芥川繭子という理由

新開 水留

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2016年、6月25日。
迷った挙句、私は失態を犯した翌回のスタジオ訪問時の差し入れに「肉まん」を選んだ。もちろん皮肉などではなく、これしか思いつかなかったのだ。彼らならきっと笑ってくれると信じていたが、実際手渡すまでは心臓が飛び出る思いだった。伊澄は一瞬眉間に皺を寄せた後、「分かってんなぁ、あんた」と言ってくれた。私の凝り固まった全身の力が一気に抜けた事は言うまでもない。
先日晒した醜態と掛けた迷惑を思うと、とても肉まんの差し入れで拭い切れないのは百も承知で、それでも3袋持参した甲斐があったというものだ。



練習スタジオにて。
池脇(R)、伊澄(S)、神波(T)、繭子(M)、伊藤(O)。


-- 先日は本当にご迷惑をおかけしました。まさかこうやって全員同時に時間を作っていただける機会がこんなに早くめぐって来るとは思いもよりませんでした。感謝の気持ちをどう伝えて良いやらわかりません。
S「大袈裟な事言ってるぞ(笑)」
T「俺は連続になるからどうかなあとも思ったんだけど、せっかくだしね」
-- ありがとうございます。嬉しいです。
R「2週間くらいか?今回結構間あいてねえか?」
-- ちょっと体調崩しまして、実はあの後寝込んだんですよ。病気移しちゃ行けないってんでもう一週間、大事を取って間隔をあけました。
R「風邪? この蒸し暑い時期に」
-- 季節の変わり目というやつでしょうか。
M「いや、スタジオ内結構寒いですよ?練習中激暑になるから朝からガンガンに冷やしてますけど、終わって汗引いた途端震えちゃってもう体が意味分かんない事になりますもん」
T「そうなんだ、言えばいいのに」
-- そうだよ、気をつけなよ?
M「え、言えない(笑)」
T「は?」
M「どうしよう、勢いで言っちゃった(笑)」
S「なんだ?」
(一同、笑)
R「そもそもお前、風邪引かねえじゃねえか」
M「あ、まあ、はい。…なんかトゲあるなー」
-- あはは。とにかく、まずはお詫びをと思いまして。
R「醜態晒したのはこっちも同じだからな」
S「痛い痛い、トゲが痛い」
-- (笑)。でもこの時期肉まん売ってるお店がないんでちょっと焦りましたよ。いつもどうやってあれだけの量集めてたんだろうって。
S「誠が?まあ、コンビニとかじゃないからな」
-- そうなんですか!やっぱそうかー、どこ行っても今の時期あるわけないじゃんって顔されて参りましたよ。結局業務スーパーに眠ってる在庫引っ張り出して、解凍までしてもらっちゃいました。
R「どんだけ肉まん好きなんだよこの女って(思われたな)」
-- それは別に構わないです(笑)。ただあの日の後は、ちょっと記憶にないんですけど、どういう着地の仕方をしたんでしょうか?
S「まだその話すんの?もう良いって」
-- では、やめておきましょう。
M「記憶ないの?なんで?お酒弱いの?」
-- 好きなんだけど、弱いんです。私、吐いてませんよね?
S「ゲロは吐いてないよ。色んな液体出してたけど」
M「もー!言い方!」
-- ふわー。いやいや、あの時の映像は後日見返したんです。でもカメラが少し遠かったのと、聞き取り辛い部分もあって何が何やら。直視出来ないシーンもありましたし(笑)。
T「俺それ見たいと思ってたんだよ、後で見せて」
-- 分かりました。一応今日持ってきてます。…え? どういう意味ですか?
T「何が。…別にあんたの醜態を見たいんじゃないよ」
-- そうですよね、びっくりしました。
M「でもちょっと嬉しいな。もう肉まん食べれないと思ってたし。自分で買えよって話なんだけど、なんか、買えないじゃん、やっぱりこうやって無理にでも持ってきてもらわないと。もう肉まんイコール誠さんだし」
-- 繭子はもしかして、なんで誠さんが差し入れで肉まん持ってくるか知ってるの?翔太郎さん忘れたって言ってたような気がするんだけど。
M「翔太郎さんが忘れるなんてありえないよ」
-- あー、確かに。
M「なんで言わないんですか?」
S「言わなかったっけ?」
-- お伺いしましたっけ。
M「誠さんが、初めて翔太郎さんに買ってもらった食べ物だから。きゃっ」
(そう言って可愛く脇を締める繭子の顔には、少しだけ寂しさが浮かんでいる)
S「(呆れて頭を振る)」
-- そうだったんですね。分かりました。では、召し上がっていただいた所で、仕切り直します。私、意外だったのがこんな初歩的な質問してなかったんだなーって気づいた事があって。なんだかタイミング的に今更感強いですが、皆さんが今注目されているバンドを教えて頂きたいのですが、どうでしょうか。日本でも、世界でも。
R「んー、確かに今更だな(笑)」
S「メタルの?」
-- 他にもよく好んで聞くバンドなどがあれば教えて頂きたいです。以前うちに掲載した号でも聞いてる質問なんですが、それがもう3年前なんです。その時は全員に『特になし』と一刀両断されましたので、今はどうかなと。結構若手のバンドも増えて来たと感じます。
T「俺はメタル聞かないしねえ」
-- そのようですね。最初聞いた時は驚きましたが、今でもやはりそうですか。
T「家ではって言う意味だけどね。仕事上有名所が新譜出したらそりゃあチェックはするけど、好き好んで自分の時間で聞くことはないね」
S「うん」
T「お前は結構家で色々聞いてるイメージあるけど?」
S「俺は大成と逆で新譜を聞かない。聞くにしてもお前らの感想聞いた後でなぞる程度かな。結局、誰聞いても、俺ならこうする、こうやる、っていう変な聞き方になるし」
T「あー(頷く)」
S「それも車移動の時くらいかな。家で流してるのは昔のが多いな」
-- それは昔のアルバムという意味ですか? 今はもう活動されていない、昔のミュージシャン、バンドという意味ですか?
S「メタルも聞く事はあるけど、最近のはまあ、ないかなあ。基本的には畑違いの音源が多いな。それもがっつり聞き込むんじゃなくて、気分によってただ流してるだけの事が多い」
-- 家に帰ると何であれ「音」を聞きたくないっていう人もたまにいますが、そうではない?
S「そういう時もあるよ」
-- なるほど、ありがとうございます。
R「庄内がわりとこまめに情報くれんだけどな、飲んでると。一応Billionの批評なんかも読んでんだけどさ、結局気にして見てんのはどのバンドがどんなアルバムを出したかって事よりも、聞いてる連中はどこを評価してどう感じてんのかなって、そこにしか興味がねえな」
-- 意外ですね。逆にそこは気にされていないものかと。
R「んーだから、上手い言葉が出て来ねえけど、そこを聞いて喜んでんだ、そこが好きなポイントなんだって、そっちのリアクションを楽しんでんだよ」
-- へえー、面白いです。
R「けど実際そのバンドの音源は聞かねえけどな(笑)。知ってる顔の連中が今どこに興味を示して飛びついてんのか、それ読んでニヤニヤしてるだけ。だから昔ほど他のバンドを気にしなくなったのもあるよ。最近ライブ自体見に行ってねえし」
M「また皆で行きたいですねー!」
S「一時期よく行ってたもんな」
-- 4人でですか?
S「4人でっていうか、現地集合なんだけど」
R「それもあれだよ、顔合さない時もあったよな」
S「あったあった」
-- どういったバンドですか?
M「パンクバンド。インディーズ系だね。近い所だと主に都内でやってる『FUNGUS』とかしょっちゅう新宿に見に行った」
S「都内でやってるくせに関西弁のな。元トレイシーだ、確か」
R「そうそう。あれ。いっつもベロベロの状態で途中から参加して、『EVEN EAZY ACTION』だけ聞いて吐きそうなぐらい泣かされて帰って来るっていう」
S「それお前の話だろ!」
T「あはは!」
R「まあな(笑)、たまにこっちに来れば『シーン』もよく見に行ったな」
S「『世間知らず』ん時だけ4人で全力oiコールして、ヒガッチョン喜ばせて帰るっていうね」
-- おっとっとっと?
M「『THE SCENE』っていう京都のバンドがお気に入りなの。こっちのFUNGUSと昔から仲いいみたいでよく同じイベントに出てるから知り会いになって。そこのボーカルの東さんの事が皆好きでさあ。ってか全力oiコールは3人ですからね、私やってないですよ」
R「そうだっけ?」
M「たまにです。もう最前列とかでやるから周りのファンの子達がびっくりしてるもん。うわ、なんかヤバイ奴ら来たって。私そういう時ちょっと離れて見てましたから」
-- バレたりしないんですか?
M「気がつく人達もいるかな。対バンの人達にはたまに後で声掛けられたり。ただほとんど誰も近寄って来ないよ、めっちゃくちゃタチ悪いもん」
S「なんだそれ」
M「酔っ払った3人になんか近づける訳ないじゃないですかー!」
-- そうなんですか。
M「そうだよー!竜二さんは特にガッシリしてる上に酔うと動きが無軌道で大きいからそれだけで近寄るの怖いもん。皆威圧感あるし、ヤバイ人オーラも半端じゃないよ。私ですらちょっと嫌だもん。なんかね、誰も目を合わせたがらないタイプ」
-- それは正直嫌ですね。
S「ボロクソに言われてるぞ」
M「翔太郎さんもですよー!」
-- でも身内の繭子からしたらちょっと頼もしくもない? そういう色んな人種が入り乱れる場で、アンタッチャブルな空気出してる人達ってちょっと憧れるな、怖いけど。こういう仕事してると何度かお目にかかる事があるけれど、もれなくそういう異質なオーラの男の人って何故だか格好良く見える。
M「あ、それはちょっと分かるかも。なんだかんだ、目立ってる3人見るの好きかもしれないね。バイオレンスな空気だけは心底嫌だけど(笑)」
-- それは私もそう(笑)。だけど気づいてないだけできっと繭子も目立ってると思うよ。
S「いやいや、そもそも一番声掛けられるのはやっぱり繭子だし。次点で竜二か」
T「割と社交性のある2人ね」
S「俺らそこらへん壊滅的だよな」
T「(黙ってうなずく)」
M「ただでもやっぱり最近は、実際にそこまで乱暴な事しなくなったから、うん。昔は本当辛かったぁ、立場無くて。なんでこの話すると翔太郎さん笑うんですか(笑)。特にパンクバンドのイベントって、ファンもおかしいのいるけど、演者も尖ってる人多いから。何度も喧嘩に巻き込まれたりして。そこで初めて他人の振りする事を覚えたの」
S「あははは!」
M「だからぁ」
-- 打ち上げで喧嘩になって警察呼ぶパターン多いですよね。割とメタル畑の人達って、そういう意味では普段大人しかったりするんだけど、パンク系はやばいの多いんだよね。
M「何なんだろうね」
-- やっぱり昔は流血沙汰もあったり。
M「うちはさせる側なんだけどね」
-- あああ、ちょっと。それはちょっと、掲載出来ないです。
(一同、笑)
M「でも時効でしょ?喧嘩はやっぱり両成敗だよね」
-- 繭子もそこそこ酷いな。
S「だから言ってるだろこいつヤバイって。あんまり調子乗ってベラベラ喋らせるとロクな事になんないぞ」
M「酷ぉ!」
-- それで笑ってらしたんですね(笑)。
R「でも繭子が喧嘩してる所、俺一回見た事あるぞ?」
M「ええっ?」
-- え、グーですか?
R「いや、殴るとかじゃなくて胸倉掴んで叫んでた。何言ってるかまでは聞こえなかったんだけど。大分前だけどな、あれなんだったんだろ」
M「覚えてないなー、酔ってたのかなー」
-- そういう事にしておきましょうか(笑)。ちょっと脱線しましたけど、やはり皆さんメタルバンドについてはあまり聞かない、という事で。
R「若いのは得に聞かねえな。四天王(メタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックス)とか、その年代の新譜ばっかりかな。俺も家ではそもそも音楽聞かねえし」
S「若いのは俺も全く聞かない」
T「うん、名前も知らないの多いよな」
-- ですがうちの編集部内でも度々議論になるのが、ドーンハンマーの楽曲陣は、アルバム内における『オールドスクール』と『ニュースクール』あるいは『現代味』のバランスがとにかく優れていると言われています。
R「…はい。そうです」
(一同、爆笑)
-- いえ、ええ?(笑)
R「なんだって?」
-- ええ、昔ながらを彷彿とさせるパワープレイやクサメロタイプと、現代風なアレンジがバランス良く配合された楽曲がアルバムを彩っている、という評価です。
S「それが?」
-- 流行に敏感とまではいかなくても、ある程度昨今の流れを気にしていないと、もの凄く古臭い曲しか作れないんじゃないかと思うんです。実際はそんな事になっていないので、どうなってるんだ?と。
S「古臭いんだよ思うよ?」
T「うん」
S「ただ簡単に言えば音の数でごかましてたりしてな。年が年だから好きな曲の雰囲気ってのも癖があるだろ。そこをブラッシュアップというか、まあごまかしかな。それはあるよ」
T「ビートルズのさ、なんか名曲を引っ張って来てさ、俺達なりにやればそこはきっとメタルに聞こえるだろ?」
-- そうでしょうね。
T「そこを更にドーンハンマー流というか、10倍速、音数3倍とかでやれば原曲が分からないぐらいの変化も付けられる。そこまで行くと新しい古いじゃなくて、凄いか凄いくないかしか残ってないんだよきっと」
-- なるほど。分かりやすいです(笑)。
S「それをオリジナルでやってんだよな」
-- 思いついて作曲したものが少々古臭かろうが、思い切ってバンドでプレイすれば他をここまで圧倒出来る、と。
S「(頷く)」
T「ただ俺とここ(伊澄)だけでも曲の雰囲気は違ってくるから、アルバム内でのバランスってのは、そこだろうね」
-- なるほど、納得です。そうなってくると確かに、あえて新しいバンドに興味を示さずとも我流で勝負できる理由が分かりますね。繭子は、どうかな。繭子もやっぱりよそのバンドは聞かない?
M「えー、そうだなー。うーん」
-- いや、ないならないで良いんですけどね。
M「うん、知ってるバンドとかCD持ってるバンドとかは一杯いるんだけど、実際今も聞いてるかって言われると、確かに聞いてないなと思って。何でなんだろう」
-- 珍しくはないですよ。やっぱりプレイする側、聞かれる側という意識もあるのではないですか。
M「特にそういう意識はないつもりなんだけどな。昔から聞いてる曲をふと思い出して繰り返し流すみたいな聞き方はするけど」
-- 皆さんが昔から好きな音楽というか、よく行くライブはメタルよりロックとかパンクバンドが多いんですか。
R「もともとバンド始めた当初はパンクだったしね。でも、俺らはパンクじゃねえわってすぐに気付いた。そこからどんどん音を激しくして行って。ただメッセージソング歌えないし、やっぱり音もガッチリしたのが好きなんだけど、根っこにある好きな音楽性とかは割と広めなのかもな」
-- 世代的に言うとピストルズとかラモーンズはちょっと上ですか。クラッシュとか。
R「うん、全然興味ない。パンクに関して言えば海外のバンドは全く聞かねえな」
-- 何故ですか?
R「単純に音が脆い」
S「言うなあ、こいつ(笑)」
-- ドキドキしてきました。
R「違うか?」
S「違わないけど」
R「だろ。弱いし、ピッチもおかしいの多い。そういうルーズな音を良いって思えないんだよ。だからこういう音楽やってるんだと思う。もちろんメタルでもあんまり下手なバンドは聞かないし」
M「(頷く)」
-- ハードコアパンクなども聞かれませんか?
R「例えばどれの事?」
-- 私もそこまで詳しくはありませんが、「Discharge」「Sick Of It All」「Misfits」などでしょうか。
R「ああ」
S「名前はもちろん知ってるけど、聞いてるか?って言われたら聞いてない」
R「本人らがどう思ってるか知らねえけど、今言ったバンドだって『演奏力に定評あり』とか絶対言われたがってねえよな?」
S「(爆笑)」
T「ふふ、ちょっと、きついな」
R「そうかあ?」
-- 皆さんにしてみれば、やはり名の知れた彼らであっても、音は脆いと。
R「多分アルバムを聞いて楽しむ分には問題ねえんだ、きっと」
S「(頷く)」
R「作品としての質っていうより好みだしな。もう俺はテメエの好きな音ってのを分かってるし、極端な事言えばその音以外は必要ねえんだよ。ただ他のバンドにはそいつらなりのポリシーだったり好き嫌いがあって当たり前だと思うしよ。そこにはきっと、おって思うようなリフだったり演奏だったりはあるんだろうし、どのバンドも名前を売ってる以上は何かしらの武器があって、魅力は絶対あると思う。ただ今はもう、普通にファンとして聞く目線にはねえかな。俺なら出さねえような音だから」
T「だからさっき時枝さんが言った、プレイする側だっていう発想は間違いじゃないと思うよ、意識して線引きしてるわけじゃないけど」
S「うん、うん」
M「へー(意外そうな表情)」
T「俺と竜二は特にその傾向が強いと思う」
S「クロウバー時代からちょっともうそうだったよな」
T「回転を上げられなかっただけで音の好みは変わってないからね」
-- なるほど。そんな皆さんに影響を与えたのやはり、スラッシュ四天王ですか。
R「どうなんだろう。当時からもちろん好きは好きだし、コピーしまくったっていう意味ではそうなんだろうけど、音とかメロディラインの影響はそんなに真似したい程ではなかったな。四天王で言えば最近の方が好きなくらい、昔の音源よりはな」
-- ドーンハンマー的にはやはり、SLAYER推しが強いようですね。
R「そーだなぁ。ウチにはやっぱり翔太郎がいるから、特にリフで張り合える強みってのは武器だと思うんだ。しかもメガデスもメタリカもワンマンバンドだけど、うちの場合翔太郎とプラスαの部分が強力だから、正直音負けするとは全然思ってない。でもやっぱりスレイヤー。ジェフとケリーのタッグは凄いし、デイブの圧倒的パワーというかモンスターエンジン積んでる感は圧倒される。まあ、トムも頑張ってるよ、あの歳であの歌かよって思うと正直焦るよな」
-- よく分かります。似ていますよね、あなた方とスレイヤーは。
R「そうかもしれねえな」
-- 今となっては四天王唯一、現役でスラッシュメタルを貫き通している姿勢も、なんだか親近感が沸きますね。
S「あれはでも可哀想な気もするけどな。メタリカもアンスラも、当時やりたい音楽があれだっただけで、別に一生スラッシュでやっていきますなんて宣言してないと思うんだよ。特にメタリカなんて売れちゃったもんだから、アルバムごとに作風変えただけであれこれ難癖付けられてるけど、どう考えてもその時一番新しいアルバムが最高傑作だと思うんだよ、俺に言わせりゃ」
T「メタリカなんかは特にそうだね。速い遅いだけを基準にするならメタリカなんか聴かなきゃいいだけで、彼らは彼らにしか出来ない仕事を毎回やってるよ」
-- 当時大分叩かれまくって今でも賛否ありますが、所謂遅く重くなった時代のアルバムでも、評価するに値すると。
S「ファン目線と俺達じゃ考え方が違うしな。彼らが長い時間を掛けてどういう仕事をしたか、聞けば分かるから。単純に、速いの好き!遅いの嫌い!っていうだけで価値が決まるバンドじゃないんだよ、メタリカクラスになると」
-- なるほど。皆さんが言うと重みが違いますね。うちの編集陣にも聞かせたい言葉です。
S「マインド的には似てると思うよ、スレイヤーもメタリカも。格好良い曲作りたいって思った時に、速くなるか遅く重くなるかの違いがあるだけで、その楽曲自体のクオリティは常に最新アルバムが一番高いと思うから。全然枯れてないよな」
-- 特にあちらのバンドは音楽プロデューサーの名前も大きく紹介されますが、バンドにそういう人間は必要だと思いますか?
(意外なことに、全員がうんうんと何度も首を縦に振る)
-- 失礼ながらドーンハンマーは唯我独尊なイメージがあるので、正直意外です。
S「それは、あれだわ」
R「うちで言うと大成がやってる仕事だからな。必要ないわけねえよ」
S「そう」
-- なるほど、そういう意味ですか。バンド内でそれを賄えるドーンハンマーのようなケースは良いのですが、外部からわざわざ引っ張って来て雇う意味は、どのような所に感じられますか?
S「客観的にそのバンド、そのアルバムの特徴と長所を把握出来て、さらに高いレベルへ引っ張れるかどうかだから、外部かどうかはあんまし関係ないけどな。ボブ・ロックとかリック・ルービンみない人の話してんだろ? 実際は彼らもプレイヤーだからな。理屈を分かってる第3者が色々提案や注意を入れて来るのはありがたい話だと思うよ。聞く耳持つかどうかは別として、金払う価値ならあると思うよ」
-- なるほど。物凄くよく分かりました。ちなみにあなた方は聞く耳を持つ方ですか?
(全員が首を横に振る)
-- あははは、やっぱり!
R「違う違う、だって大成いるのになんで知らない奴の言う事聞くんだよって話で」
-- でも翔太郎さん理論で言うと、そこは大成さんでなくとも良いわけで。
R「あー? あ、そうなんのか」
S「別にプロデューサーの指示通りにやらなきゃいけないなんて事はないだろ。もちろん衝突して仕事打ち切るバンドも多いし、方向性や性格が合わないなんてザラじゃない。そういうの、もう分かってるし、自分達の目指す音とか世界観を言わなくても理解できる奴が身内にいるのに、それ以上の何を求めるんだよ」
-- 新しい世界が見えたりするかもしれません。
S「そんなの大前提だろ。例えば現状どん詰まりになって何か変えたいと思った時に外部に頼る意味なんて今の俺達にはないし、頼るならPじゃなくて演者で助っ人頼むよ、URGAさんみたいに。一歩引いた目線で色んな引き出しを開けてくれるのがプロデューサーなんだろけど、それをもう、こいつは10年以上やって来てるから。要は、新しい世界?とやらも大成が引き出して来たおかげでこんだけの枚数アルバム作れてるわけだから」
T「待て待て待て、重圧が凄いぞお前」
M「うちのPを舐めんなよー!」
T「ここぞとばかりに言うな、ずっと黙ってたくせに」
M「だって難しい話分からないですもん」
-- (笑)、確かにもの凄くプレッシャーのあるポジションなわけですが、大成さんとしてはプレイヤーとしての顔と、プロデューサーとしての顔と、どちらが楽しいですか。
T「どっちも俺だしどっちも楽しいよ。選ぶなら演る側だけどね。ただ選べないよね。ベース弾きながら、ここはああやった方が良いなって考えちゃうし、色々音を組み立てながらも、自分でプレイしてみないと気が済まないしね」
-- ベース以外の部分にも気が行ってしまうという事ですか。
T「うん。多分翔太郎なら同じ事出来ると思うんだけど」
S「いやいや、嫌だ、絶対どっちかのレベルが落ちる」
R「(笑)」
T「演奏しながらその曲の一番いい場面っていうのをどこに持ってくるかっていうのが、世界観を作るのに一番手っ取り早いと俺は思ってて。基本やっぱりギターバンドだから、翔太郎のリフか、竜二の声、もしくはその両方でクライマックスとかテンションのピークを作りたい。そう考えた時に、まあ竜二には全力で歌ってもらう事しかお願いしようがないわけで、あとはリハでプレイしながら翔太郎と一緒にキメル部分をどこがいいか探してるうちに、曲の全体像が見えてくるという感じかな。無意識にやってる事が多いけどね」
-- うわ、なんか鳥肌が走って来ました、今。無意識なんですね、職人だー(笑)。
S「凄くない?この話。俺初めて聞いた時、こいつちょっとウソついてんじゃねえかなって思ったもん。今の話で伝わったかどうか分からないけど、こいつ絶対音が『見えてる』んだよな」
-- 私もそう感じました。頭の中で音の像が見えていないと言えない事ですよ。生粋のアレンジャーなんですよね。
S「そうそう」
T「見えてるっていうかイメージしてるだけだよ。竜二の音、翔太郎の音、繭子の音、俺の音、それを一本ずつの線と捉えてさ、お互いの距離感や音の太さ、つまり線の太さを微妙に変えながら、立体的な位置を組み替えて聞こえ方やボリュームを上げ下げしていく作業をやってるだけであって」
S「はい、もうついていけない」
R「あははは!こいつ、何言ってんの?」
T「何だよ(笑)」
M「あの話に似てない? 翔太郎さんと私の音の隙間は全部俺が埋めるっていう」
-- うん。プロデュースの話とはちょっと違うけど、音が見えているっていう点では共通して凄い話だね。
T「いや、だから重圧が」
S「結局大成が差し示す方向に進んでいって、それで駄目なら別に違うやり方で作り直せばいいだけの事だしな。誰も同じ事出来ないんだし。俺が曲書いて、竜二が歌詞載せて、さてこういう曲が出来ましたと。そこからだもん、大成の仕事は。一回びっくりしたのが、あれどの曲だっけな、『7.2』の時に俺が書いた譜面見せた時、お前なんつった?」
T「覚えてないよ、お前じゃないんだから(笑)」
-- なんと仰ったんですか?
S「『いいね。これアルバムの最後に持ってこようか』って言ったの。待って、まだ譜面書いただけだから待って、お前何が見えてんの?って」
T「あははは、あったあった。いやでもそんなの誰でも言えるって。譜面見たら翔太郎の少なくともメインリフぐらいは脳内で再生出来るから」
R「出来ねえよ!」
M「出来ないですよ!」
-- ちょっと神がかったエピソードですね。結局ラストナンバーになったんですか?
S「だと思うよ、そこらへん俺口出ししないし」
-- ということは、『Luny's Of Thoruns』ですね。名曲ですけど、ちょっと想像つかないですね、ギターの譜面だけ見てもうラストナンバーに相応しい曲であることが分かったなんて。盛ってませんか?
T「あははは!盛ってるよなぁ?」
S「お前が言うな」
-- 凄いなぁ。ホントこういうエピソードには事欠かないですね。偉大なプロデューサーの逸話が聞けて良かったです。
R「あ、面白い話聞く?」
-- いきなりですね!ありがとうございます!
R「最近テレビ見ててよ、なんかお笑い芸人がやたら大声出してるわけ。どういうネタなのかは分かんねえんだけど、取り敢えずデカイ声だして笑い取ってるわけ。それを見てて思うわけだよ。こんなんで成立すんのかよと。でもじゃあ俺こいつより声出るかなーって思ってテレビの前で叫んだわけ、全力で。したら普通に通報されて警察来たんだよ」
爆発的な笑い声。
身悶えと地団駄と拍手。
繭子が立ち上がってお腹を押さえ、やがてしゃがみ込む。
伊澄も神波も突っ込みを入れようにも笑いが込み上げて言葉にならない。
-- 面白い話ってそういう意味の面白いですか、とっておきのネタという意味だと思って完全に裏をかかれました。紛れもなく面白い話ではありましたけども。
S「くっそー、腹立つなあ。何を張り合ってんだお前は」
T「黙ってるから変だなとは思ったんだよ、やたら俺ん所話来るから絶対何か企んでると思ったけど」
M「あー。あー。あははは駄目だー」
-- 結局どうなったんですか? それ苦情ですよね。
R「謝ったんだけどよ、苦情っていうか、殺されてんじゃねえかって心配になって通報されたみたい」
追い打ち。
回復しかけていた繭子が完全に膝をついて崩れた。
伊澄が池脇の腕を叩く。
M「お腹痛いよー」
-- 断末魔だ。悲鳴だと思われたわけですね。うふふ、想像するとやばいですね。
笑いに震える腹筋が痛くなり始めたその時、伊藤織江が現れた。
伊澄の名前を呼んでスタジオの外へ手招きする。
伊澄は黙って立ち上がり、スタジオの外へ出て行く。
R「ウソウソ、本当はちゃんと面白い話あるんだよ実は」
-- 何ですか?
R「PV撮んだよ、再来週くらいから。話は前々から決まってたんだけど、色々向こうの監督さんとか演出家の方とスケジュール合わなくて、今になってようやく」
-- おおおお! というかそれはもっと早く言ってくださいよ!
R「知ってると思うけど、これが初なんだよPV用意すんの」
-- これもずっと不思議だったんですよね。
R「日本だとまあ、何で?くらいで済む話なんだけど、最近向こうだと『無い』のは通用しないんだって。アメリカでうちのCD扱ってるレコード会社にずっと催促されてたみたいで、ようやく決まったんだよ」
-- プロモーションし辛いという事ですよね。
R「そう。イベントに俺達をねじ込んだりツアー用の箱抑えるのに、音源しか商材がないバンドなんてそもそも嫌がられるんだって。今ってデモテープだけじゃダメなんだよ」
-- そうですね。やっぱり、どういうバンドがプレイしていて、どういうステージ構成を好むのか、手っ取り早く知る為には映像が一番ですからね。ライブ映像だけではイマイチ伝わり切らない事も多いですし。
R「やっぱり詳しいな、さすがにそこらへん」
-- ちなみに、その監督の名前とか教えて頂く事は出来ますか?
T「ニック・オルセン」
-- ウソ!うわ!ウソォ!?
R「有名か?」
-- 有名ですよ!『ファーマーズ』ですよね。ニッキー・シルバー・オルセン!ガッチガチの映像作家です。うわわわわ!うわわ!
M「あははは!」
R「なんだよ(笑)。絵コンテ見る?なんか不思議系過ぎてよく分かんねんだよ」
-- 見たいです! 映像クリエイター集団のトップなんで拘りが半端ないと思いますよ。日本で彼と仕事したバンドいたっけなー。凄いですよ、これは本当にニュースです。もう情報どこかに出てます?
R「そんなに興奮する話か?」
T「まあ、ファーマーズと聞いてピンと来ない時点で俺達には何も言う資格ないよな。まだ出してないと思うよ。この話だけ先にBillion載せたいの?」
-- 駄目ですかね。
T「織江と話してみな」
-- 分かりました!
R「じゃあちょっと取って来てやるよ」
-- ありがとうございます。翔太郎さん戻られませんね。
そういうや否や、池脇と入れ替わりで伊澄と伊藤がスタジオ内に戻って来た。
S「どこ行ったのあいつ」
-- ニッキー・オルセンの絵コンテを取りに行っていただきました!
S「あ、PVの話? 丁度いいや」
そう言って伊澄が伊藤を見やる。
彼女は眉間に皺を寄せて、うーんと言いながら繭子の後ろに立った。
O「時枝さん、誠の連絡先って知ってる?」
-- え? いや、皆さんが知ってる番号と同じじゃないでしょうかね。あ、事務所も分かりますけど。
O「うん。まあそうだよねえ。どうしよっか」
S「仕方ないんじゃないの、こういうのはさ、タイミングだし」
そう言った伊澄の顔に若干の陰りが見える。
-- どうかされましたか。
O「んーと、もうPVの話聞いたっぽいから言うけど。絵コンテと構想案を貰ったのって実は今年入ってすぐぐらいだったの。もう半年以上前ね。なかなか向こうのスケージュールが合わなくて進展しなかったんだけど、その時考えてたこっちのイメージが…」
-- あちらの描くイメージと合わない?
O「あー、いやそういうんじゃなくって」
彼女には似つかわしくない歯切れの悪さだ。
関誠の連絡先とどう繋がるのだろうか。
そこへ分厚い紙の束を持った池脇が戻って来た。
ドンとテーブルに投げたそれの端っこが妙に黄ばんでいる。
M「なんか汚れてません? 何この黄色いの」
R「ん?ああ、カレー」
M「ちょっとー!」
カレーライスを食べながら見ていたという事か。
世界的映像作家による手描きの絵コンテを。
カレーを食べながら。
O「えっとね、この、最後の最後」
そう言ってページを捲り、伊藤がある一枚の絵を指さした。恐らく女性の顔のアップだ。その前のコマを見ると、女性の背中から脱皮して何かが飛び出している絵。そして顔のアップ映像へと続いている。
O「このひとつ前の、背中から何かが飛び出している絵ね。このシーンのこれは、繭子なの」
-- ドラムセットに座ってるっぽいですもんね。
O「そう。それでね、ここで背中を食い破って出て来る何か、向こうは天使だと言ってるしこちらは悪魔が良いって言ってるんだけど、どちらにせよ、誠に依頼しようと思ってるんだよ」
-- そういう事ですか!良いですね!素晴らしいアイデアです。
S「ただここへ来て電話に出ねえんだよ、あいつが」
-- そう、なんですか。
O「何も聞いてないよねえ?いや、うん、ああいう事があった直後だし、結局この話もどうするか分からないって所なんだけど、そもそもあの後話せてないのね。一応、結構前だけど軽くこの話をした時は二つ返事でやるって言ってたから、仕事の話だしちゃんとしておきたいんだけど、事務所に掛けてもね」
-- 駄目だったんですか。
O「ちょっとびっくりしちゃったんだけど、事務所にも伝えてるみたいなのよ。『大恋愛をしていましたが、この程終わりを迎えました。心機一転頑張りたいので、連絡を取り次がないで欲しい』と本人から言付かっておりますので、ってあちらさん物凄く申し訳なさげでさ。相手が翔太郎だってのも言ってるらしくて、担当の方に電話で『バイラル4の伊藤と申しますが』って告げた瞬間『ああっ』って言われて驚いたよ」
-- さすがにびっくりしますね、そこまで徹底されると。翔太郎さんが掛けても無理なんですもんね。じゃあ、誰も無理ですよね。
S「それは分かんねえけど、番号が変わってるとかじゃなくて、出ないっていう意思ならもうどうしようもないよな」
M「誠さんらしいっちゃらしいんだけど、なんか変だよねぇ。これじゃ翔太郎さんの事嫌ってるみたいな避け方だよ」
-- 実は、私も連絡取ろうとは思ってたんです。既に収録済みの、誠さんのインタビューを今後どうしたものか迷っていたので。一度は取材許可を頂いてるんですが、ただ今の事務所の対応を聴くかぎり、こちらもアウトっぽいですね。
O「一応連絡してみてくれないかな。結果を教えて欲しい」
-- 承知しました。これ、誠さんがダメだった場合、代役立てるんですか?
S「いや、繭子だな」
M「うへー。恨むよ誠さん」
-- どうして?
M「いやー、企画としては面白いんだけどね。でも一番美味しい最後の場面で、ルックス最強の関誠が受け持ってくれるっていう安心感があったからさ。あとなんか身内感覚で、見ろこの顔面偏差値の高さを!アメリカ人何するものぞ!とか勝手に盛り上がってたし」
R「それはでも向こうにはまだ話してねえしな。そもそも向こうは繭子で想定して描いてるんだし」
M「はーい。気合入れるかー」
(上半身を左右に捻りながら言う繭子に、珍しく大人しい声で伊澄が声を掛ける)
S「よろしく頼むよ」
(繭子はニッコリ笑って、元気に頷く)
M「あい。翔太郎さんの頼みは断りません」
S「悪いな、急な話で」
M「こんな事くらいで謝らないで下さい。全然大丈夫ですから」
(そう言って顔の両脇でピースサインを作ってみせる)
この時の繭子の笑顔が、この一年で最も可愛いと思うのは私だけだろうか。
どこまでも強くあろうと己を鼓舞し続けるのが伊澄という男だ。しかし思いもよらぬ場面で、自分の半身とも呼べる存在の喪失を改めて突き付けられている。死別でないとは言え、だからこそ平常心でいる事は難しいように思えた。私の知る限り伊澄翔太郎とは、体裁や寂しさいった自分の事よりも、他人に及ぼす迷惑や影響を気に病む人だからだ。そんな今、特に繭子の存在は大きいと感じる。
実は、この日スタジオへ来る前に私は繭子と電話で話している。あれから初めて顔を合わすのだが、どういう顔で行っていいか分からないという私の相談に、繭子はこうアドバイスをくれた。

『普通だよ。普通でいいんだよ。もし翔太郎さんの事気にしてるなら、ちゃんと私が見てるから大丈夫』

一緒になって笑う、一緒になって怒る、一緒になって泣くことの出来る存在。そして伊澄が全く気を使わなくて済む、その事をむしろ喜んでいるであろう繭子という存在。今伊澄を支えているのは、誰であろう彼女の変わらない距離感である事は明白だった。
それは繭子の加入当時、文句ひとつ言わずに彼女のドラム練習にとことん付き添っていた、伊澄翔太郎の姿が気が付けばそこにあったように。
私は視界が震えて来るのを悟られぬよう、必死に絵コンテを睨みつけた。







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