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太陽、料理される

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「はい スライムの中華風餡掛けスープ」


 僕が料理を披露すると、皆から歓声が上がったが、来名さんだけは、手にもった皿をみてしかめっ面をしていた。


 要さんはためらわずに一口食べ、


「おいしー! これフカヒレみたいだー!!」

 
 と子供のようにはしゃぎ、太陽も

 
「これうめえな! ほんとフカヒレみたいだぜ、フカヒレ食ったことないけどなー」


 美味しそうに口一杯に頬張った。


 二人を横目にみてた来名さんは、おそるおそる目をつぶって、一口食べると目を見開き、


「なにこの芳醇な香りと、極上の旨味! そして、そのハーモニーが奏でる至高の味わい!」 


 そんなよくわからない食リポをして、


「普......やるわね、これで役立たずは、ダンゴムシだけか」と言った。


 (太陽の虫ランクが相対的に下がってしまった)


 そう僕が思っていると、


「なあなあ、要と来名はさ、何で特進から普通クラスに来たんだ?
 ああ、とおるはいい、弱いから落とされたんだろ」


 太陽がおもむろに聞いた。

 
 失礼なと思ったが事実だから黙っていた、確かに僕も気になってはいたことだ。
 二人とも特進クラスでは実力はトップに近かったし、特進クラスの方が多くの利点がある。
 授業料免除や大学進学への推薦、将来の就職にも有利だし、それに最大の利点は探索範囲が拡がることだろう。

 
 それは遺跡の探索には国が定めた『探索法』があるからだ。


 探索法では、探索が許可される階層は、高校生は、一年で1階から最大5階まで、二年で5階から最大10階、三年で10階から20階、
 大学生で、20階から50階、プロ資格者で最大99階となっているが、特進だと大学生と同じ探索範囲となっている。


 深い階層ほど未発見の貴重な『遺物』があり、発見者は多くの富と名声が得られることから、学生は特進クラスを目指すのが当たり前だった。


(プロになるなら、有利なはずなのになぜだろう)  
  
 
 そう思い、二人をじっとみていると、


「私は、自由がなかったからかなあ」  

 
 上を向きながら要さんは言った。


「自由? 」

 
 そう太陽が聞くと、


「そんなことも知らないのねシロアリ、何で特進クラスなんてあるかってこと、公益の学校とはいえビジネスなの、遺物獲得は学校側に巨額の利益をもたらす、だから、優秀な人間を特進クラスにいれ、効率的に遺跡探索を行わせるの、プライベートも管理され自由なんか無いのよ、その分利点もあるけどね」

 
 太陽の虫クラスを下げながら来名さんは言うと、


「かごの鳥は哀しいから」
 
 
 要さんは目を伏せながら答えた。


「まあな、せっかく探索するなら自由な方がいいよな、
 じゃあ、来名も自由になりたくて普通クラスにきたのか」

「私は......あの先生が、なんか気にくわなかっだけよ」

「あの先生ってあいつか、今日の試験考えた、
 プロのいけすかねえ特進の教師、名前なんだっけ?」


 その話を聞いて、頬がこけ冷たい目をした不遜な態度のあの男の顔を思い出した。
 僕を特進クラスから普通クラスに落とした人物、  

 
 鑑直実《かがみ なおざね》


 1年前、僕は職員室の鑑に呼び出された。


「普通クラスに行けって急にそんなこと言われても!」

「当然だろう、貴様はここでさしたる成果も出せずにいるのだからな」


 鑑は、こちらをみることもなく机で作業を続けながら淡々と言った。


「でも、授業料の免除がないと学校をやめないと......」

 
 僕がそう言うと、フンと鼻をならし


「知らんな、学校も私も使えないやつを育てるほど暇じゃない、
人間には絶対的な差があるし、むしろ隔てるべきなのだ、必要な者とそうでない者をな」
 

 それだけ言うと、一度もこちらを見ることもなく席を立った。

 
 その後、僕はなんとか奨学金を得て、退学は免れたのだった。


「そうよ、鑑、わたしあいつが嫌いなのよ、プロかは知らないけど、尊大で傲慢な感じがいやなの。だから出ただけ」

「ほう、なかなかやるな、来名誉めてつかわそう、小さな胸に反して大きな決断をするやつだ」
  
 
 と言った瞬間、炎が太陽を包む。


「やめろ来名! 何回! オレをこんがりさせんだ! 」
  

 そう太陽が叫んだ。

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