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第十七話

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 少女の名前はリリンといい、外でアイテムを見せるといったので、町外れの人のいない場所までついてきた。

「作ったアイテムって、あなた魔法使い? それとも職人?」

 アンナはリリンに聞いた。

「そのどちらでもなく、どちらでもあるですね。 私は錬金術師です」

「錬金術師ってあの......」 

「ええ、魔法のアイテムを制作します!」

 リリンは胸を張る。 俺とアンナは顔を見合わせる。

「その錬金術師がなんでサンドワームを倒したいんだ?」

「私の作ったものの威力を見せつけ、錬金術師の存在を世の中に認めさせるんです!」

 そうリリンは鼻息を荒くして答えた。

「存在を認めさせる?」

「錬金術師は異端の魔法使いなの。 どちらかといえば好まれてはいないのよ」

 アンナがそういうと、悲しそうにリリンがうなづく。

「父さんは錬金術師だった。 誰もそのすごさを理解してくれない...... 私は必ずそのすごさを世に証明してみせるんです!」

 悔しそうな顔をしてリリンは拳をにぎる。

「それで【わたしのかんがえたさいきょうのあいてむ】を見せてくれるのか」

「バカにしてますね! ええ!まってください! 見せますよ! 見せてやりますよ!」

 怒りながら、大きな鞄を地面にドサリと置くと、ごそごそとあさりいくつかの道具をおいた。

「剣、槍、弓、盾、笛、瓶の薬か」

「よくはいるわね......」

「どうです! すごいものでしょう!」

(うーん、見た目は正直パッとしないな。 とりあえず調べてみるか)

「マジックメジャーメント」

(えーと、魔力値1、3、15、8、1000、2......)

「笛以外は使えないな......」

「な、な、なんで!!!」

「魔力がほとんど含まれてないんだよ。 ということは効果もその程度ってことだ」

「そ、それは...... 私は魔力を帯びた素材があまり持ってなかったから...... じゃあこれ! これをみてください!」

 鞄からひとつの短刀をとりだした。

「ん? これ!! 操魔の短刀《マジックナイフ》魔力値10000!!」

「嘘10000!!?」

「これはすごいぞ! これを作れるのか!」

「い、いえ、それは父さんの残したものです...... でも錬金術はすごいでしょ!」

「確かにな。 これくれ!!」

「え、ダメですよ! それしか残ってないんだから!」

「いま、すぐ返すから! これ10万ゴールド!」

 リリンに金貨の入った袋を渡した。

「えっ!? すごいお金! すぐ...... 本当にすぐですよ!!」

 俺は短刀を手に取ると取引《トレード》をつかう。

「取引《トレード》操魔の短刀《マジックナイフ》!」

 俺の手に短刀が現れた。

「それでこれどう使うんだ?」

「えええええ!!?」

 リリンは口を開いて驚いている。

「な、なんで父さんの短刀がもうひとつ!?」

「コウミ...... 形見を二つにするのはちょっと......」

 アンナは眉をひそめる。

「えっ? 道具だから使った方が供養になるんじゃないの?」

「父さんは死んでません!」

「あっ! 死んでなかったのか!」

「ごめんなさい! てっきり亡くなっているものだと......」

「いいえ、アイテムをつくるため旅をしているだけです! 今回のも素材なるものを探してるんじゃないかって、だから素材として一級品のサンドワームを倒しに行けば、素材を手に入れにくるかもって......」

「それでサンドワーム討伐なのか」

「は、はい...... それもありました」

「それで、この短刀どうつかうんだ?」

「えーと、魔力を加えると」

 リリンが短刀をもち目をつぶる。 すると短刀から小さな光の刃がでる。
 
「おお! なんか光の刃がでた!」

「ええ、魔力で放出する刃となるんです」

「ほう、俺もやってみるか、ふん!!」

 かなり大きな刃ができる。

「ええ!? そんな大きな刃が! これは魔力が高いほど大きなものになるんです!」

「俺は今50000はあるからな。 アンナも試してみてくれ。 確か20000だっただろ」
 
「わかったわ......」

 アンナが短刀を握ると俺の倍ぐらいの光の刃がでた。

「うお!!?」

「ええ!!?」 

「えっ?」
 
「すごい魔力だぞ! マジックメジャーメント! 魔力10万もある!」

「あれかな。 クリュエたちと魔力を操作する練習をしたからかな。 でも押さえられないわ。 止めるしかない」

「まあいい、それアンナが使ってくれ」

「え、ええ!? これをわたしが......」

 アンナは困惑している。

(これかなり有用だな。 ふむ)

「リリン、この短刀を複製するの許可してくれたら、サンドワームと戦ってもいいぞ」

「えっ!? ええ、まあ構いませんけど」

 アンナと顔を見合わせた。

「よし! ならやろう!」

「そうね」

「あ、ありがとうございます!」

 こうして俺たちはリリンと共にサンドワーム討伐へと向かった。

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