虹彩異色のネクロマンサー

曇天

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第二十二話

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「失礼します。 六番隊、クルスとミーシャはいります」

 ノックをして部屋へとはいる。 そこで敬礼する。 部屋には本棚がおかれ、書斎のようだった。 よれよれのシャツをきたメガネの男性が机の奥に座っていた。 四番隊、レンブラント隊長だった。

「よくきたね。 クルスくんとミーシャくんだね。 まあかけてくれ」

 そうソファーに腕をのばし立ち上がると、目の前のソファーに座った。

「レンブラント隊長、今日はお忙しいなか、わざわざお時間をとらせてしまい、申し訳ありません」

「堅苦しいのは苦手なんだ。 普通でいいよ。 レスル族の話だろう」

『知っているのですか?』

「ああ、ぼくも昔から調べていたからね」

「レスル族の秘術についてなにかご存じてすか?」

「なにか途方もない秘術があるというのは文献などでしっている。 ただ確証もなく調べようもなかったんだ。 幾たびか話を聞きにいったが、彼らは外界に嫌悪感をもっていて...... まあ迫害されてきたのだからしかたない」

「ですが、レスル族のハーフが軍が集落を襲ったと話していました」

「聞いているよ。 ベルトくんだね。 裏切ったとはいえ、彼の出自を考えるとかわいそうなことをしたね......」

 そういうとメガネを直した。

「軍が襲ったとは本当のことでしょうか」

「ふむ、確かに私が彼らに話を聞くため向かったときには、彼らの集落は跡形もなくなっていた。 地面に焼かれたようなあとがあり、襲われたことに間違いはないだろう」 

『軍が......』

「いや、そんな話は聞いてはいない。 いくら特殊作戦とはいえ我々や国安を出し抜くのはそう簡単じゃない」

「じゃあ、軍ではないんですか」

「わからないな...... もし軍で隠密行動をとれるなら、二、五、六番隊だがね。 カイルの六番隊はないが、二番隊や五番隊とはいえ、そこまでやるか...... もししていれば秘術とやらはどちらかにわたっているだろうね」

(二番隊と五番隊か......)

「自我のあるディーシストのことなんですが、なにかご存じですか」

「うむ、ミーシャくんと同じようなものたちだね」

『死ぬまえに魂をうつしとって、他にうつすのは人間でも可能なのですか』   

「正直、成功の前例はないな。 禁忌とされているが、やったものは歴史上、数々いるが成功したのはただの一件......」

 そういうとレンブラント隊長はミーシャをみた。

「ミーシャの例ですか」

「ああ」 

『じゃあ、あいつらはなんなんです?』

「報告は聞いてるよ。 まさか本当に死者を甦らせられるなんて思わないが...... ディシーストが元の生態をもつことを考えると、記憶を継いでいるようにも感じる。 彼らは元の魂の記憶をもつものなのではないかと考えているんだ」

「元の魂の記憶」

「すこしこちらにきてもらえるかな」

 ぼくたちはレンブラント隊長のあとについていく。 地下へと深くもぐると部屋がある。

「さあ」

 なかにはいると、部屋の真ん中に巨大な柱のようなものがたっていた。

「これは......」

「近くでよくみたまえ」

 円柱のものの上部ガラス部分をみる。 ミーシャはぼくの肩にのる。

「なっ!」

『これは!! 私』

 そこにはミーシャの人間のときの姿があった。

「ああ、これはミーシャくんだ」

「ここに保管されていたんですか!」

「そう、そしてその体は生きている」

『えっ!?』

「ミーシャが生きている!?」

「正確には死んでない。 仮死状態だ。 ミーシャくんは瀕死の状態で運び込まれた。 君たち六番隊のシュリエくんの氷で固められてね。 それからこのままなんだ」

(シュリエさんが、でもミーシャが生きている! もしかしたらもとにもどせるかもしれない!)

『この体が死んでないなら、私は......』

「魂だけの存在なのか、彼女の記憶をついだネコなのか。 正直よくはわからない」

 レンブラント隊長がメガネを直した。

「このまま、魂をうつせないんですか!」

「落ち着きたまえ、君が彼女をネコにうつせたのは奇跡的なこと、なぜ成功したのかはまだ不確定だ」

(あれは、ぼくの家にあった術だった。 でももう一度して成功するとは思えない......)

「もし試して失敗したらそれこそおわりだよ」

「......そうですね」

『クルス......』

「......我々のいままでの研究では、人の蘇生には星幽石の力が足りないらしい。 このまま移しても失敗の可能性が極めて高い」 

「星幽石の力...... 家畜から生成しているとききますが、それでは足りないんですよね」

「ああ、その魂を結晶化しても人を蘇生する量には遠く至らない。 君がミーシャ君の魂を移せたのは、おそらく直後の雷が星幽石に力を与えたんじゃないかと思う。 雷にはさまざまな魂の記憶がとりこまれているという伝承があってね」

「雷に魂が...... そうか、やっぱりあの雷か」

 あのときのことを思い出した。 ただはっきりとしないこともあった。

(確かあの時......)

「とはいえ虫などに実験で電気を与えても、うまくはいかなかった」

「そうですか......」

「ただ、まだ可能性はある。 もう少し白き聖者《ホワイトセイント》のことが分かれば、ミーシャくんをもとに戻せるかもしれない」

「ですが、彼らを調べるにも手がかりがなくなってしまったんです。 ですからレスル族の秘術を調べていて......」

「そうだね。 他にもレスル族の生き残りがいるがあってみるかい」

「そんな人が!?」

「彼女にあえば、なにかわかるかもしれない。 我々には一切なにも話さないが、もしかしたら君たちには話すかもしれない」

「わかりました! その人のことを教えてください」

 ぼくたちはレスル族の生き残りにあうため、ヤバーク山へと向かうことにした。


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