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第四十一話

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「とりあえず、周囲の国の攻撃を防げるぐらいには、町は強化されたな」   
  
 俺はグナトリアの執務室で会議をしていた。

「ああ、町は六つ、人口は一万、戦えるものは2000といったところだ」

 シモンズはそういって資料を見ている。

「交易も順調です。 他国との貿易販路も拡大中で、備蓄の食料、武器なども準備はできました」

 ミーシャが報告した。

「ふむ、とりあえずは安定してるな。 ということは俺の魔力を更に底あげしないと、でも戦える力がな......」

「まあ、正直コウミどのは身体能力は低めで戦闘には向いていませんね」

 ハクレイははっきりそういった。 皆うなづく。

「で、でもなんとか今までやってきたよ。 Aクラス冒険者にもなったし......」

「ですが、アイテムがなければ、普通の人に負けるでしょうね。 私やハクレイ、シモンズどのが訓練しましたが、上達はしませんでした」

 セーヌがため息をついた。

「戦闘のときの機転がきくことはいいがな」

「用意がないとてんでだめですもの」

「攻撃魔法も上手く操れないですし......」

「何よりシンプルに体が弱すぎる」

「......あと無駄に性格が悪い」

 みんなに散々ダメ出しされる。

「ひ、ひどすぎる...... アンナ、アンナなんかいってやって!」 

「まあ、戦闘は他の人間に任せて、魔力の底上げをして、アイテム作成にいそしめばいいんじゃない」

「ア、アンナまで......」

 皆が部屋をでていくと、リリンが話しかけてくる。

「コウミさん! 少しいいですか」

「ん? なんだ」

「実は、これ」

 そういうと、一つの古い本をもってきた。

「これは?」
 
「父さんがもっていた本で、古い錬金術の本なんですが...... 私が本をみてくった魔力をみるガラスで見ると......」

 開けた本の文字が光り地図へと変化した。

「おお! これ地図か! 宝物の地図?」

「実はそこは錬金術士の遺跡らしくて......」

「錬金術士の遺跡?」 
 
「ええ、そこにいけば何かのアイテムを見つけられるのかなって」

「ふむ、魔力もあげたいし、新しい武器をつくれるかも、いってみるか」 

 リリンとアンナを連れてその場所へと向かった。

 
 俺たちは荒れた山道を歩く。 そこは大陸の西側に位置する場所で、過酷な土地でもあった。
 
「ここか...... 国もないような田舎だな」

「それどころか木々もないわね。 人も住んでないようだし......」

「錬金術師たちは、昔迫害されてここら辺に逃げていたといいます」

「迫害...... 変なもんでも作ったんだな。 リリンみたいに」

「誰が私みたいですか!! ......まあ一説には魔王をつくったとか、世界を支配しようとしたとか、色々いわれてますが、はっきりしたことはわかっていません。 ですが、住むところをなくしたものたちがここに隠れ住んだそうです」

「まあ、確かにここは追いやられた者たちしか住めないな...... 水すら見つかりそうにない。 まさしく陸の孤島だ」

 その時、荒れた地面から大きな岩のような人の形をしたものが複数現れた。
  
「ゴアアアアア!!」

 そう叫びながら岩の腕を振り回す。

「ゴーレムです!!」

 アンナは操魔の短刀《マジックナイフ》でゴーレムを一閃して両断した。

「すげえな...... それを人でやってくれたら今まで簡単だったのに」

「いやよ。 コントロールも難しいし、最悪仲間も斬ってしまうもの。 もしものときしか使わないわ」

「ますます威力が上がってますね......」

 そういいながらリリンは斬られたゴーレムを調べている。

「......やっぱり。 これは錬金術師のつくったものですね」

「そうなのか?」 

「ええ、多分これ行動を指示する紋様だと思います」

 リリンは壊れたゴーレムに刻まれた文字を指差す。

「ならこいつ作れるのか! 衛兵にぴったりだけど!」

「残念ですけど無理ですね。 紋様の意味がわからないし......」

「少しはなれてくれ。 取引《トレード》で出してみる」

 俺は取引《トレード》を使った。

「ゴアアアアア!!」

「おわっ!!」

 殴られそうなのをかわすと、アンナが倒してくれた。

「やはり、紋様の意味がわからないと指示はできません」

「みたいだな。 間違って暴走してるのかもしれんしな」

「しかたないわ。 先にいきましょう」

 俺たちは先に進む。

「それでリリンここには何かのあるのか?」

「わかりませんが、父さんが昔、遺跡には錬金術師がつくった最高の秘密があると...... でも強いモンスターがいて、手に入れられないとはいってました。 ほらあそこに柱が見えてます」

 山の中腹にポツンと大きな四本の柱があり、その中央に下への階段が見えていた。
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