上 下
20 / 66

第二十話

しおりを挟む
「ここです......」

 リリンはスラム奥の小さな家へと手招きした。

「こんにちわー」

「おや? ひさしぶりだねリリン」 

 中にはいると奥から小柄なおばあさんがでてきた。

「サルビナさん。 おひさしぶりです!」

「で、今日は何を探しにきたんだい。 正直いまは、いいものはないよ......」

 周囲をみると、ひものやら何かの液体のはいった瓶やら、怪しげなものが棚においてある。

「いや、人を集めたいんだ」

「人を? どういうことだい」

 俺たちは事情を話した。

「ふむ、国をつくろうとしている...... か」

「それで人を集めたいんです。 どうですかサルビナさんも、素材屋としてモンスターに詳しいでしょう。 ねえコウミさん」

「そうだな。 何かの知識があるものは誰でも欲しいしな」

「ありがたいことだけどね...... そうもいかんのさ」

 サルビナは首をすくめた。

「ここに思い入れがありますものね」

 アンナがいうと首をふる。

「そういうことじゃない...... 動けないんだよ」

 そうサルビナは顔のシワを更に深くしてつぶやいた。

「どういうことだ? 町を監視している奴らと何か関係があるのか?」

「ああ、知ってたのかい...... この町はいまドルクスっていう盗賊崩れが支配しているのさ。 奴らの手下百人程度がこの町を監視している」

「なんで?」 

「誰かと取引しているって話だが、よくはわからないね...... ただこの町から出ていく者たちに制裁を加えて、閉じ込めているのさ」

 サルビナはため息をついた。

「ここは無法者の溜まり場なのに、誰も反抗しないのか」

「やつには、マルキアって凄腕の剣士がついていてね。 反抗した奴らは全員叩きのめされて、山の鉱山へ送られちまってる。 それに武器になるようなものは全部取り上げられちまってんのさ」

 そういって木のフォークを見せた。

「じゃあ、ここにいる奴らを仲間にできないってことか」

「連れて出ようとしても、捕まるね。 入るのは可能でも出るのは難しいよ。 あんたらも目をつけられんうちに帰んな。 あたしらはもう外には出られん......」

 そうサルビナは目を伏せた。


「参ったな」

「すみません...... まさか、こんなことになってるなんて」

 リリンはあやまった。

「リリンが悪い訳じゃないわ。 だけどどうする? あまりここにいるのは得策じゃないようよ」

「うーむ、ただ人材は欲しいな。 つまりドルクスとかいうやつを倒せばここを解放できるってことだ」

「でも、百人も部下がいるんですよ。 それに凄腕の剣士も......」

 自信なさげにリリンは答える。

「サンドワームを倒せたんだ。 方法はあるはず、まあアンナがあの光の剣で切り裂けば一瞬でおわるけど」

「いやよ! 殺人なんて! 使うのも怖いのに!」  

 アンナは本気で嫌がる。

「それなら、鉱山の方だな。 捕らえられたものたちを解放すれば戦力になる」

 山の方を見る。

「そうね。 解放できれば...... ただ百人の部下はどうするの?」

「それはアンナにちょっと相談がある」

「斬るのはいやよ」

 そういやな顔をしていうアンナに話をした。


「はぁ、疲れた。 あそこか......」

 山を進み鉱山の前まできた。 二十人ほどが武器をもって監視しているなか、屈強な男たちがトロッコに鉱物をのせて洞窟の中からでてきていた。

「ですね。 でもかなりの人数ですね。 二人で倒すのは無理そうです」

「ふむ、仕方ない。 二人で魔法を覚えるか」

 俺は取引《トレード》で魔法スクロールをだした。

「ほら、リリンこれを覚えろ」 

「こんな簡単にレア魔法のスクロールを出すなんて......」

「でもあまり強力なやつじゃない。 魔力を消費しすぎると必要なときに使えなくなるからな。 残量を考えて消費が少ない魔法だ。 仲間に前もって効果と魔力消費を予測してもらってる」

 俺たちは魔法を覚える。

「よし、いくぞ!」

「はい!」

 俺は一人鉱山に降りていく。

「おい! 何だお前ら!」

「いやぁ、ちょっと商人なんですけど迷子になっちゃって、帰り道教えてくれますぅ」

「はぁ? 怪しいな! おい!!」

 全員が俺を囲む。

「やっぱ無理か、しゃあない」

 ーー甘い吐息で、みなを夢へと誘えーー  

「スリーピングブレス」

「なんだこの香り...... ふぁ」

「な、眠い......」

 その場で眠りだした。

「うっ...... 俺も......」

 ゆっくりと俺は意識を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...