被った数人と、横にはとても普通の人には見えない人相の悪い隊員がいる。

『二番と五番隊か』

「ああ」

「そんなこというなよ。 つれねぇじゃねえかよ」

 横に顔にタトゥーがはいった若い男がたっていた。

(なっ! いつのまに、この男はギデルとか言ってた)

「同じ特殊部隊仲間だろ。 俺は五番隊のギデル、仲良くしようぜ」

 近づいて握手をしようと手を伸ばしてくるのにかえそうと手を伸ばすとと、ぼくの脇腹にどこからだしたのか刃物のようなものを当てていた。

「おいおい、そんな隙だらけで大丈夫かよ。 すぐしんじまうぜ。 お前のような子供はそのネコとさっさと家に帰ってねてな」

「てめぇ!」

 ソアラさんが声を上げるのをぼくは手で制した。

「......心配はいりません。 こちらも今まで命を懸けて来ましたから、そんな隙は与えませんよ」

「なんだと...... いてえ!」

 ギデルはのけぞる。

 そばにきたとき、ぼくの放っていた弾丸がアリとなってギデルに噛みついていた。

「てめえ...... 彷徨える魂よ......」

「やめなさいギデル」

 こちらをにらみ術をつかおうとするギデルを女性が止めた。

「......すみません」

 ゾルは素直にしたがうと、こちらをにらみつつそのまま去っていった。

「ごめんなさいね。 うちの隊の子が、五番隊はいろんな噂がたってるから、ついイライラしているの。 許してあげてね」

 そう丁寧に女性は頭を下げた。

「い、いえ」

「それでは失礼」

 そういって微笑んで女性は去っていった。

「ありゃ、五番隊の副隊長リリーエさんだな。 めちゃくちゃ美人でおしとやかだろ」

『あんな人が五番隊......』 

「元帝国の脱走兵らしい。 五番隊は犯罪者も多いと聞いた」

(帝国兵...... なぜ脱走したんだろう)

 ぼくはリリーエさんのその背をおった。

『なんだよ。 じっと見つめて。 やらしいな』

「ちがうよ! ただ......」

「男ってやつは本当にしょうがねえな。 美人だとすぐ鼻の下を伸ばしやがる」

「ソアラさんまで! ちがうって...... あ、あの」

 弁明しようとすると、しどろもどろになって言葉がでない。

『まあいいや。 でもギデルとかいうやつ、腹立つな。 噛みついてやればよかったか』

「いや、ミーシャのことはあまり広めない方がいい。 この部隊だってどこまで信頼できるかわからないんだ......」

 そうソアラさんがいう沈んだ顔でいう。

(やはりソアラさんはベルトのことを気にしてるのか)

 そのときこちらをみる視線に気づいた。
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