虹彩異色のネクロマンサー

曇天

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第二十四話

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「そんな、レスルの集落が襲われた...... ベルトも」

 フィオさんは驚いて言葉を失っている。 
 
(どうやら、レンブラント隊長は傷つけないように教えてなかったんだな)

 ぼくたちは家にいれてもらった。 家は質素でほとんど家財もない。 どうやら小さな畑を耕して野菜などで生活をしているようだった。 

「ベルトのことをしってるんですか」

「......あの集落からでる前は、遊んだこともあったわ」

 そう沈んだ声でフィオさんはいった。

「なにかしってるんですか? 襲ったもののことも聞かないなんて、襲ったもののことをこ存じなんですね」

「えっ?」

 シーナさんは声をあげる。

「............」

『どうやら、図星みたいね』

「あなた!? まさか」

 フィオさんはしゃべったミーシャをみて驚いている。

「ええ、自我のあるディシーストです。 死にゆく体からぼくが魂を移してしまった...... お願いします!  ぼくはミーシャをもとに戻したい! なにかしってるなら教えてください!」

 ぼくは深く頭をさげた。

『......クルス』

「......ネクロマンシーは呪われた術」

 フィオさんはそうつぶやく。

「......呪われた術」

「人は己の欲を満たすため、ネクロマンシーをつくり使った。 その大罪で、大きな厄災を招いた昔のレスル族は、それを禁忌として封じたの」

「大罪...... 厄災、神話の話ですか」

「......いいえ、実際にあった話だというわ」

『実際の話』

「だけど、レスル族は狂ってしまった、長い間、他の人たちから迫害され土地を追われたことで、その力で復讐を考えた」
 
「それって」

「そうレイスたちが秘術を使って他の人たちを滅ぼそうとした。 それに反対した私の両親は、封印した秘術を盗みだして集落を抜けたの」

『それでここに...... まさかフィオの両親を殺したのは!』

「そうレイスたちよ」

「そうか。 それで秘術は奪われたんですか?」

「ええ......」

『それで話が繋がった。 レイスはこの国を滅ぼそうと、その秘術を使おうとした』

「そうか。 秘術のことは教えていただけないですよね......」

 そうシーナさんがいうと、覚悟したようにフィオは口を開いた。

「人間や大型の動物からも星幽石を生成できる古代の術......」

「いいんですか! 話しても」

「あなたたちには話した方がいいと思うの」

 そういってミーシャをみる。

「私は死を覚悟した両親からその話を聞かされた。 もし奪われたら、信じられるものに話しなさいっていわれたの」

「でも、本当にそんなものがあったら」

 シーナさんは震えている。

『......きっと国は使う。 今は多くの家畜からつくっている。 それをより多くつくれるなら、どんな犠牲を払ってでも......』

「ええ、それで国にも伝えられなかった。 必ず犠牲がでるし、戦争になるから、でもあなたたちは話すわ。 誰かが止めないといけない。 それにその子を助けたいのは本当だと思うから」

 ミーシャをみてフィオさんは悲しそうにほほえむ。

「......ええ、できうるなら被害を減らしたい、話をしていただけますか」

 ぼくが聞くとフィオさんはうなづいた。

「私がしってるすべてを伝えるわ」

 そういうと両親から聞いたとされる話をしてくれた。

「かつてネクロマンサーを産み出した【救世主】《メシア》と呼ばれた術士がいた。 その人は死にゆく人間をよみがえらせることができた」

「そんな人がいたのか」

「そういえば文献にも救世主《メシア》信仰がありましたね。 確か真なる人と呼んでいた」

 シーナさんが思い出したような話した、
 
『真人教もそこからかな』

「ええ、そうかも。 そして死にゆくものをよみがえらせていくうち、人々はその救世主《メシア》が疎ましくなった。 誰もを生き返らせることは、人々の願いではなかったから」

「悪人も生き返るからかな」

「きっとそうね...... そして彼らは救世主《メシア》を殺した。 でもネクロマンシーは過ぎた力だった。 抑制できない力を手に入れた彼らはどうしたと思う?」

『他のものの支配か』

「ええ、ネクロマンサーたちは、その術を使えないものたちを奴隷として支配し始めた。 そしてもたざるものの反旗。 それがネクロマンサーが迫害された最初の理由。 そしておおきな罪を犯した私たちはその後悔から力を封じた」

「それがレスル族」

「そう、でも人間たちはまたネクロマンシーを復活させ、戦争を繰り返している」

「ベルトはレスル族の秘術で戦争をおこそうとしていた...... フィオさんの両親は秘術を盗んだ。 そしてそれを襲ったのは」

「多分レイス...... レスル族を襲ったのも彼だわ」

『自分達の部族をおそったっていうの!?』

「元々レイスはあんな人物ではなかった。 何者かに重症をおわされ突然人格がかわり、他の人間への攻撃を口にするようになった。 当時の族長、私の祖父が死んで、彼が族長になったの」 

 そう沈んだ顔でフィオさんがいう。

(人格がかわった...... まさか殺されてディシーストの器にされたのか)

「でも魂の大きい人間から星幽石を生成できるなら、ものすごい術もつかえますから、確かに国とも戦えるかも」

 シーナさんはそういう。

『それにたくさん集めれば、人をよみがえらせることもできるかもしれない。レスル族だって』

「ええ、でも人からつくった星幽石を手に入れたとしても、人の蘇生はそんな簡単ではないの」

『どういうこと?』

「生物は死ねば魂は記憶と共に四散する。 それは大きな動物や人間ほど大量にね。 だから、よみがえらせたものはその人本人ではないらしいの。 必ずしもいうことを聞いてくれるわけでもない」

「やはり、そうなのか...... 自我をもつ別人」 

「ええ、死にゆくものの魂を移さないと、完全にはよみがえらせることはできないはず......」

(それならミーシャ本人が、ネコに移っていてもおかしくはないか)

 そう思いすこし安心し、気になることをきいた。

「フィオさんは白き聖者《ホワイトセイント》のことはしっていますか?」

「ええ、彼らはたびたび歴史に現れる。 そして人間たちに厄災を振り撒くというわ」

「やはり、それは何者なんですか?」

「ディシーストだけど ......人々は自らの罪といっていたそうね」

「そして彼らは人間に復讐するために、厄災をおこしてるってことですか?」

 シーナさんは首をかしげる。

「復讐かはわからないけれど、人々は彼らを恐れたというわ」

(やはり白き聖者《ホワイトセイント》はぼくたちの敵ってことだな)

 ぼくたちはフィオさんからひとしきり話をきいた。
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