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「ぐっ!」
俺はひざをついた。
(魔力衝突のダメージが......)
「くっ、首の裏に隠してたなんて...... でも最後のかけも私を倒しきれなかったわね。 たぶんもうそれひとつでしょう。 この威力のかくし球なんてそう何個もないはず」
ゆっくり立ち上がりながら、リステンブラはそう確信している。
(くっ、確かに黒玉はこれ一個......)
首の後ろからくっつけた黒玉をとると俺はかまえる。
「コウミ!!」
「くるな!!」
アンナを制した。
「かばおうというの美しいわね...... でもあなたは私の世界にはいらないわ!」
激しい剣で俺をおそう。 俺は玉で何とかふせいだ。 が剣で玉を弾かれる。
「死になさい!」
腰に隠蔽でかくしていた玉を投げつける。
「なっ! でも一度程度なら無駄よ!」
リステンブラは体にあたるのもかまわず剣を振るう。
俺に届く直前にその剣の切っ先がとまる。
「ぐっ、なに...... 力が、魔力を失う......」
リステンブラがひざをついた。
「これは......」
地面に透明な玉が転がり、白い色へと変わる。
「......吸魔玉《ドレインスフィア》だ。 そいつは任意のやつから魔力を奪う」
「ぐっ!! 取引《トレード》! フリールート!!」
リステンブラが立ち上がると、一瞬で消え、アンナの後ろへ移動した。
「これで私を破ったつもりかしら! 魔力なら剣から得たわ! この子を取引《トレード》で失いたくなければ! その神界晶を渡しなさい!」
「............」
無言で俺は神界晶をアンナのまえに投げた。
「......ごめんなさい」
そうアンナはあやまる。
「ふふっ、クズのあなたでも健気なこの子を見捨てられないみたいね」
アンナを離してリステンブラが神界晶を拾う。
「いえ、ごめんなさいはあなたにいってるの」
「えっ......」
深々と剣がリステンブラの背中に刺さる。
「ぐっ! 私に剣がささるなんて、これは魔力剣! でも...... 神界晶さえあれば、肉体の回復なんて...... なっ、魔力がなくなる...... まさかこの剣!!」
「そうだよ。 聖剣ラーシャインだ。 俺はこのときのために探して作っていた。 そいつは魔力を奪う力をもつ。 なにせ吸魔玉《ドレインスフィア》はそれを模してつくられたものだからな」
「ば、ばかな......」
リステンブラの手から神界晶がこぼれ落ちくだけ散る。
「な、なんで...... その子がこの剣を......」
リステンブラはアンナをみる。
「元々こうするつもりだったからな」
「ど、どういうこと...... その子はたまたまあなたを追ってきて、そして私が呼びよせたのに......」
「いいえ、たまたまじゃないわ。 私は手紙を読んでここにきたの」
「手紙......」
「ええ、少したってから城跡に、置いている剣をもってきて、なにもしないでみててくれって書いてあったわ」
「なっ...... どういうこと......」
「お前は俺とおなじくクズで最悪の状態の想定もする。 だから危なくなったときのための保険に、アンナを一緒につれてくるだろうと思ってた」
「......わざと、私に呼ばさせたのか......」
「ああ、お前がなにを切り札にもってるかわからん。 俺一人じゃどうにもならんから、アンナを切り札にした。 その剣もお前が反逆されたときの保険にとつくってた剣なんだろ。 奪われてケイオスに使われたなんてな」
「ぐっ......」
俺は神界晶を手にリステンブラにちかづく。
「ふっ...... さっさと消し去ればいいわ」
「取引《トレード》、リステンブラ魔力値1000万か...... 今の俺にはきついが......」
俺は剣を抜き、リステンブラにふれる。
「まさか...... やめなさい!!」
「取引《トレード》」
リステンブラの姿が輝きその角がなくなった。
「くっ......」
「ふう、やはりきついな......」
「汚い人間に...... 私を...... よくも......」
「お前はアンナには手をださないといいつつ、その理想を自分の都合で簡単にすてたよな。 お前は人間を欲深で汚いといっていたが、お前自身が人間そのままなんだよ...... まあ、だから許せなかったのかも知れないがな」
「............」
リステンブラは無言で唇をかんだ。
ゴゴゴゴ......
大きな音が響き、地面がひび割れ、大地が隆起する。
「この世界はもう壊れる。 アンナ」
アンナをかたわらに抱くと魔法を使った。
ーーその身は高く遠く、どこまでも自由に、妨げるものなしーー
「フリールート」
俺たちは執務室に戻った。
それから一週間あと、俺とアンナは草原を歩いていた。
「ねえコウミ、リステンブラはどうなったのかしら?」
「さあな。 そのまま人間がいやで死んだか、生き延びたか...... あいつから奪った魔力の玉をおいてきたからな。 どちらにせよ、あいつ自身が決めることだ俺が決めることじゃない」
「自由に...... か、それでグナトリアをみんなに任せたの?」
「元々俺は人の下もきらいだけど、上もきらいだということがやってみてわかった。 あいつらなら俺よりうまくやるし、いやなら自分でどうするか自分で選べるだろうしな。 それよりアンナは国からはなれていいのか?」
「そうね...... 別に国が必要だったわけじゃないみたい。 王女としてなにもできなかった罪悪感だったのかもね。 国を取り戻して皆も戻ってきてる。 だから私も自由になったの」
そういって俺のそばに寄り添った。
「じゃあ、テキトーに旅にでもいくか」
「ええ、自由にね」
その時二羽の鳥が、雲ひとつない空を遠く飛んでいくのが目にはいった。
俺はひざをついた。
(魔力衝突のダメージが......)
「くっ、首の裏に隠してたなんて...... でも最後のかけも私を倒しきれなかったわね。 たぶんもうそれひとつでしょう。 この威力のかくし球なんてそう何個もないはず」
ゆっくり立ち上がりながら、リステンブラはそう確信している。
(くっ、確かに黒玉はこれ一個......)
首の後ろからくっつけた黒玉をとると俺はかまえる。
「コウミ!!」
「くるな!!」
アンナを制した。
「かばおうというの美しいわね...... でもあなたは私の世界にはいらないわ!」
激しい剣で俺をおそう。 俺は玉で何とかふせいだ。 が剣で玉を弾かれる。
「死になさい!」
腰に隠蔽でかくしていた玉を投げつける。
「なっ! でも一度程度なら無駄よ!」
リステンブラは体にあたるのもかまわず剣を振るう。
俺に届く直前にその剣の切っ先がとまる。
「ぐっ、なに...... 力が、魔力を失う......」
リステンブラがひざをついた。
「これは......」
地面に透明な玉が転がり、白い色へと変わる。
「......吸魔玉《ドレインスフィア》だ。 そいつは任意のやつから魔力を奪う」
「ぐっ!! 取引《トレード》! フリールート!!」
リステンブラが立ち上がると、一瞬で消え、アンナの後ろへ移動した。
「これで私を破ったつもりかしら! 魔力なら剣から得たわ! この子を取引《トレード》で失いたくなければ! その神界晶を渡しなさい!」
「............」
無言で俺は神界晶をアンナのまえに投げた。
「......ごめんなさい」
そうアンナはあやまる。
「ふふっ、クズのあなたでも健気なこの子を見捨てられないみたいね」
アンナを離してリステンブラが神界晶を拾う。
「いえ、ごめんなさいはあなたにいってるの」
「えっ......」
深々と剣がリステンブラの背中に刺さる。
「ぐっ! 私に剣がささるなんて、これは魔力剣! でも...... 神界晶さえあれば、肉体の回復なんて...... なっ、魔力がなくなる...... まさかこの剣!!」
「そうだよ。 聖剣ラーシャインだ。 俺はこのときのために探して作っていた。 そいつは魔力を奪う力をもつ。 なにせ吸魔玉《ドレインスフィア》はそれを模してつくられたものだからな」
「ば、ばかな......」
リステンブラの手から神界晶がこぼれ落ちくだけ散る。
「な、なんで...... その子がこの剣を......」
リステンブラはアンナをみる。
「元々こうするつもりだったからな」
「ど、どういうこと...... その子はたまたまあなたを追ってきて、そして私が呼びよせたのに......」
「いいえ、たまたまじゃないわ。 私は手紙を読んでここにきたの」
「手紙......」
「ええ、少したってから城跡に、置いている剣をもってきて、なにもしないでみててくれって書いてあったわ」
「なっ...... どういうこと......」
「お前は俺とおなじくクズで最悪の状態の想定もする。 だから危なくなったときのための保険に、アンナを一緒につれてくるだろうと思ってた」
「......わざと、私に呼ばさせたのか......」
「ああ、お前がなにを切り札にもってるかわからん。 俺一人じゃどうにもならんから、アンナを切り札にした。 その剣もお前が反逆されたときの保険にとつくってた剣なんだろ。 奪われてケイオスに使われたなんてな」
「ぐっ......」
俺は神界晶を手にリステンブラにちかづく。
「ふっ...... さっさと消し去ればいいわ」
「取引《トレード》、リステンブラ魔力値1000万か...... 今の俺にはきついが......」
俺は剣を抜き、リステンブラにふれる。
「まさか...... やめなさい!!」
「取引《トレード》」
リステンブラの姿が輝きその角がなくなった。
「くっ......」
「ふう、やはりきついな......」
「汚い人間に...... 私を...... よくも......」
「お前はアンナには手をださないといいつつ、その理想を自分の都合で簡単にすてたよな。 お前は人間を欲深で汚いといっていたが、お前自身が人間そのままなんだよ...... まあ、だから許せなかったのかも知れないがな」
「............」
リステンブラは無言で唇をかんだ。
ゴゴゴゴ......
大きな音が響き、地面がひび割れ、大地が隆起する。
「この世界はもう壊れる。 アンナ」
アンナをかたわらに抱くと魔法を使った。
ーーその身は高く遠く、どこまでも自由に、妨げるものなしーー
「フリールート」
俺たちは執務室に戻った。
それから一週間あと、俺とアンナは草原を歩いていた。
「ねえコウミ、リステンブラはどうなったのかしら?」
「さあな。 そのまま人間がいやで死んだか、生き延びたか...... あいつから奪った魔力の玉をおいてきたからな。 どちらにせよ、あいつ自身が決めることだ俺が決めることじゃない」
「自由に...... か、それでグナトリアをみんなに任せたの?」
「元々俺は人の下もきらいだけど、上もきらいだということがやってみてわかった。 あいつらなら俺よりうまくやるし、いやなら自分でどうするか自分で選べるだろうしな。 それよりアンナは国からはなれていいのか?」
「そうね...... 別に国が必要だったわけじゃないみたい。 王女としてなにもできなかった罪悪感だったのかもね。 国を取り戻して皆も戻ってきてる。 だから私も自由になったの」
そういって俺のそばに寄り添った。
「じゃあ、テキトーに旅にでもいくか」
「ええ、自由にね」
その時二羽の鳥が、雲ひとつない空を遠く飛んでいくのが目にはいった。
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