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第十四話
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『それでソアラ状況はどうなってる』
「ああ、とりあえず監獄を囲んでいるすこし離れた町は、軍も国安も警察も警備を整えてるから、そこから囚人がでることはできない」
「その内側にある町を囚人たちが襲ってるかもしれない...... か」
「クルスがいうとおり、連絡が途絶えた町が複数あるんだ。 僕たち黒き使徒《ブラックアポストル》はその内部の町の保護と、囚人の確保が任務だ。 ただ......」
ベルトは言葉をのみこんだ。
『その際、囚人の生死は問わない...... か』
「そういうことだ。 相手も終身刑のものや死刑囚もいる。 当然戦闘になる。 相手のことなど考えてたら被害が広がる。 躊躇は許されないぜ」
ソアラさんは厳しい顔で腕を組む。
「それなら星幽石をもってるってことか」
「意図して刑務所で爆破を起こしたなら、脱走者たちに当然星幽石も渡していると考えるべきだろうね」
『だが、逃げられない囚人はいずれ詰むだろ』
「住民を人質に政府と交渉だろうな。 帝国への亡命か、減刑......」
「犯罪者だよ。 そんなのに応じないことはわかってるんじゃない」
ソアラさんにベルトがいった。
「いや、いまの国の状態なら、人質を見捨てたら国民の怒りをかうから交渉に応じる可能性はある」
『かもな...... だからこその刑務所襲撃なのかも』
「なら早くしないと、もし交渉にはいって失敗でもしたら、町の人たちが危ない上に暴動の引き金になりかねないな」
「うん、これをみて」
ベルトがそういって地図をだし、指差した。
「僕たちはここにいる。 そして僕たちが担当するのがこのアクールという町だよ」
『それで厄介そうな囚人はわかってるのか』
「ああ、悪名高いネクロマンサーがいる。 とりわけ厄介なのは、この十人、そいつらがどこかにいるはずだ」
そういうとソアラさんは十枚の写真をだした。
『こいつは......』
ミーシャが言葉を止めじっとみいっている。
その日の夜、準備をしてぼくたちはアクールへとむかった。
「見えてきた町だ」
遠くに町が見えてきた。 昔戦争時に建てたという石壁で囲まれている。
「まって、あれ......」
ベルトは空を指差す。 遠くにいくつか光るものが飛んでいる。
『ディシースト...... 虫、ホタルか。 偵察だな』
「感覚共有してるはずだから、落とせばダメージはあたえられるぞ」
「ソアラさん、やめておこう。 気づかれたら、警戒が厳重になるし、町の人たちに危害が加えられるかもしれない。 とりあえず町の状況を知るのが先決だ」
『だな。 なら私のヒラメで隠れていこう』
ミーシャのヒラメで地面に伏せつつ、町へと近づいた。 町の前に四人ほど囚人服のものがいた。 そのそばに縛られた住民らしき人たちがいる
「やはり、見張りがいる。 あれは人質か、見張りはなにかをもってる」
「よくみろあれはディシーストだ」
ソアラさんにいわれてみると、確かに黒い細い魚のようだ。
「町か、看守から奪ったものを素材にネクロマンシーで作ったんだろう。 刃物か銃器か、どんな能力があるかわからない。 作戦どおり、慎重に壁にいこう」
ぼくたちは横に周り横壁についた。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 鋼穿山甲《メタルパンゴリン》」
ベルトは胸あてから、動物を作り出す。
『それがベルトのセンザンコウか』
「ああ、丸い盾になれるし、この爪で固い地面もほれるんだ」
「ずいぶん珍しい動物だね」
「うん、僕の住んでた村の山にはセンザンコウがいて、このリプルは子供の頃からの友達だったんだ。 死にかけたリプルを何とかディシーストにした」
センザンコウは壁の下を掘り進める。
「さあ、いこう」
ソアラさんを先頭にぼくたちは町に潜入した。
町の中は静まり返っている。 外を歩いているのは、囚人服の人間だけだった。 人の気配がするから、おそらくはみな家に隠れているのだろう。
「ネクロマンサーだろうが、こいつらはあまり積極的に参加してる感じじゃないな」
『ああ、多分他のネクロマンサーに協力させられてるのかもしれない。 刑が軽いものにとって、脱走なんてリスクしかない迷惑なことだからな』
「だとするなら、付け入る隙はありそうだ」
「うん、ただ味方になってくれるかはわからないね」
ベルトの言葉にみなうなづく。
「この脱走を指揮している主犯を捕縛すれば、投降をうながせるかもしれない」
『だったら、あそこか』
町の中央に大きな建物がみえた。
「あれは町の会議場だ。 確かにあそこならこの町をみわたせる」
「ここで、ネクロマンシーを使うと目立つな」
『なら私だ。 ディシーストの不自然さがない私なら誰も警戒しない』
ミーシャは飛び出していった。
「ああ、とりあえず監獄を囲んでいるすこし離れた町は、軍も国安も警察も警備を整えてるから、そこから囚人がでることはできない」
「その内側にある町を囚人たちが襲ってるかもしれない...... か」
「クルスがいうとおり、連絡が途絶えた町が複数あるんだ。 僕たち黒き使徒《ブラックアポストル》はその内部の町の保護と、囚人の確保が任務だ。 ただ......」
ベルトは言葉をのみこんだ。
『その際、囚人の生死は問わない...... か』
「そういうことだ。 相手も終身刑のものや死刑囚もいる。 当然戦闘になる。 相手のことなど考えてたら被害が広がる。 躊躇は許されないぜ」
ソアラさんは厳しい顔で腕を組む。
「それなら星幽石をもってるってことか」
「意図して刑務所で爆破を起こしたなら、脱走者たちに当然星幽石も渡していると考えるべきだろうね」
『だが、逃げられない囚人はいずれ詰むだろ』
「住民を人質に政府と交渉だろうな。 帝国への亡命か、減刑......」
「犯罪者だよ。 そんなのに応じないことはわかってるんじゃない」
ソアラさんにベルトがいった。
「いや、いまの国の状態なら、人質を見捨てたら国民の怒りをかうから交渉に応じる可能性はある」
『かもな...... だからこその刑務所襲撃なのかも』
「なら早くしないと、もし交渉にはいって失敗でもしたら、町の人たちが危ない上に暴動の引き金になりかねないな」
「うん、これをみて」
ベルトがそういって地図をだし、指差した。
「僕たちはここにいる。 そして僕たちが担当するのがこのアクールという町だよ」
『それで厄介そうな囚人はわかってるのか』
「ああ、悪名高いネクロマンサーがいる。 とりわけ厄介なのは、この十人、そいつらがどこかにいるはずだ」
そういうとソアラさんは十枚の写真をだした。
『こいつは......』
ミーシャが言葉を止めじっとみいっている。
その日の夜、準備をしてぼくたちはアクールへとむかった。
「見えてきた町だ」
遠くに町が見えてきた。 昔戦争時に建てたという石壁で囲まれている。
「まって、あれ......」
ベルトは空を指差す。 遠くにいくつか光るものが飛んでいる。
『ディシースト...... 虫、ホタルか。 偵察だな』
「感覚共有してるはずだから、落とせばダメージはあたえられるぞ」
「ソアラさん、やめておこう。 気づかれたら、警戒が厳重になるし、町の人たちに危害が加えられるかもしれない。 とりあえず町の状況を知るのが先決だ」
『だな。 なら私のヒラメで隠れていこう』
ミーシャのヒラメで地面に伏せつつ、町へと近づいた。 町の前に四人ほど囚人服のものがいた。 そのそばに縛られた住民らしき人たちがいる
「やはり、見張りがいる。 あれは人質か、見張りはなにかをもってる」
「よくみろあれはディシーストだ」
ソアラさんにいわれてみると、確かに黒い細い魚のようだ。
「町か、看守から奪ったものを素材にネクロマンシーで作ったんだろう。 刃物か銃器か、どんな能力があるかわからない。 作戦どおり、慎重に壁にいこう」
ぼくたちは横に周り横壁についた。
「彷徨える魂よ、我が声に答えよ。 鋼穿山甲《メタルパンゴリン》」
ベルトは胸あてから、動物を作り出す。
『それがベルトのセンザンコウか』
「ああ、丸い盾になれるし、この爪で固い地面もほれるんだ」
「ずいぶん珍しい動物だね」
「うん、僕の住んでた村の山にはセンザンコウがいて、このリプルは子供の頃からの友達だったんだ。 死にかけたリプルを何とかディシーストにした」
センザンコウは壁の下を掘り進める。
「さあ、いこう」
ソアラさんを先頭にぼくたちは町に潜入した。
町の中は静まり返っている。 外を歩いているのは、囚人服の人間だけだった。 人の気配がするから、おそらくはみな家に隠れているのだろう。
「ネクロマンサーだろうが、こいつらはあまり積極的に参加してる感じじゃないな」
『ああ、多分他のネクロマンサーに協力させられてるのかもしれない。 刑が軽いものにとって、脱走なんてリスクしかない迷惑なことだからな』
「だとするなら、付け入る隙はありそうだ」
「うん、ただ味方になってくれるかはわからないね」
ベルトの言葉にみなうなづく。
「この脱走を指揮している主犯を捕縛すれば、投降をうながせるかもしれない」
『だったら、あそこか』
町の中央に大きな建物がみえた。
「あれは町の会議場だ。 確かにあそこならこの町をみわたせる」
「ここで、ネクロマンシーを使うと目立つな」
『なら私だ。 ディシーストの不自然さがない私なら誰も警戒しない』
ミーシャは飛び出していった。
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