虹彩異色のネクロマンサー

曇天

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第九話

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『......特に奴らに繋がるめぼしいものはなかったか』

 ぼくはミーシャと人通りのない公園で話をしていた。

 あれから数日後、カイル隊長から連絡があった。

「ああ、クリアやこの間の研究室も捜査したらしいけど、関連の書類や証拠は見つからなかったんだって」

『それじゃあ、工場の方は』  

「工場内はもぬけの殻...... でも大量の血痕だけはあったらしい。 ただし工場とクリアの繋がりを見つけられず、建物の所有者が不明だからと、捜査は振り出しになったって」

 ぼくはカイル隊長から聞いた話をミーシャにした。

『あれだけ危険をおかして、収穫なにもなしなんてそんなのあるかよ!』

 ミーシャは怒ってそういった。

「継続して捜査するらしいけど、もしかしたら上に圧力がかかったのかも。 しっ......」

 人の気配を感じミーシャを止める。

「無事だったか」

 そこに現れたのはハリザさんだった。

「ハリザさん......」


「なるほど。 自我をもつディシーストか。 確かに異常な話だな......」

 ハリザさんはぼくの隣に座り、タバコを吸いながら空をみる。

「それでハリザさんはなんでここに......」 

「マフィアとの契約は終了したが、あのあとが気になってな。 すこし調べていた」

「あのあと...... マフィアのことですか」

「ああ、かなりの数の手下とネクロマンサーを向かわせたらしい。 ただ......」

「......誰も帰ってこなかった」

「そう誰一人な。 だが犠牲が大きいからこのまま放置するつもりらしい、しってるものも少ないしな。 メンツのためにはなかったことにする腹づもりだ」

「なら、その線から調べるのは無理みたいですね」

「いや ......あれから気になる話を聞いた」

「気になる話?」

「あれと同じ薬が、南のクラーク地方にも広がっているらしい。 マフィアルートだからかなり確かな話だ」

「そんな......」

「まあ、情報をもらった手前、それだけ伝えておく」

「ありがとうごさいます」

「あと、国家に忠誠を誓うのもほどほどにしといたほうがいい」

 立ち上がったあと、ふりかえりそうハリザさんはいった。

「えっ?」

「正義や国家のためなど、高尚なお題目を唱えてはいるが、所詮国も人間がやっているものだ。 人は欲にかられる。 いつか裏切られるかもしれん。 俺のようにな......」

 それだけいうとこちらをみないでハリザさんは去っていった。

(それはわかっている...... でもぼくにはやらないといけないことがある。 自我のあるディシースト、その存在があるのなら、きっと......) 

 その時、ミーシャがベンチの下からぼくの目をじっとみすえていた。


「ここがクラーク地方か......」

 ぼくたちは汽車にのってクラーク地方のハルトリアという町にまでやってきた。 そこは見渡すかぎり乾燥した土地が広がる。

『大きいけど田舎だ。 本当にこんなところで麻薬をひろがってんのかよ』 

「確かに中央に近い都市ならわかるけど、こんな田舎で...... ただ今はここしか手がかりがないからね」

 ぼくたちは町をあるく。 寂れている以外特に異変は感じない。
  
「えっ? 軍属ですか」

 警察を探すと女性警察官が応対してくれた。

「本当だ。 こんな少年なのに......」

 渡した軍隊手帳のぼくの年齢をみて驚いている。 その警察官はまだ新人らしくレリーさんといった。


「新種の麻薬 ......聞いたことがないですが。 それでなぜ軍医さんが」

(警察官がしらないのか)

「その麻薬に帝国の策謀の可能性もあり、ぼくに特別任務がかされたんです」

「帝国の...... そうですか。 仕事にあぶれたものや、将来を悲観した若者、非行少年、少女なんかが使用していますが、それほど珍しいものはありませんね。 それより......」

 なにか含むような言い方をした。

「なにか別にあるんですか......」

「いえ、すこし」

 レリーさんがいうには、ここに本部がおかれている、ある宗教が急激に信者を増やしていているという。

「【真人教】《しんじんきょう》ですか。 戦争前からありましたけど、そこまで信者がいた覚えもありませんが......」

「ええ、ですが戦後急速に信者を増やしたんです」

「戦後...... 確かに神にも祈りたくなる気持ちはわかります。 あれは地獄でしたし......」

「いえ、実は彼らにはある噂があるんです」

「噂......」

「ええ、秘密の儀式で死んだ人が生き返る。 その噂で大勢が信者になっているようですね......」

 レリーさんはうつむいて言葉少なくいった。

(死んだ人が甦る...... ネクロマンシーなのか。 まさかリジェクトたちに関係するのか)

 ぼくはミーシャをみる。

「死んだものなんか生き返るはずはないのに......」

 そうつぶやくようにレリーさんはいう。

(調べる必要があるな)

 ぼくたちはレリーさん真神教本部に案内してもらうことにした。
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