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12「伊澄翔太郎×URGA」
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2016年、5月23日。
伊澄翔太郎(S)×URGA(U)、対談。
スタジオ内、応接セットのソファーに腰かける2人。
2人の間には、優にあと2人が座れる程の距離が開いている。
画面右側の伊澄は、いつものように背もたれに体を預け、俯いている。
不機嫌ではないが、笑ってもいない。
対する左側のURGAは、背すじを伸ばして座ったまま、ずっと伊澄を見つめている。
口元には微笑みが浮かび、瞳はキラキラと輝いている。まるで恋する乙女のようだ。
-- 画面を通してこちらまでフワフワ感が届いて来るようです。そしてスタジオ内とてもいい匂いがします。本日は、我らが超絶ギタリスト・伊澄翔太郎さんと、世界を包む温もりブランケットボイス・URGAさんにお越しいただいて、お二方の対談を収録させて頂きます。…えー、もうカメラ回ってます。…よろしくお願いします。
S「…」
U「…」
-- よろしくお願いします。
笑顔のままこちらを振り向き、URGAが「お願いします」と頭を下げた瞬間、伊澄が煙草に火をつけた。
U「やめろー!ボーカリストだぞー!」
相変わらず声量たっぷりに、愛嬌のある声でURGAが言うと、本気で慌てた様子の伊澄が煙草を揉み消した。彼ほどの人が緊張している姿などそうそうお目にかかれない。
-- まずは今回、弊誌掲載を許可してくださった事を、改めてURGAさんに感謝したいと思います。ありがとうございます。こんな日が本当に来るは思ってもみませんでした。まさかお二人のやりとりを生で拝見できるとは。
U「いえいえ、掲載許可とか、そんな大げさな話じゃないですよ。単純に、ジャンルの違いからくる違和感があるだけです」
S「っは、トゲあるわー(笑)」
U「なんだと!?」
S「許しはしたけど納得はしてねえ、みたいに聞こえなかった?」
-- 私に振るのはやめてください。そんな事全然気にしません。
U「トゲなんかないよー!」
-- 嘘です、全然なにも感じませんよ。お二人の仲の良さが見れて幸せだなーと思うだけです。
U「えへへー、そうなのー、実は仲良しなのよー」
カメラ目線でワザとらしくアピールするURGAに、伊澄が苦笑いを浮かべる。
-- そもそも、お二人の関係はどこから始まったのでしょうか。
U「馴れ初め?」
-- ああ、はい。
U「私が話す?それとも、あなたから言う?」
S「最後までそのキャラで行くの?」
U「そのつもりだけど」
-- 昨年のアルバム参加がきっかけですか?
S「実際に初めて会ったのはそう」
U「私がもともと、オリーと仲良しだったの」
-- 伊藤織江さんですね、『バイラル4』代表の。
U「そうそう、オリーと大成くんがよく私のステージを見に来てくれてたの。それでね、うちのスタッフに彼らのファンがいて、『今日、お見えになってます』って、聞いてもいないのにわざわざ教えてくれるの」
S「っははは!トゲが!」
U「誰が?ってなって、最初は。そしたらさ、『あの、ドーンハンマーのベースです』って言われて、どこー?って袖からチラ見したら、まあ男前と美女のカップルじゃない? すぐに、楽屋へ来てもらって。でもね、最初は大成くんが一人で来たの。あれ、彼女はって聞いたら『会社の人間としてお会い出来る格好をして来なかったので、本人が辞退しました』なんて言うのね。でもそんなの当たり前じゃない、お休みの日にコンサートへ遊びに来てくれてるわけだから。私それ聞いて、凄いちゃんとした人だなーって思ったんだけど、同時にこれは出会いなのかもしれないなと直感して。是非お会いしたいですと私の方からお誘いして。そこから仕事の話をちょこちょこするようになったのかな。オリーも海外詳しいし、本当に気の合う、素敵な人」
-- そうでしたか。もともと、ドーンハンマーというバンドはご存知で。
U「もちろん」
-- どういう印象をお持ちでしたか?
U「ちゃんと聞くまでは『うーん、何かルックスが怖いなー』っていう感じ」
S「(笑)」
U「…全員ね」
S「あははは!」
U「音楽性の違いやなんかで改めて聞くまではよく分かっていない所もあったけれど、そもそもバンドよりも彼がそっちの世界では有名人だから、お名前だけは以前から知っていました」
-- 伊澄さんですか? そっちの世界といいますと、ギタリスト界のような事でしょうか。
U「そう。ご一緒する事の多いミュージシャンや、よくセッションするギタリストの方達の間ではある種基準になってるみたいです。とにかく上手いと。テクニック関連の話になると必ずと言っていい程名前が上がるもの。伊澄以上か伊澄以下か、みたいな」
-- ジャンル違いの世界にも名前が知れ渡っているわけですね。となるともしかして初めは、ドーンハンマー=伊澄翔太郎とは思っていらっしゃらなかったとか?
S「興味ないもんね」
U「え?今はあるよ?それまでは、うん、確かにそこまでクリアに思い描けていなかったかもしれない。いや、知ってはいたんだけどね」
S「フォローされてる(笑)」
U「違うよ」
-- 面白い出会いですね。伊澄さんは、URGAさんをご存知でしたか?
S「もちろん。織江もだけど、繭子も好きだし、多分アルバム全部うちにあると思う。なんならスタジオのどこかにもあると思う」
歓びに頬を紅潮させて、URGAは伊澄にピースサインを送る。伊澄に促されて、カメラにそのピースを向けた。
-- 休憩中、スタジオでは爆音で流れていたりしますよね(笑)。
U「へー!」
-- 伊澄さんご自身から見た、URGAさんの印象というのは。
S「んー」
この日初めて、伊澄はまともにURGAを見つめた。こういう時の彼は真剣で、ウソも冗談も言わない。対してURGAは両手で髪をとかす仕草をし、どこまでもユーモアスタイルを崩さない。
S「やっぱり、今一番凄い人なんじゃいかな。シンガーソングライターの世界では、一番だと思う」
U「はあああっ」
余りにもストレートな伊澄の物言いに、さすがのURGAも照れて顔を手で覆った。
U「嬉し過ぎる!来て良かった!」
-- 大絶賛ですね。
S「うん、大絶賛で良いと思う。歌声も、作詞も、作曲も、アレンジも、…まあアレンジは人によって好き嫌いあると思うけど、それでもちょっと才能ありすぎるよこの人。今の世代でこの人以上の歌うたいは出て来れないと思うよ。ちょっとでも似た感じでやれば、全部フォロアー扱いされちゃうと思う。そんくらいスペシャル」
U「うわあああー!もう帰る!このまま気持ちよく帰る!」
-- だめです!
U「帰る!」
-- ですが、このあとスタジオで歌を披露して下さると聞いていますよ?
U「…そうでした」
S「え、そうなの?」
U「え、駄目なの?」
S「どういうことだよ(笑)。ウチでなんかPVでも撮るの?」
-- 私は今回カメラだけ置かせていただいて、その場にはいませんので詳しくは分かりません。バンド側からの依頼だとは聞いていますが。
U「別にいてもいいよ。URGAさんは仲間外れなんてしません」
-- ありがとうございます(笑)。ですがそういう事ではなくて、きちんと織江さんと相談した上で私が自分から辞退しとなので。
U「聞きたくないのー?」
-- めちゃくちゃ聞きたいですよそりゃ。ただ今回は別です。ドーンハンマー4人の為に歌を届けに来たあなたの側に、当事者以外がいるべきではないと判断しただけです。
U「…て事はもしかして、オリーもいないの?」
-- そう聞いています。
S「へえ~。でもなんか、嫌だな」
U「なんだと!?」
S「いや、楽しみは楽しみだけどな。去年ここで聞いて以来だし」
U「でしょ?というかさー、約束どうなったのよ。コンサート見に来てよ」
S「行くよ、行くから」
-- 去年ここで、というのは、歌のテイクも録られたんですか? ピアノ演奏だけではなくて。
U「歌って言うか、コーラスだけね。あ、聞いてー!そのコーラス使わないでやんのー!」
-- ですよね、聞いた覚えがないです。
S「だって依頼してないから。勝手にブース入って勝手にレコーディングしたんだぜ、笑うだろ。うちの連中もそういう遊び好きだからノリノリになっちゃって」
-- そんな言い方!ですがとても面白い方なんですね、URGAさんて。
U「ありがとう、2番目に嬉しい褒め言葉だね」
-- 1番はなんですか?
U「素晴らしい歌声だね」
-- 先程伊澄さんから頂きましたね。
U「そ。もうね、ちょっと本気で嬉しいの、今。カメラ回ってなかったら泣いちゃうくらいの」
-- 意外ですね。URGAさんクラスだと、何百回何千回と言われている気がします。
U「何万回と。だけど…うーん」
-- 違いましたか。
U「ちょっと真面目な話をしちゃうけどさ、私にとって歌っていうのは届けたい気持ちのこもったメッセージなの。それは相手が誰か特定の人な時もあるし、自分自身へ向けた歌でもあるし、あるいはその時々に、色々感じながら生きている人達に寄り添えるような言葉でありたいと思いながら、歌っているのね」
-- はい。
U「そこで言う歌の上手さっていうのはさ、そのメッセージを届けるためのプロセスって言うと変だけど、ツールに近いというか。誰かの胸に届ける為の、方法だと思っていて」
-- つまり、歌が上手いことが全てではない。そこがゴールじゃないと。
U「そう。と同時に、歌声って私の全てでもあるの。声が大きいとか、音域が広いねとか、可愛いねとか、あ、言ってないか(笑)。そういうもの全部ひっくるめた『歌声=私』だと思っていて。自分で書いた『思い』や『心』を乗せて、全力で届ける私の歌声を好きだと言ってくれる人は、私自身を好きだと言ってくれる事と同じだし、肯定してもらえるという事だから、単純に、回数の問題ではなくそこは慣れない。そりゃあ、嬉しいよ」
-- はい。
U「もちろん、ずっと私を支えてくれるファンの人達からの言葉もそうだし、感謝しているし、励みになる。だけどその事と、今翔太郎くんから言われた言葉っていうのは、分かりにくいけど、私には違った意味になるの」
-- と仰いますと。
U「相思相愛?」
S「恥ずかしいから本当にやめてくれないかな」
U「照れるなよー」
-- ええーっとー、真面目な話だと思って聞いていたのですが。
U「真面目だよー?真面目だよね」
-- 伊澄さんも、相思相愛ということでよろしいですか(笑)。
S「間違いではないよ」
U「いいいーよし!帰るぞ!絶対帰る!」
ガッツポーズと共に立ち上がるURGAを笑顔で見やりながら、伊澄は続ける。
S「この人ずっとこんな調子だから誤解すると思うけど、話はもっと単純で、同業者同志、認め合ったもん同志だからこそ嬉しいっていうただそれだけだよ」
-- なんとなく分かってました。
U「えええ!」
S「たまたまだけど、ついこないだ竜二と話してて意見が合ったのがさ。俺達とURGAさんがいれば、人間の感情全部カバーできるんじゃないかって」
U「取り乱しました」
そう言ってURGAは最初の位置より少しだけ伊澄に近い距離に座り、話の続きを促した。
S「怒りとか、衝動とか、本能とか、前へ走り続ける為の原動力とか。喜びとか悲しみとか、許しとか、あと勇気、愛情。全部俺らとURGAさんで、表現してきた。だけど何が違うって、お互いが出来ない事を相手はやってるってことなんだよ。竜二にはきっと愛情の歌は歌えないし、彼女に純粋な怒りや暴力の歌は歌えない。決して手を伸ばそうともしない触れられない世界を、お互いにない音と世界観を持って表現してるなって、そう思う」
U「そうだね。確かに、私には見えていなかった世界が翔太郎くん達にはっきりと見えた。初めて4人が演奏しているのを見た時、心の通じ合った人間同士の一体感に嫉妬したし、圧倒された。感動もした。私にだって、彼らと同じ感情はある。だけど私には表現出来ないって思って、なんか泣けたんだよね。自分なりの方法で、人の営みや想いを届けてきたつもりでいたけど、ああ、こういう人達がいるなら、この分野ではもう私に出番はないな、くらい思ってしまった。そして何よりもびっくりしたのが、彼らの演奏技術の高さと、自分達に対する絶対の自信。こんな人達が今までどこにいたんだーってなったよ(笑)」
-- なるほど。全く表現方法の違うお二人が何故ここまで惹かれ合っているのか、分かった気がします。URGAさんも、これまでたくさんの名プレイヤーと共演されてきましたし、それこそ海外で向こうのアーティストとも同じ舞台を幾度も経験されていらっしゃいますが、そんなURGAさんから見て、デスラッシュメタルバンドのギタリストである伊澄さんは、どのように映るのでしょうか。
U「ううーん。ひとまずジャンルの話は置いとこうかな。そこを抜きにして、ギタリストとしてだけ見たら、間違いなく出会った中で1番上手い人。いっちばん上手い。評判に偽りなしだった。ギター音痴の私が言うと説得力ないかもしれないけど、上手いってこういう人の事だなって思い知った。うん、あのー、こんな言い方をすると傲慢と取られかねないけど、私ボーカリストなので、とにかく楽器演奏の上手い人ってめっちゃくちゃ助かるの、一緒にプレイする時に。まあ、ピアノでもなんでもそうだけど、とにかくミスをしない、ズレない、ぶれない人ってたまーにいるんだけど、本当に喉から手が出る程欲しい。翔太郎くん、あなたが欲しいよ」
S「酒飲んできた?」
U「ちょっとだけね」
S「あははは!」
U「でも、舐める程度だよ」
-- 本当ですか?
U「え、ダメだった?」
-- 一応カメラ回ってますけど、外に出て大丈夫な話ですか?
U「大丈夫、私好きになった人には大体おんなじ事言うから」
-- あははは、まあ、お酒の話も含めて。
U「ダメかなぁ? んー、どっちでもいいや。そうそう、去年スタジオにお邪魔した時も、ちょっとだけどアコギで弾いてくれたの。私の曲を」
-- ええー!凄いじゃないですか。
U「うん、まあサービスしてくれたんだろうなとは思ったけど、本当にびっくりするくらい上手いってのが分かるのよ、自分の曲だと。即興で初めて弾いたっていうのが、今でも嘘なんじゃないかって思うくらい。テクニックもそうだけど、曲のもつ顔とか、聞かせたい部分とか、そういうのを捉える力が抜群だなと思った。私が書いたメロディーを、ちゃんと理解している人が弾くギターの音だったの。あ、こういう人本当にいるんだって感動した。久しぶりに心が震えた気がする」
S「よおおし、じゃあ、俺も帰ろうかな」
-- っははは、本当に仲良しですね。
S「気持ち悪いよな、ただ褒め合ってるだけの対談なんか」
-- そんなことないですよ。
U「私が思う翔太郎くんの一番の魅力はそこかな」
-- テクニックうんぬんではなくて。
U「うん。プロである以上もちろんそれも大事なんだけどね、それ以上に心があったよ。心を乗せて弾ける人だね。まずそれがあって、あのプレイだから凄いんだと思うよ。私にとってはただの巧い人っていうだけじゃない魅力があるかな」
-- 伊澄さんを引き抜いて、2人でツアーに出たいんだという話を人伝に聞いたのですが、今もその気持ちに変わりはありませんか?
U「うん、変わらない。多分その話を最初にしてから一年以上経ってるけど、変わらない。引き抜くって言うとバンドやめろーみたいに聞こえるけど、ただ一緒に色んなステージをやってみたいっていう事だよ。誤解されたくないのが、私がこれまで共演してきたギタリストの方達に問題があるとか嫌だという事ではなくて、ポジティブな意見として、新しい世界が待っていると思うから。ただ私に合せて変幻自在に音を紡ぎ出せるだけじゃなくて、彼の持つ呼吸や間や音色が、私のそれと重なって今までと違った音像になると確信してる。なんなら、私の歌を彼に合わせてみたいとすら感じる。そのくらい、ギター一本で、私にない自分の世界を音に出来る人だと思う」
-- 音源としては残っていますが、ライブでアコギを引く伊澄さんはまだ見た事がないので、なんだか私までわくわくしてきます。
U「うん、私もそう。だから一刻もはやく計画を立てねば」
S「あ、もうやる前提なんだな」
-- 伊澄さんにとっても、これはかなり嬉しいラブコールじゃないですか?
S「そうだよな。なんというか、その、なかなか適切な言葉が出てこないんだけど、おそらくURGAさんだけだと思うんだよ今まで。一緒にやっても良いな、やりたいかもな、って思える人って。メンバーが聞いたらぶっ飛ぶかもしれないから真面目に話をすると、さっき言った竜二との話にも関連する所があって。おそらく今一番自分のやりたい事ってさ、もうすでに俺はやってるんだよ。このバンドでギターを弾くことが俺の全てだし、俺の持っている物を全部そこに費やして終わりたい。何か新しい事やインスピレーションが沸いて降って来たとしても、それを全部このバンドで表現し尽くしたい。だけど、本当に、全くURGAさんと同じ気持ちもあるんだよ。この人の歌を生で聞いた時に受けた感動のおかげで、俺にはどう頑張っても作れない世界があるんだなって事に気づいてしまったというか。今この道を全力で駆け抜けたとしてもその先に辿り着けない世界が、彼女にはあるから。そこをもし一緒に見てもいいよって許されるなら、見てみたい気もある。心がぶるぶる震えるくらい感動できる音楽をさ、もし自分が作り出せるんだとこの人に言って貰えるなら、チャレンジしたい気持ちも、ギタリストとしてはあるよ」
U「ありがとう。すごく、嬉しいよ」
S「ただ、今んとこまだそこへは行けないかな」
U「そんな話し方だったね」
S「うん、ちゃんと行きたい場所へ行ってから、そこから見る景色に満足出来たら、そしてその時までURGAさんの気持ちが変わらなかったら、そういう事もありえるかもしれない」
-- 伊澄さんの計画では2年で世界と獲るという事なので、そう遠くない未来に実現できそうですね。
S「なんで。世界獲ったら防衛しなきゃ。君臨し続けなきゃ嘘だろ」
-- なるほど。そこからまた先にも、バンドの未来はあるわけですね。ホッとしたような、残念なような。
U「私がもっともっと頑張って、お願いです一緒にやらせてくださいって言われるくらい頑張らなきゃいけないね」
S「そうなったらなったで、もう俺のことなんか忘れてるかもしれないな」
U「そうだねー」
S「(笑)」
-- 少し話が戻りますが、ドーンハンマーのアルバムに参加する話を聞いた時、どのように思われましたか?
U「嬉しかったですよ。どちらかと言うと、同じ事を繰り返す作業が苦手な方なので、彼らみたいな才能ある人と何か新しい仕事が出来るというのは、私にとっても素敵な事なので」
-- 伊澄さん達は、同じ作業を繰り返す達人にも見えますが、何故ここへ来て、バンド外の音を入れてみようと思い立ったのですか?
S「おーお、語弊があるな。同じ作業を繰り返したことなんか一度もないよ。それは多分スタジオ練習の話なんだろうけど、それにしたって同じ事をやってる意識は全くない。一分一秒前を振り切るつもりで、演奏してるんだから」
-- 確かに、言われてみればその通りですね。その為の練習ですものね。
S「そう。アルバム制作にしたって、竜二の歌一つとったって、同じ顔した曲なんてないし、同じに聞こえるとしたらそれはきっと統一感を出すために意識的にやってる。今回は、というか前回なのかな、『P.O.N.R』作る時にたまたまキーボードかピアノかどちらかの音が欲しかったんだよ」
U「誰発信だったの?」
S「俺」
U「そーなんだー!」
S「知らなかった?」
U「連絡を貰ったのはオリーからだし、音関係の話だからきっと大成くんだろうなって思ってた」
S「ああ、確かに。ただあいつらの中でURGAさんて音よりも声で想像する人だから、最初は違和感あったみたいよ。なんで?って普通に首捻ってたし」
U「うんうん」
-- URGAさんのアルバムに収録されているピアノの音は全て、ご自身演奏のものだそうですが、伊澄さんはご存知だったんですね。
S「へー、知らないね。そうなんだ。なんで?」
U「知らないんだ!全部というか、独立して個人事務所立ち上げてプライベートスタジオを建設してからだから、まだここ5、6年だよ。単純に人件費の事もあるし、やっぱり自分の世界観や欲しい音の数や表情って自分が一番分かってるからかな。あまりにも複雑な譜面は、私はピアノでは作らないから、それ以外のシンプルでメッセージ性の高い歌重視の曲は、自分で弾いた音を聴きながら歌う方が、良いものが出来る印象があるかな。もちろん演奏の上手い下手で言ったら、もっと上手いピアニストは一杯いるし、実際ステージだと参加してもらう事の方が多いんだけどね」
-- 弾き語りのイメージも強くあります。
U「たまにそういうイベントをやったりするからかな。私極端なの。色んな楽器の音や私の声を一杯重ねて音像を構築するのも好きだし、全部取っ払ってピアノと歌だけっていうのも好きなの」
S「俺はどっちかっていうとそっちの、多重録音の人っていうイメージがあるかな。頭の中どうなってんだろうなっていつも思う」
U「ああ、そう言って貰えるのは嬉しいなぁ。ただね、疲れるよ、実際作り込んでステージで表現するのは」
S「そうだろうね。俺が一人で複雑な弾き方するのは全然平気だけど、音の種類を増やして合体させる作業は本当に神経擦り減らすから」
U「まさに!もうこの話も翔太郎くんと何度もしたけど、ココ!っていうポイントで音が一つポロンって鳴るか鳴らないかっていうだけで何日も悩んだりするもんね。だから本当に上手い人とやりたい願望は皆常にあるんだよ」
S「確かにあんたは極端だよ(笑)」
U「悪口は許さないぞ」
-- あははは!
S「(笑)、そこはでも、ストレス軽減できると思うけどね、プライベートスタジオがあると」
U「うーん。好きな時間に、それが夜中でも思い付きで音を録れたり残せたり、試せたり、それはそうなんだけど、最後まで宅録レベルで完成させられる曲は、そう多くはないからなぁ」
S「そりゃそうだけど、なんだこの下手くそはって思わなくて済むし」
U「下手くそ!?誰に?」
S「一緒にやってるスタジオミュージシャンとか」
U「ちょっと!下手な人となんてやってません。ちょっとー、この人怖いかも」
-- そうですよ、超怖い御人です。
S「真面目な話、それでも自己完結しようと思えば出来るじゃない」
U「まあ、そういう曲も最近ちょこちょこ作ってはいるかな」
S「誰かと相談しなくていい。自分の気持ちを100%反映した曲が作れるって、俺達もそうだけど、恵まれてると思うよ」
U「うんうん、言えてる。ねえ、翔太郎くん達ってどこまでデモを作り込んでるの?」
S「どういう意味?」
U「というかどうやって作曲のイメージを伝えあってるの?」
S「ああ。俺と大成しか曲書かないから、とりあえず弾いて聞かせるよ」
U「生音?生演奏ってこと?」
S「うん。曲のイメージを伝えるっていう言い方の段階だと、そうかな。音を録るのは取り敢えず各パートで仮音が出来た後」
U「いやいや、その仮の音は皆どうやって作ってるの?」
伊澄はよく理解が出来ないという顔で私を見やる。
え?変な事言ってる?という顔でURGAも私を見る。
-- おそらくですが、URGAさんが仰りたいのは、翔太郎さんが作った曲をメンバーに伝える際、もしくは伝えた後に、各楽器が肉付けしていく過程で聞く音源はどうなってるの?という事だと思います。所謂仮音の事ですよね。
U「そうだよ。まさか一回聞かせただけで、さあ、覚えただろう、あとは勝手に作ってこい、ってやってるわけじゃないでしょう?」
S「そうだけど?」
弾かれたようにURGAが私を見る。
無理もない。そんな効率の悪い作業が存在するとは夢にも思うまい。
U「え、ちょっと待ってよ。なんで?なんでそんなにトップシークレットなの?ハリウッド映画の台本じゃないんだからさぁ」
S「その例えはよく分からないけど、別に一回しか聞かせないわけじゃないぞ? それに俺の方も最後まで出来てるとは限らないし、メインリフとAメロとサビくらいを何度か聞かせて、その場でセッションして、全員で取り敢えず最後まであーだこーだ言いながら作って、それを譜面に起こす。録れたら録る。そこから色々変えていくやり方が一番早いし。逆に他の人どうやってんの?」
U「人に聞かせる段階で仮音源を作ってると思うよ。だって大成くんベースだよ?彼の作った曲もスタジオで生演奏なの?」
S「あはは、あいつだってギター弾けるよ」
U「えー!そういう話? 嘘でしょー?本当にそうやって曲作ってるの?それともヘヴィメタルの人皆そうなの?」
-- ここまで極端な話は私もちょっと聞いた事ないですね。ただそれだと、確かにドーンハンマーの曲作りの早さの理由が分かります。海外だとあり得ないですけどね。メンバーが同じ国にいないバンドだってありますから。しかしその方法だと、全員でほぼ一日で作ってるように聞こえます。
S「もちろん完成はしないけど、譜面書く程度なら丸一日あれば仕上げるよ、皆」
U「えー…」
S「え、何がそんなにおかしいんだよ、全然わからない」
U「もしそれが全部本当なら、皆異常に記憶力が良くて、異常な速さで音を構築できる才能に満ち溢れているって事になるんだけど」
S「なんでだよ!誰だってセッションくらい出来るだろ?」
U「誰だって出来るわけじゃないよ」
S「いやいや、出来るって。要はゴールが全然違うって話。まだその段階だと、こういう感じの曲をやるぞーっていう程度だし、製品として出せるわけじゃないよ。そこからさらに何度も繰り返して練習するうち、皆それぞれマイナーチェンジをしながら仕上げていくわけ」
U「それ、いつ完成するの?」
S「しないよ」
U「あははは、ますます分かんない」
S「アルバムに収録した曲が完成だって誰が決めるんだ?」
U「…え?」
S「俺の場合は、というか俺達の場合は基本的に4人で出せない音は要らない考えなんだけど、そういう拘りと、単純に格好良い曲を作りたい拘りって必ずしもゴールが同じじゃないわけだ」
U「それは、そうだろうねぇ」
S「そもそも大成以外は皆音楽的な知識や才能がないから、拘りはあっても具体的にどうしたらいいか分からないんだよ。だからまず伝える所からが大変だってのは、それは認めるよ」
U「才能ないわけないじゃん!」
S「いやいや。演奏とは別の話だから。そもそも考えて理解して作るとかほぼ無理だもん。やってるうちに格好良い方を選んで作り変えていくやり方しか出来ないし」
U「出来ないってことはないでしょう(笑)」
S「いやいや」
U「あっれー?(笑)」
S「あーんと、…そうだなー。これは勝手に俺が思ってるんだけど、URGAさんて音源を作るのとライブ、どっちが好きって言うと半々くらいなんじゃない?」
U「い、いきなりだな。まあ、そうかもしれない。どっちが好きかって言われると、迷うな。どっちも好きだし、どっちかの為だけに歌っているっていうわけでもないしね」
S「でも俺らは圧倒的にライブなわけだよ。正直アルバムなんて、出来た曲を一発録りして鮮度バリバリの真空パックで発送して終わりにしたいくらいだから」
U「分かり易い例えだなー」
-- ただその『出来た曲を一発録り』っていう言い方では想像が追い付かない程、彼らの楽曲は完成度が高すぎるという事実も付け加えさせてください。でないと話が食い違ってきます。
U「そうだよねえ。あれだけ音や演奏にこだわりを持ってる人達が、そんなラフな曲作りしてるわけないもんね」
S「全然ラフに作ってるわけではないしそんな事言ってないよ。俺達の曲は、格好良いかどうか、演ってて気持ち良いかどうかが基準だから、スタジオでその日出来た曲が完成だとは本気で思ってないって話。アルバムに収録された時点が完成じゃなくて、ライブで演奏して、練習で演奏して、どんどん研ぎ澄まされていくことでしか完成しないって、極端な話そんくらい思ってるからね。だからこそ、ステージ上で4人で出せない音はいらないって思ってるんだけど、URGAさんのステージを見る限り作り込みや構築の出来上り具合が半端じゃないレベルなんだよ。それこそ俺らみたいに一回作った上で、やっぱここをこう変えて演奏してみようかっていう思い付きが通用しないくらいに」
U「それは、…そうだね。そうかも。アレンジ変えたり、それこそバージョン違いを作ることもあるけど、いきなりスタジオで昨日までと違う演奏始めたらパニックになるよ。ただ単に私が欲張りなのもあるけど、じっくり、ちゃんと考えて、照明や風や演出や音の反響や構成を皆で話あって、最高のステージを作り上げたいっていう努力を積み重ねて、毎回楽しみながらやるのが好き出し、お客さんのびっくりする顔や喜ぶ顔を想像しながら曲を作り込む事に喜びを感じている所はあるね。そこからさらに、当日のお客さんの反応を見ながら、自分の出す波動との波のような押し引きで毎回違ったステージにするんだっていう、翔太郎君で言う所の一発録り感も、大事にしたい思いも強い。だから、一つのステージを作り上げてから実際にやり終えた後、物凄く疲れる。精神的にも。だから私は年間何十本も各地でツアー回る事は出来ないかな。全部出し切ってしまうから、充電期間が必要だもん」
S「それはステージを見てると分かるよ。頭と、心と、体を全部使って表現してるんだなって。回りくどくなったけど、そこで白羽の矢を立てたのがピアノとかキーボードっていう『音』じゃなくて、URGAさん自身だったんだよ。ピアノの技術とかどうこうよりも、音を組み立てる事の出来る人が欲しくて、俺の知ってる限りだと相当高いレベルでそれを出来るのが彼女しかいなかったんだ」
声には出さないが、ふわ~~と言う顔でURGAは私を見た。
U「この人絶対女の人にモテるタイプだと思わない?」
-- 思います。
S「はあ?」
-- ただアルバムに収録されているのは2曲で、しかもイントロとアウトロのみですが、そこまで欲していたなら逆に何故だろうと思えるのですが。
S「そこは本当に申し訳ない。こちらの準備不足」
U「いや、私も実はそこまでガッツリとは考えてなかったの、正直な事を言うと。オリーから話貰った時も、ちょっと遊び感覚で参加しませんかっていう誘われ方だったし、時期的に色々煮詰まってトゲトゲ、クヨクヨしてる時だったから、気分転換出来て刺激にもなるだろうなーっていう割とヘラヘラした感覚で行ったら、全然違った。魂の削り合いみたいな現場だった」
-- 曲の問題ですか、音響整備とか楽器とか、環境の問題ですか。
U「曲」
S「曲、曲。ほぼ出来上がりかけてたんだよ、URGAさんが参加するって決まった時点で。さっきも言ったみたいに、本来なら俺ら4人で完成させるべきものだし、ライブで出せない音を収録するのは嫌だったから、そのまま仕上げてもなんらおかしくはないはずだったんだけど。どっかでやっぱり納得いかねえってなって。音への拘りと、楽曲への拘りがぶつかったというか。もっと格好良い事出来るだろ。出来るよなって話に持って行き始めてからの、URGAさんっていう流れだから、もう後付け作業とかアレンジ変更ぐらいしか方法がなかったんだよ。自分達で好き勝手にいじるんじゃなくて、全く違う楽器を持ち込むわけだから」
-- なるほど!納得です。
U「私はそれでも全然楽しかった。いい経験出来たよ。初めてだもん、出来上がってる曲に頭とお尻を付けてくれないかーなんて。でも私も発見だった。ああ、こういう作業好きかも、得意かもって」
S「そう言ってもらえると助かるよ」
U「良い出会いに恵まれたと感謝したくらいだし」
-- 物足りなくはなかったですか。
U「仕事内容としてはそうかもしれないけど、それでも苦労はしたから、朝飯前では全然なかったかな。彼らのやろうとしている事を分かり始めた頃に、今度は私のスケジュールがキツクなってきたから、正直大満足でやり残しなし!とまで胸を張れないのが心苦しいんだけどね」
-- お二人の間では何度かバトルがあったとも聞いています。短い期間で、濃厚なやりとりを経験された上で、生み出された楽曲なんですね。
U「バトル?喧嘩?してないよ」
S「ああ、喧嘩はしてないけど、お互い絶対に引かな部分で言い合いは何度もしたな」
U「でもそれは絶対に必要な事だったよね」
S「うん。この人に声掛けて正解だったと思いながら、こめかみに青筋立ててたし」
-- 具体的にはどのような話だったんですか?
S「言葉にするには難しいな。俺は俺の『格好良い』を目指して、こうしてくれっていう依頼を出す。URGAさんはURGAさんで、違う格好良さを提案してくる」
U「私が、私の中から出て来るものを残せないならここにいる意味はないよ、って」
-- うわ、鳥肌が駆け上がりました。いかにお互いが真剣だったか、今見えた気がします。結局、どちらの意見が尊重されたんですか?
S「そりゃあバンドの曲だからね。全員で納得出来る音で、という感じかな」
U「どちら寄りの、という選択はなかったよね」
S「面白かったのがさ、この人インスピレーションが全部歌なの」
-- どういう事でしょう。
S「例えば俺が、このタイミングで入って来てほしいんだけど、どの音が良いと思うか相談するだろ。するとキーボード弾かないで、歌い始めるんだよ、色んな音階で、すっげー迫力なの、それが」
U「だって一番返事しやすいんだもの」
そう言うとURGAは、その時の様子を再現するかのように圧倒的音量でソプラノボイスを響かせた。右手を上下に上げ下げしながら音階を行ったり来たり。
S「あはは、やっぱ生で聞くと凄いね。これやってからキーボード弾くんだよ、面白いだろ?」
U「普通だよ!翔太郎君の方がよっぽど面白いって」
S「あ、それが良い!っていうのを2人で話あって、譜面にしていくと」
-- 確かに、曲が始まった時に感じた『ここから来るんだろ、来るんだろ』っていう期待とか嬉しい予感と、これまでのドーンハンマーとは違った音階に不思議なドキドキを感じたのを覚えています。
S「今までの俺達にはない浮遊感から爆走への繋がりが、単音じゃないからこそ活きるというかね」
-- そうですね。これまでは「PITCHWAVE」のようなギターリフによるスロー展開からの転調が主体でしたが、URGAさんのパートはそこだけでも既に独立した世界がありましたね。最初はインストだと思ったくらいですから。見た事のない新しいドアが開いて、そこからドーンハンマーが飛び出してくるようなイメージがあります。
U「本当に好きなんだねぇ、彼らの事」
-- はい。涙が出て仕方ないくらい好きです。
U「いやー良いなあ、キュンとする」
-- ははは、お恥ずかしい。
U「やっぱりこの後聞いていきなよー」
-- ありがとうございます。嬉しいです。ですが、決めたことなので。これは私の趣味や遊びではなく、私自身がきちんと誠意をもって全うしたい仕事ですから。
S「言うじゃないか。いいねえ、それでこそだ」
U「そこまで言われちゃうとね、あとで後悔するなよ!」
-- あはは、後悔は絶対するんですけどね、どっちに転んでも。今日この後ここで歌を披露された後、間もなくURGAさんはツアーに出られますね。ヨーロッパツアーです。
U「そうなの。今回は久しぶりでちょっと長いので、今から体調を整えないといけないんだけどね」
-- お忙しい中ありがとうございます。
U「どうせ彼らの事で話をするなら、翔太郎君を交えてオフィシャルなものにしたかったのもあるし、私が望んだセッティングだからそれはいいの。アルバム参加の話題だろうから、じゃあ一番、たくさんお話をした翔太郎くんが良いなと思って」
S「歌ってくれるって話はどこから?」
U「私」
-- そうでしたか(笑)。
S「へー、大丈夫なの?こんな直前に喉使って」
U「本当はダメだけど、日本を離れる前に聞いて欲しいなって、なんでか急に思ってしまったの」
S「なんで俺達なの?」
U「少しは考えろ!」
S「なんだよいきなり(笑)」
-- ファンを前にしたステージではなく、彼ら4人を前に歌を届けたいという所に、URGAさんという人の個人的な思いがあるように感じられます。
U「さっき翔太郎君が言った話に似てるかな。私にないもの、私が敢えて避けてきたもの、そういう世界をあなた達を通して見た経験が、一時私を物凄く不安にさせたの。これまで私が届けようとしてきた思いや言葉は、本当に人々に必要とされているか。チープで独りよがりの綺麗事なんじゃないかって。あの日からも私は色んな場所で、色んな人達の前で歌ってきた。歌って、歌って、語り掛けるように歌ううちに、ああ、間違いなんてないんだなってようやく思えるようになったの。万人受けを目指しているわけじゃないって、独立を決めた当の昔に覚悟を決めたはずだったのに、気が付けば誰かに『喜ばれよう』とする思いが背伸びをしていたんだと気がついたの。自信を失うっていうと、それはまた違うんだけど、私は私で良いんだ、っていうの感じて改めて奮い立たせてくれたこの1年を経て、あなた達に感謝の気持ちを込めて、歌いたいなって思ったの。それがまた私の中で一本の太い柱になって、これから向かうツアーでの心の支えになってくれると思うから」
S「そうなんだ。それは嬉しいね。…うん、嬉しい話を聞いたな」
U「だから今日は届けたい思いよりも、私が聞いて欲しい歌を歌うの」
S「いいね、楽しみだ」
U「じゃあ、そろそろ準備始めても良いかな?」
-- はい。お忙しい中、たくさんお話が聞けて嬉しかったです。ありがとうございました。
U「こちらこそ。幸せな時間でした」
S「ありがとう」
U「ありがとう。またね」
-- ありがとうございました。
伊澄翔太郎(S)×URGA(U)、対談。
スタジオ内、応接セットのソファーに腰かける2人。
2人の間には、優にあと2人が座れる程の距離が開いている。
画面右側の伊澄は、いつものように背もたれに体を預け、俯いている。
不機嫌ではないが、笑ってもいない。
対する左側のURGAは、背すじを伸ばして座ったまま、ずっと伊澄を見つめている。
口元には微笑みが浮かび、瞳はキラキラと輝いている。まるで恋する乙女のようだ。
-- 画面を通してこちらまでフワフワ感が届いて来るようです。そしてスタジオ内とてもいい匂いがします。本日は、我らが超絶ギタリスト・伊澄翔太郎さんと、世界を包む温もりブランケットボイス・URGAさんにお越しいただいて、お二方の対談を収録させて頂きます。…えー、もうカメラ回ってます。…よろしくお願いします。
S「…」
U「…」
-- よろしくお願いします。
笑顔のままこちらを振り向き、URGAが「お願いします」と頭を下げた瞬間、伊澄が煙草に火をつけた。
U「やめろー!ボーカリストだぞー!」
相変わらず声量たっぷりに、愛嬌のある声でURGAが言うと、本気で慌てた様子の伊澄が煙草を揉み消した。彼ほどの人が緊張している姿などそうそうお目にかかれない。
-- まずは今回、弊誌掲載を許可してくださった事を、改めてURGAさんに感謝したいと思います。ありがとうございます。こんな日が本当に来るは思ってもみませんでした。まさかお二人のやりとりを生で拝見できるとは。
U「いえいえ、掲載許可とか、そんな大げさな話じゃないですよ。単純に、ジャンルの違いからくる違和感があるだけです」
S「っは、トゲあるわー(笑)」
U「なんだと!?」
S「許しはしたけど納得はしてねえ、みたいに聞こえなかった?」
-- 私に振るのはやめてください。そんな事全然気にしません。
U「トゲなんかないよー!」
-- 嘘です、全然なにも感じませんよ。お二人の仲の良さが見れて幸せだなーと思うだけです。
U「えへへー、そうなのー、実は仲良しなのよー」
カメラ目線でワザとらしくアピールするURGAに、伊澄が苦笑いを浮かべる。
-- そもそも、お二人の関係はどこから始まったのでしょうか。
U「馴れ初め?」
-- ああ、はい。
U「私が話す?それとも、あなたから言う?」
S「最後までそのキャラで行くの?」
U「そのつもりだけど」
-- 昨年のアルバム参加がきっかけですか?
S「実際に初めて会ったのはそう」
U「私がもともと、オリーと仲良しだったの」
-- 伊藤織江さんですね、『バイラル4』代表の。
U「そうそう、オリーと大成くんがよく私のステージを見に来てくれてたの。それでね、うちのスタッフに彼らのファンがいて、『今日、お見えになってます』って、聞いてもいないのにわざわざ教えてくれるの」
S「っははは!トゲが!」
U「誰が?ってなって、最初は。そしたらさ、『あの、ドーンハンマーのベースです』って言われて、どこー?って袖からチラ見したら、まあ男前と美女のカップルじゃない? すぐに、楽屋へ来てもらって。でもね、最初は大成くんが一人で来たの。あれ、彼女はって聞いたら『会社の人間としてお会い出来る格好をして来なかったので、本人が辞退しました』なんて言うのね。でもそんなの当たり前じゃない、お休みの日にコンサートへ遊びに来てくれてるわけだから。私それ聞いて、凄いちゃんとした人だなーって思ったんだけど、同時にこれは出会いなのかもしれないなと直感して。是非お会いしたいですと私の方からお誘いして。そこから仕事の話をちょこちょこするようになったのかな。オリーも海外詳しいし、本当に気の合う、素敵な人」
-- そうでしたか。もともと、ドーンハンマーというバンドはご存知で。
U「もちろん」
-- どういう印象をお持ちでしたか?
U「ちゃんと聞くまでは『うーん、何かルックスが怖いなー』っていう感じ」
S「(笑)」
U「…全員ね」
S「あははは!」
U「音楽性の違いやなんかで改めて聞くまではよく分かっていない所もあったけれど、そもそもバンドよりも彼がそっちの世界では有名人だから、お名前だけは以前から知っていました」
-- 伊澄さんですか? そっちの世界といいますと、ギタリスト界のような事でしょうか。
U「そう。ご一緒する事の多いミュージシャンや、よくセッションするギタリストの方達の間ではある種基準になってるみたいです。とにかく上手いと。テクニック関連の話になると必ずと言っていい程名前が上がるもの。伊澄以上か伊澄以下か、みたいな」
-- ジャンル違いの世界にも名前が知れ渡っているわけですね。となるともしかして初めは、ドーンハンマー=伊澄翔太郎とは思っていらっしゃらなかったとか?
S「興味ないもんね」
U「え?今はあるよ?それまでは、うん、確かにそこまでクリアに思い描けていなかったかもしれない。いや、知ってはいたんだけどね」
S「フォローされてる(笑)」
U「違うよ」
-- 面白い出会いですね。伊澄さんは、URGAさんをご存知でしたか?
S「もちろん。織江もだけど、繭子も好きだし、多分アルバム全部うちにあると思う。なんならスタジオのどこかにもあると思う」
歓びに頬を紅潮させて、URGAは伊澄にピースサインを送る。伊澄に促されて、カメラにそのピースを向けた。
-- 休憩中、スタジオでは爆音で流れていたりしますよね(笑)。
U「へー!」
-- 伊澄さんご自身から見た、URGAさんの印象というのは。
S「んー」
この日初めて、伊澄はまともにURGAを見つめた。こういう時の彼は真剣で、ウソも冗談も言わない。対してURGAは両手で髪をとかす仕草をし、どこまでもユーモアスタイルを崩さない。
S「やっぱり、今一番凄い人なんじゃいかな。シンガーソングライターの世界では、一番だと思う」
U「はあああっ」
余りにもストレートな伊澄の物言いに、さすがのURGAも照れて顔を手で覆った。
U「嬉し過ぎる!来て良かった!」
-- 大絶賛ですね。
S「うん、大絶賛で良いと思う。歌声も、作詞も、作曲も、アレンジも、…まあアレンジは人によって好き嫌いあると思うけど、それでもちょっと才能ありすぎるよこの人。今の世代でこの人以上の歌うたいは出て来れないと思うよ。ちょっとでも似た感じでやれば、全部フォロアー扱いされちゃうと思う。そんくらいスペシャル」
U「うわあああー!もう帰る!このまま気持ちよく帰る!」
-- だめです!
U「帰る!」
-- ですが、このあとスタジオで歌を披露して下さると聞いていますよ?
U「…そうでした」
S「え、そうなの?」
U「え、駄目なの?」
S「どういうことだよ(笑)。ウチでなんかPVでも撮るの?」
-- 私は今回カメラだけ置かせていただいて、その場にはいませんので詳しくは分かりません。バンド側からの依頼だとは聞いていますが。
U「別にいてもいいよ。URGAさんは仲間外れなんてしません」
-- ありがとうございます(笑)。ですがそういう事ではなくて、きちんと織江さんと相談した上で私が自分から辞退しとなので。
U「聞きたくないのー?」
-- めちゃくちゃ聞きたいですよそりゃ。ただ今回は別です。ドーンハンマー4人の為に歌を届けに来たあなたの側に、当事者以外がいるべきではないと判断しただけです。
U「…て事はもしかして、オリーもいないの?」
-- そう聞いています。
S「へえ~。でもなんか、嫌だな」
U「なんだと!?」
S「いや、楽しみは楽しみだけどな。去年ここで聞いて以来だし」
U「でしょ?というかさー、約束どうなったのよ。コンサート見に来てよ」
S「行くよ、行くから」
-- 去年ここで、というのは、歌のテイクも録られたんですか? ピアノ演奏だけではなくて。
U「歌って言うか、コーラスだけね。あ、聞いてー!そのコーラス使わないでやんのー!」
-- ですよね、聞いた覚えがないです。
S「だって依頼してないから。勝手にブース入って勝手にレコーディングしたんだぜ、笑うだろ。うちの連中もそういう遊び好きだからノリノリになっちゃって」
-- そんな言い方!ですがとても面白い方なんですね、URGAさんて。
U「ありがとう、2番目に嬉しい褒め言葉だね」
-- 1番はなんですか?
U「素晴らしい歌声だね」
-- 先程伊澄さんから頂きましたね。
U「そ。もうね、ちょっと本気で嬉しいの、今。カメラ回ってなかったら泣いちゃうくらいの」
-- 意外ですね。URGAさんクラスだと、何百回何千回と言われている気がします。
U「何万回と。だけど…うーん」
-- 違いましたか。
U「ちょっと真面目な話をしちゃうけどさ、私にとって歌っていうのは届けたい気持ちのこもったメッセージなの。それは相手が誰か特定の人な時もあるし、自分自身へ向けた歌でもあるし、あるいはその時々に、色々感じながら生きている人達に寄り添えるような言葉でありたいと思いながら、歌っているのね」
-- はい。
U「そこで言う歌の上手さっていうのはさ、そのメッセージを届けるためのプロセスって言うと変だけど、ツールに近いというか。誰かの胸に届ける為の、方法だと思っていて」
-- つまり、歌が上手いことが全てではない。そこがゴールじゃないと。
U「そう。と同時に、歌声って私の全てでもあるの。声が大きいとか、音域が広いねとか、可愛いねとか、あ、言ってないか(笑)。そういうもの全部ひっくるめた『歌声=私』だと思っていて。自分で書いた『思い』や『心』を乗せて、全力で届ける私の歌声を好きだと言ってくれる人は、私自身を好きだと言ってくれる事と同じだし、肯定してもらえるという事だから、単純に、回数の問題ではなくそこは慣れない。そりゃあ、嬉しいよ」
-- はい。
U「もちろん、ずっと私を支えてくれるファンの人達からの言葉もそうだし、感謝しているし、励みになる。だけどその事と、今翔太郎くんから言われた言葉っていうのは、分かりにくいけど、私には違った意味になるの」
-- と仰いますと。
U「相思相愛?」
S「恥ずかしいから本当にやめてくれないかな」
U「照れるなよー」
-- ええーっとー、真面目な話だと思って聞いていたのですが。
U「真面目だよー?真面目だよね」
-- 伊澄さんも、相思相愛ということでよろしいですか(笑)。
S「間違いではないよ」
U「いいいーよし!帰るぞ!絶対帰る!」
ガッツポーズと共に立ち上がるURGAを笑顔で見やりながら、伊澄は続ける。
S「この人ずっとこんな調子だから誤解すると思うけど、話はもっと単純で、同業者同志、認め合ったもん同志だからこそ嬉しいっていうただそれだけだよ」
-- なんとなく分かってました。
U「えええ!」
S「たまたまだけど、ついこないだ竜二と話してて意見が合ったのがさ。俺達とURGAさんがいれば、人間の感情全部カバーできるんじゃないかって」
U「取り乱しました」
そう言ってURGAは最初の位置より少しだけ伊澄に近い距離に座り、話の続きを促した。
S「怒りとか、衝動とか、本能とか、前へ走り続ける為の原動力とか。喜びとか悲しみとか、許しとか、あと勇気、愛情。全部俺らとURGAさんで、表現してきた。だけど何が違うって、お互いが出来ない事を相手はやってるってことなんだよ。竜二にはきっと愛情の歌は歌えないし、彼女に純粋な怒りや暴力の歌は歌えない。決して手を伸ばそうともしない触れられない世界を、お互いにない音と世界観を持って表現してるなって、そう思う」
U「そうだね。確かに、私には見えていなかった世界が翔太郎くん達にはっきりと見えた。初めて4人が演奏しているのを見た時、心の通じ合った人間同士の一体感に嫉妬したし、圧倒された。感動もした。私にだって、彼らと同じ感情はある。だけど私には表現出来ないって思って、なんか泣けたんだよね。自分なりの方法で、人の営みや想いを届けてきたつもりでいたけど、ああ、こういう人達がいるなら、この分野ではもう私に出番はないな、くらい思ってしまった。そして何よりもびっくりしたのが、彼らの演奏技術の高さと、自分達に対する絶対の自信。こんな人達が今までどこにいたんだーってなったよ(笑)」
-- なるほど。全く表現方法の違うお二人が何故ここまで惹かれ合っているのか、分かった気がします。URGAさんも、これまでたくさんの名プレイヤーと共演されてきましたし、それこそ海外で向こうのアーティストとも同じ舞台を幾度も経験されていらっしゃいますが、そんなURGAさんから見て、デスラッシュメタルバンドのギタリストである伊澄さんは、どのように映るのでしょうか。
U「ううーん。ひとまずジャンルの話は置いとこうかな。そこを抜きにして、ギタリストとしてだけ見たら、間違いなく出会った中で1番上手い人。いっちばん上手い。評判に偽りなしだった。ギター音痴の私が言うと説得力ないかもしれないけど、上手いってこういう人の事だなって思い知った。うん、あのー、こんな言い方をすると傲慢と取られかねないけど、私ボーカリストなので、とにかく楽器演奏の上手い人ってめっちゃくちゃ助かるの、一緒にプレイする時に。まあ、ピアノでもなんでもそうだけど、とにかくミスをしない、ズレない、ぶれない人ってたまーにいるんだけど、本当に喉から手が出る程欲しい。翔太郎くん、あなたが欲しいよ」
S「酒飲んできた?」
U「ちょっとだけね」
S「あははは!」
U「でも、舐める程度だよ」
-- 本当ですか?
U「え、ダメだった?」
-- 一応カメラ回ってますけど、外に出て大丈夫な話ですか?
U「大丈夫、私好きになった人には大体おんなじ事言うから」
-- あははは、まあ、お酒の話も含めて。
U「ダメかなぁ? んー、どっちでもいいや。そうそう、去年スタジオにお邪魔した時も、ちょっとだけどアコギで弾いてくれたの。私の曲を」
-- ええー!凄いじゃないですか。
U「うん、まあサービスしてくれたんだろうなとは思ったけど、本当にびっくりするくらい上手いってのが分かるのよ、自分の曲だと。即興で初めて弾いたっていうのが、今でも嘘なんじゃないかって思うくらい。テクニックもそうだけど、曲のもつ顔とか、聞かせたい部分とか、そういうのを捉える力が抜群だなと思った。私が書いたメロディーを、ちゃんと理解している人が弾くギターの音だったの。あ、こういう人本当にいるんだって感動した。久しぶりに心が震えた気がする」
S「よおおし、じゃあ、俺も帰ろうかな」
-- っははは、本当に仲良しですね。
S「気持ち悪いよな、ただ褒め合ってるだけの対談なんか」
-- そんなことないですよ。
U「私が思う翔太郎くんの一番の魅力はそこかな」
-- テクニックうんぬんではなくて。
U「うん。プロである以上もちろんそれも大事なんだけどね、それ以上に心があったよ。心を乗せて弾ける人だね。まずそれがあって、あのプレイだから凄いんだと思うよ。私にとってはただの巧い人っていうだけじゃない魅力があるかな」
-- 伊澄さんを引き抜いて、2人でツアーに出たいんだという話を人伝に聞いたのですが、今もその気持ちに変わりはありませんか?
U「うん、変わらない。多分その話を最初にしてから一年以上経ってるけど、変わらない。引き抜くって言うとバンドやめろーみたいに聞こえるけど、ただ一緒に色んなステージをやってみたいっていう事だよ。誤解されたくないのが、私がこれまで共演してきたギタリストの方達に問題があるとか嫌だという事ではなくて、ポジティブな意見として、新しい世界が待っていると思うから。ただ私に合せて変幻自在に音を紡ぎ出せるだけじゃなくて、彼の持つ呼吸や間や音色が、私のそれと重なって今までと違った音像になると確信してる。なんなら、私の歌を彼に合わせてみたいとすら感じる。そのくらい、ギター一本で、私にない自分の世界を音に出来る人だと思う」
-- 音源としては残っていますが、ライブでアコギを引く伊澄さんはまだ見た事がないので、なんだか私までわくわくしてきます。
U「うん、私もそう。だから一刻もはやく計画を立てねば」
S「あ、もうやる前提なんだな」
-- 伊澄さんにとっても、これはかなり嬉しいラブコールじゃないですか?
S「そうだよな。なんというか、その、なかなか適切な言葉が出てこないんだけど、おそらくURGAさんだけだと思うんだよ今まで。一緒にやっても良いな、やりたいかもな、って思える人って。メンバーが聞いたらぶっ飛ぶかもしれないから真面目に話をすると、さっき言った竜二との話にも関連する所があって。おそらく今一番自分のやりたい事ってさ、もうすでに俺はやってるんだよ。このバンドでギターを弾くことが俺の全てだし、俺の持っている物を全部そこに費やして終わりたい。何か新しい事やインスピレーションが沸いて降って来たとしても、それを全部このバンドで表現し尽くしたい。だけど、本当に、全くURGAさんと同じ気持ちもあるんだよ。この人の歌を生で聞いた時に受けた感動のおかげで、俺にはどう頑張っても作れない世界があるんだなって事に気づいてしまったというか。今この道を全力で駆け抜けたとしてもその先に辿り着けない世界が、彼女にはあるから。そこをもし一緒に見てもいいよって許されるなら、見てみたい気もある。心がぶるぶる震えるくらい感動できる音楽をさ、もし自分が作り出せるんだとこの人に言って貰えるなら、チャレンジしたい気持ちも、ギタリストとしてはあるよ」
U「ありがとう。すごく、嬉しいよ」
S「ただ、今んとこまだそこへは行けないかな」
U「そんな話し方だったね」
S「うん、ちゃんと行きたい場所へ行ってから、そこから見る景色に満足出来たら、そしてその時までURGAさんの気持ちが変わらなかったら、そういう事もありえるかもしれない」
-- 伊澄さんの計画では2年で世界と獲るという事なので、そう遠くない未来に実現できそうですね。
S「なんで。世界獲ったら防衛しなきゃ。君臨し続けなきゃ嘘だろ」
-- なるほど。そこからまた先にも、バンドの未来はあるわけですね。ホッとしたような、残念なような。
U「私がもっともっと頑張って、お願いです一緒にやらせてくださいって言われるくらい頑張らなきゃいけないね」
S「そうなったらなったで、もう俺のことなんか忘れてるかもしれないな」
U「そうだねー」
S「(笑)」
-- 少し話が戻りますが、ドーンハンマーのアルバムに参加する話を聞いた時、どのように思われましたか?
U「嬉しかったですよ。どちらかと言うと、同じ事を繰り返す作業が苦手な方なので、彼らみたいな才能ある人と何か新しい仕事が出来るというのは、私にとっても素敵な事なので」
-- 伊澄さん達は、同じ作業を繰り返す達人にも見えますが、何故ここへ来て、バンド外の音を入れてみようと思い立ったのですか?
S「おーお、語弊があるな。同じ作業を繰り返したことなんか一度もないよ。それは多分スタジオ練習の話なんだろうけど、それにしたって同じ事をやってる意識は全くない。一分一秒前を振り切るつもりで、演奏してるんだから」
-- 確かに、言われてみればその通りですね。その為の練習ですものね。
S「そう。アルバム制作にしたって、竜二の歌一つとったって、同じ顔した曲なんてないし、同じに聞こえるとしたらそれはきっと統一感を出すために意識的にやってる。今回は、というか前回なのかな、『P.O.N.R』作る時にたまたまキーボードかピアノかどちらかの音が欲しかったんだよ」
U「誰発信だったの?」
S「俺」
U「そーなんだー!」
S「知らなかった?」
U「連絡を貰ったのはオリーからだし、音関係の話だからきっと大成くんだろうなって思ってた」
S「ああ、確かに。ただあいつらの中でURGAさんて音よりも声で想像する人だから、最初は違和感あったみたいよ。なんで?って普通に首捻ってたし」
U「うんうん」
-- URGAさんのアルバムに収録されているピアノの音は全て、ご自身演奏のものだそうですが、伊澄さんはご存知だったんですね。
S「へー、知らないね。そうなんだ。なんで?」
U「知らないんだ!全部というか、独立して個人事務所立ち上げてプライベートスタジオを建設してからだから、まだここ5、6年だよ。単純に人件費の事もあるし、やっぱり自分の世界観や欲しい音の数や表情って自分が一番分かってるからかな。あまりにも複雑な譜面は、私はピアノでは作らないから、それ以外のシンプルでメッセージ性の高い歌重視の曲は、自分で弾いた音を聴きながら歌う方が、良いものが出来る印象があるかな。もちろん演奏の上手い下手で言ったら、もっと上手いピアニストは一杯いるし、実際ステージだと参加してもらう事の方が多いんだけどね」
-- 弾き語りのイメージも強くあります。
U「たまにそういうイベントをやったりするからかな。私極端なの。色んな楽器の音や私の声を一杯重ねて音像を構築するのも好きだし、全部取っ払ってピアノと歌だけっていうのも好きなの」
S「俺はどっちかっていうとそっちの、多重録音の人っていうイメージがあるかな。頭の中どうなってんだろうなっていつも思う」
U「ああ、そう言って貰えるのは嬉しいなぁ。ただね、疲れるよ、実際作り込んでステージで表現するのは」
S「そうだろうね。俺が一人で複雑な弾き方するのは全然平気だけど、音の種類を増やして合体させる作業は本当に神経擦り減らすから」
U「まさに!もうこの話も翔太郎くんと何度もしたけど、ココ!っていうポイントで音が一つポロンって鳴るか鳴らないかっていうだけで何日も悩んだりするもんね。だから本当に上手い人とやりたい願望は皆常にあるんだよ」
S「確かにあんたは極端だよ(笑)」
U「悪口は許さないぞ」
-- あははは!
S「(笑)、そこはでも、ストレス軽減できると思うけどね、プライベートスタジオがあると」
U「うーん。好きな時間に、それが夜中でも思い付きで音を録れたり残せたり、試せたり、それはそうなんだけど、最後まで宅録レベルで完成させられる曲は、そう多くはないからなぁ」
S「そりゃそうだけど、なんだこの下手くそはって思わなくて済むし」
U「下手くそ!?誰に?」
S「一緒にやってるスタジオミュージシャンとか」
U「ちょっと!下手な人となんてやってません。ちょっとー、この人怖いかも」
-- そうですよ、超怖い御人です。
S「真面目な話、それでも自己完結しようと思えば出来るじゃない」
U「まあ、そういう曲も最近ちょこちょこ作ってはいるかな」
S「誰かと相談しなくていい。自分の気持ちを100%反映した曲が作れるって、俺達もそうだけど、恵まれてると思うよ」
U「うんうん、言えてる。ねえ、翔太郎くん達ってどこまでデモを作り込んでるの?」
S「どういう意味?」
U「というかどうやって作曲のイメージを伝えあってるの?」
S「ああ。俺と大成しか曲書かないから、とりあえず弾いて聞かせるよ」
U「生音?生演奏ってこと?」
S「うん。曲のイメージを伝えるっていう言い方の段階だと、そうかな。音を録るのは取り敢えず各パートで仮音が出来た後」
U「いやいや、その仮の音は皆どうやって作ってるの?」
伊澄はよく理解が出来ないという顔で私を見やる。
え?変な事言ってる?という顔でURGAも私を見る。
-- おそらくですが、URGAさんが仰りたいのは、翔太郎さんが作った曲をメンバーに伝える際、もしくは伝えた後に、各楽器が肉付けしていく過程で聞く音源はどうなってるの?という事だと思います。所謂仮音の事ですよね。
U「そうだよ。まさか一回聞かせただけで、さあ、覚えただろう、あとは勝手に作ってこい、ってやってるわけじゃないでしょう?」
S「そうだけど?」
弾かれたようにURGAが私を見る。
無理もない。そんな効率の悪い作業が存在するとは夢にも思うまい。
U「え、ちょっと待ってよ。なんで?なんでそんなにトップシークレットなの?ハリウッド映画の台本じゃないんだからさぁ」
S「その例えはよく分からないけど、別に一回しか聞かせないわけじゃないぞ? それに俺の方も最後まで出来てるとは限らないし、メインリフとAメロとサビくらいを何度か聞かせて、その場でセッションして、全員で取り敢えず最後まであーだこーだ言いながら作って、それを譜面に起こす。録れたら録る。そこから色々変えていくやり方が一番早いし。逆に他の人どうやってんの?」
U「人に聞かせる段階で仮音源を作ってると思うよ。だって大成くんベースだよ?彼の作った曲もスタジオで生演奏なの?」
S「あはは、あいつだってギター弾けるよ」
U「えー!そういう話? 嘘でしょー?本当にそうやって曲作ってるの?それともヘヴィメタルの人皆そうなの?」
-- ここまで極端な話は私もちょっと聞いた事ないですね。ただそれだと、確かにドーンハンマーの曲作りの早さの理由が分かります。海外だとあり得ないですけどね。メンバーが同じ国にいないバンドだってありますから。しかしその方法だと、全員でほぼ一日で作ってるように聞こえます。
S「もちろん完成はしないけど、譜面書く程度なら丸一日あれば仕上げるよ、皆」
U「えー…」
S「え、何がそんなにおかしいんだよ、全然わからない」
U「もしそれが全部本当なら、皆異常に記憶力が良くて、異常な速さで音を構築できる才能に満ち溢れているって事になるんだけど」
S「なんでだよ!誰だってセッションくらい出来るだろ?」
U「誰だって出来るわけじゃないよ」
S「いやいや、出来るって。要はゴールが全然違うって話。まだその段階だと、こういう感じの曲をやるぞーっていう程度だし、製品として出せるわけじゃないよ。そこからさらに何度も繰り返して練習するうち、皆それぞれマイナーチェンジをしながら仕上げていくわけ」
U「それ、いつ完成するの?」
S「しないよ」
U「あははは、ますます分かんない」
S「アルバムに収録した曲が完成だって誰が決めるんだ?」
U「…え?」
S「俺の場合は、というか俺達の場合は基本的に4人で出せない音は要らない考えなんだけど、そういう拘りと、単純に格好良い曲を作りたい拘りって必ずしもゴールが同じじゃないわけだ」
U「それは、そうだろうねぇ」
S「そもそも大成以外は皆音楽的な知識や才能がないから、拘りはあっても具体的にどうしたらいいか分からないんだよ。だからまず伝える所からが大変だってのは、それは認めるよ」
U「才能ないわけないじゃん!」
S「いやいや。演奏とは別の話だから。そもそも考えて理解して作るとかほぼ無理だもん。やってるうちに格好良い方を選んで作り変えていくやり方しか出来ないし」
U「出来ないってことはないでしょう(笑)」
S「いやいや」
U「あっれー?(笑)」
S「あーんと、…そうだなー。これは勝手に俺が思ってるんだけど、URGAさんて音源を作るのとライブ、どっちが好きって言うと半々くらいなんじゃない?」
U「い、いきなりだな。まあ、そうかもしれない。どっちが好きかって言われると、迷うな。どっちも好きだし、どっちかの為だけに歌っているっていうわけでもないしね」
S「でも俺らは圧倒的にライブなわけだよ。正直アルバムなんて、出来た曲を一発録りして鮮度バリバリの真空パックで発送して終わりにしたいくらいだから」
U「分かり易い例えだなー」
-- ただその『出来た曲を一発録り』っていう言い方では想像が追い付かない程、彼らの楽曲は完成度が高すぎるという事実も付け加えさせてください。でないと話が食い違ってきます。
U「そうだよねえ。あれだけ音や演奏にこだわりを持ってる人達が、そんなラフな曲作りしてるわけないもんね」
S「全然ラフに作ってるわけではないしそんな事言ってないよ。俺達の曲は、格好良いかどうか、演ってて気持ち良いかどうかが基準だから、スタジオでその日出来た曲が完成だとは本気で思ってないって話。アルバムに収録された時点が完成じゃなくて、ライブで演奏して、練習で演奏して、どんどん研ぎ澄まされていくことでしか完成しないって、極端な話そんくらい思ってるからね。だからこそ、ステージ上で4人で出せない音はいらないって思ってるんだけど、URGAさんのステージを見る限り作り込みや構築の出来上り具合が半端じゃないレベルなんだよ。それこそ俺らみたいに一回作った上で、やっぱここをこう変えて演奏してみようかっていう思い付きが通用しないくらいに」
U「それは、…そうだね。そうかも。アレンジ変えたり、それこそバージョン違いを作ることもあるけど、いきなりスタジオで昨日までと違う演奏始めたらパニックになるよ。ただ単に私が欲張りなのもあるけど、じっくり、ちゃんと考えて、照明や風や演出や音の反響や構成を皆で話あって、最高のステージを作り上げたいっていう努力を積み重ねて、毎回楽しみながらやるのが好き出し、お客さんのびっくりする顔や喜ぶ顔を想像しながら曲を作り込む事に喜びを感じている所はあるね。そこからさらに、当日のお客さんの反応を見ながら、自分の出す波動との波のような押し引きで毎回違ったステージにするんだっていう、翔太郎君で言う所の一発録り感も、大事にしたい思いも強い。だから、一つのステージを作り上げてから実際にやり終えた後、物凄く疲れる。精神的にも。だから私は年間何十本も各地でツアー回る事は出来ないかな。全部出し切ってしまうから、充電期間が必要だもん」
S「それはステージを見てると分かるよ。頭と、心と、体を全部使って表現してるんだなって。回りくどくなったけど、そこで白羽の矢を立てたのがピアノとかキーボードっていう『音』じゃなくて、URGAさん自身だったんだよ。ピアノの技術とかどうこうよりも、音を組み立てる事の出来る人が欲しくて、俺の知ってる限りだと相当高いレベルでそれを出来るのが彼女しかいなかったんだ」
声には出さないが、ふわ~~と言う顔でURGAは私を見た。
U「この人絶対女の人にモテるタイプだと思わない?」
-- 思います。
S「はあ?」
-- ただアルバムに収録されているのは2曲で、しかもイントロとアウトロのみですが、そこまで欲していたなら逆に何故だろうと思えるのですが。
S「そこは本当に申し訳ない。こちらの準備不足」
U「いや、私も実はそこまでガッツリとは考えてなかったの、正直な事を言うと。オリーから話貰った時も、ちょっと遊び感覚で参加しませんかっていう誘われ方だったし、時期的に色々煮詰まってトゲトゲ、クヨクヨしてる時だったから、気分転換出来て刺激にもなるだろうなーっていう割とヘラヘラした感覚で行ったら、全然違った。魂の削り合いみたいな現場だった」
-- 曲の問題ですか、音響整備とか楽器とか、環境の問題ですか。
U「曲」
S「曲、曲。ほぼ出来上がりかけてたんだよ、URGAさんが参加するって決まった時点で。さっきも言ったみたいに、本来なら俺ら4人で完成させるべきものだし、ライブで出せない音を収録するのは嫌だったから、そのまま仕上げてもなんらおかしくはないはずだったんだけど。どっかでやっぱり納得いかねえってなって。音への拘りと、楽曲への拘りがぶつかったというか。もっと格好良い事出来るだろ。出来るよなって話に持って行き始めてからの、URGAさんっていう流れだから、もう後付け作業とかアレンジ変更ぐらいしか方法がなかったんだよ。自分達で好き勝手にいじるんじゃなくて、全く違う楽器を持ち込むわけだから」
-- なるほど!納得です。
U「私はそれでも全然楽しかった。いい経験出来たよ。初めてだもん、出来上がってる曲に頭とお尻を付けてくれないかーなんて。でも私も発見だった。ああ、こういう作業好きかも、得意かもって」
S「そう言ってもらえると助かるよ」
U「良い出会いに恵まれたと感謝したくらいだし」
-- 物足りなくはなかったですか。
U「仕事内容としてはそうかもしれないけど、それでも苦労はしたから、朝飯前では全然なかったかな。彼らのやろうとしている事を分かり始めた頃に、今度は私のスケジュールがキツクなってきたから、正直大満足でやり残しなし!とまで胸を張れないのが心苦しいんだけどね」
-- お二人の間では何度かバトルがあったとも聞いています。短い期間で、濃厚なやりとりを経験された上で、生み出された楽曲なんですね。
U「バトル?喧嘩?してないよ」
S「ああ、喧嘩はしてないけど、お互い絶対に引かな部分で言い合いは何度もしたな」
U「でもそれは絶対に必要な事だったよね」
S「うん。この人に声掛けて正解だったと思いながら、こめかみに青筋立ててたし」
-- 具体的にはどのような話だったんですか?
S「言葉にするには難しいな。俺は俺の『格好良い』を目指して、こうしてくれっていう依頼を出す。URGAさんはURGAさんで、違う格好良さを提案してくる」
U「私が、私の中から出て来るものを残せないならここにいる意味はないよ、って」
-- うわ、鳥肌が駆け上がりました。いかにお互いが真剣だったか、今見えた気がします。結局、どちらの意見が尊重されたんですか?
S「そりゃあバンドの曲だからね。全員で納得出来る音で、という感じかな」
U「どちら寄りの、という選択はなかったよね」
S「面白かったのがさ、この人インスピレーションが全部歌なの」
-- どういう事でしょう。
S「例えば俺が、このタイミングで入って来てほしいんだけど、どの音が良いと思うか相談するだろ。するとキーボード弾かないで、歌い始めるんだよ、色んな音階で、すっげー迫力なの、それが」
U「だって一番返事しやすいんだもの」
そう言うとURGAは、その時の様子を再現するかのように圧倒的音量でソプラノボイスを響かせた。右手を上下に上げ下げしながら音階を行ったり来たり。
S「あはは、やっぱ生で聞くと凄いね。これやってからキーボード弾くんだよ、面白いだろ?」
U「普通だよ!翔太郎君の方がよっぽど面白いって」
S「あ、それが良い!っていうのを2人で話あって、譜面にしていくと」
-- 確かに、曲が始まった時に感じた『ここから来るんだろ、来るんだろ』っていう期待とか嬉しい予感と、これまでのドーンハンマーとは違った音階に不思議なドキドキを感じたのを覚えています。
S「今までの俺達にはない浮遊感から爆走への繋がりが、単音じゃないからこそ活きるというかね」
-- そうですね。これまでは「PITCHWAVE」のようなギターリフによるスロー展開からの転調が主体でしたが、URGAさんのパートはそこだけでも既に独立した世界がありましたね。最初はインストだと思ったくらいですから。見た事のない新しいドアが開いて、そこからドーンハンマーが飛び出してくるようなイメージがあります。
U「本当に好きなんだねぇ、彼らの事」
-- はい。涙が出て仕方ないくらい好きです。
U「いやー良いなあ、キュンとする」
-- ははは、お恥ずかしい。
U「やっぱりこの後聞いていきなよー」
-- ありがとうございます。嬉しいです。ですが、決めたことなので。これは私の趣味や遊びではなく、私自身がきちんと誠意をもって全うしたい仕事ですから。
S「言うじゃないか。いいねえ、それでこそだ」
U「そこまで言われちゃうとね、あとで後悔するなよ!」
-- あはは、後悔は絶対するんですけどね、どっちに転んでも。今日この後ここで歌を披露された後、間もなくURGAさんはツアーに出られますね。ヨーロッパツアーです。
U「そうなの。今回は久しぶりでちょっと長いので、今から体調を整えないといけないんだけどね」
-- お忙しい中ありがとうございます。
U「どうせ彼らの事で話をするなら、翔太郎君を交えてオフィシャルなものにしたかったのもあるし、私が望んだセッティングだからそれはいいの。アルバム参加の話題だろうから、じゃあ一番、たくさんお話をした翔太郎くんが良いなと思って」
S「歌ってくれるって話はどこから?」
U「私」
-- そうでしたか(笑)。
S「へー、大丈夫なの?こんな直前に喉使って」
U「本当はダメだけど、日本を離れる前に聞いて欲しいなって、なんでか急に思ってしまったの」
S「なんで俺達なの?」
U「少しは考えろ!」
S「なんだよいきなり(笑)」
-- ファンを前にしたステージではなく、彼ら4人を前に歌を届けたいという所に、URGAさんという人の個人的な思いがあるように感じられます。
U「さっき翔太郎君が言った話に似てるかな。私にないもの、私が敢えて避けてきたもの、そういう世界をあなた達を通して見た経験が、一時私を物凄く不安にさせたの。これまで私が届けようとしてきた思いや言葉は、本当に人々に必要とされているか。チープで独りよがりの綺麗事なんじゃないかって。あの日からも私は色んな場所で、色んな人達の前で歌ってきた。歌って、歌って、語り掛けるように歌ううちに、ああ、間違いなんてないんだなってようやく思えるようになったの。万人受けを目指しているわけじゃないって、独立を決めた当の昔に覚悟を決めたはずだったのに、気が付けば誰かに『喜ばれよう』とする思いが背伸びをしていたんだと気がついたの。自信を失うっていうと、それはまた違うんだけど、私は私で良いんだ、っていうの感じて改めて奮い立たせてくれたこの1年を経て、あなた達に感謝の気持ちを込めて、歌いたいなって思ったの。それがまた私の中で一本の太い柱になって、これから向かうツアーでの心の支えになってくれると思うから」
S「そうなんだ。それは嬉しいね。…うん、嬉しい話を聞いたな」
U「だから今日は届けたい思いよりも、私が聞いて欲しい歌を歌うの」
S「いいね、楽しみだ」
U「じゃあ、そろそろ準備始めても良いかな?」
-- はい。お忙しい中、たくさんお話が聞けて嬉しかったです。ありがとうございました。
U「こちらこそ。幸せな時間でした」
S「ありがとう」
U「ありがとう。またね」
-- ありがとうございました。
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