上 下
33 / 66

第三十三話

しおりを挟む
 アーシェイカから預かった鍵を扉にさした。

「ちょうどぴったりだな」

 そして俺は扉にその鍵を回した。

 ーー荒れ狂う水よ、大河のごとく、全てをのみこめーー

「アクアウェーブ」

 後ろから放たれた鉄砲水が俺たちをのみこんだ。


「さあ、行きましょう......」

 そう言ったのはディルヒアだった。 その後ろから黒騎士たちが現れる。

「あいつ...... 捕まってなかったのか」

「みたいね。 様子を見ましょう」

 俺たちはクリュエの魔法防御と俺の隠蔽の魔法で隠れていた。

「アーシェイカさんの予測したとおり、襲ってきましたね。 外にいた護衛の人は大丈夫でしょうか?」

 クリュエが心配そうにいった。

「まあ、魔力は感じるし死んでないな。 殺せば嫌でも中に聞こえる。 それだと奇襲できないから、睡眠か催眠魔法でも使ったんだろう」

「私たちは危険だから、ためらいなく高位の攻撃魔法か。 プロのやり方ね」

 鍵で扉が開けられる。

 ゴゴゴゴ......

 ディルヒアたちは扉の中へと入っていく。

 俺たちもついていくと、そこは神殿のようでいくつもの柱が中央を囲んでいる。 中央には祭壇がありその上に箱がおいてある。

「あったわ......」

 その箱をディルヒアがあける。

「なっ!? 中身がない!!!」

 そう声をあげると周囲を騎士たちに探させている。

「なんだ。 ないのかよ」

 俺は隠蔽の魔法をといた。

「あなたたちは!? 箱の中身を持っていったの!! いや、違うわね......」

「ええ、私たちはここに入ってないわ」

「その中になにがあったんだ?」

「あなたたちには関係ないものよ。 そのまま消えなさい!!」

 そういうと呪文を唱える。 巨大な炎の波がこちらを襲う。

 ーー汝、根源の素、我が身にその恩恵で包み込めーー

「オールマジックシールド」

 クリュエがそう唱えると、半透明の膜が俺たちを包むと炎を完全に遮断した。

「バカな!! あんな高位魔法をあんな子供が使えるなんて...... うっ!」

 アンナの弓がディルヒアの足を射ぬく。

 騎士たちがこちらへ迫ってくる。

「そこ危ないぞ」

「がっ!!」

 騎士たちが俺が隠蔽魔法で、見えなくして転がした蒼氷球を踏んで凍りつく。

「ぐっ、たった三人で......」

「普通の三人じゃないんだよ。 それであそこにはなにがあったんだ」

「言うか!!」

 ディルヒアは怒りの形相で拒否した。

「そうか、 いわないか! ならばその衣服に隠蔽の魔法を......」

 ボコッ

「いた!!」

「やめなさいクズね」

 アンナに弓で殴られた。

「............」 
 
 クリュエが無言で俺から距離をとった。

「ちょっとした冗談だよ! ほんと! 俺はクズだけど、そっちのクズじゃないの!」

 そう必死に弁明した。

「......まあ、こいつに聞いても仕方ないか」

「そうね。 箱になにもないもの」

「アーシェイカさんもなにかはしらないって言ってました」

「じゃあかえるか」

 俺たちはディルヒアたちを拘束してかえった。


「ふむ、なにもなかったか......」

 アーシェイカはそういって考えた。 ディルヒアたちはギルドが回収拘束したと言う。

「アーシェイカは鍵を持ってたなら、自分でなんで探さなかったんだ?」

「あの滝の裏は魔力の結界がはられていてね。 ギルドの魔法使いで、はずすのにこの十数年の年月がかかったんだよ。 それに私は狙われていたようだしね」

「そんな力を最初の魔人はもっていたのか」

「ああ、最初の魔人は恐ろしい力を持っていたといわれている」

「恐ろしい力? 魔力でモンスター操る力だな」

「いいや、違う。 恐ろしい力とは君と同じさ、ものを交換する力だ」

「取引《トレード》か!?」

「そうだ。 魔人はその力を使い、魔力を用いてさまざまなものをつくりだしたという」

「錬金術みたいですね」

 クリュエがそういうと、アーシェイカは深くうなづく。

「まさしく、元々錬金術師が疎まれてきたのも、それが理由らしい。 最もその最初の魔人が生まれたのも錬金術のせいだという話もある」

「なるほど、それなら錬金術がうとまれるわけね。 それでなんで魔人なんか作ったんですか?」

 アンナがアーシェイカに聞いた。

「ああ古代人は魔力やアイテムで生物を加工したという。 強化したり、凶暴化させたり、戦争、採掘、素材などに利用したそれがモンスターだ。 それは当然人間にも適用された。 奴隷や捕虜などだ」

「魔人はその一体なのか......」

「ひどい......」

 クリュエが顔をしかめる。

「実験体か、道具ってことね」

「それが支配する側に回ったということだ」

 アンナに言われて、そうアーシェイカは目を伏せた。

「因果はめぐるな」

「そうだな...... 人が存在する以上、常に果てのない欲との戦いだ。 まあ、これで奴らも少しは静かになるだろう。 君たちには感謝する」

 そうアーシェイカは頭を下げた。

 その功績をもって、俺とアンナはAクラス、クリュエはBクラスへと昇格した。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

処理中です...