世迷ビト

プロローグ

　赤い瞳を見ると呪のろわれる。
　そんなどうしようもない理由で村人たちから受け入れられない心優しい魔女がいた。
　彼女は人間と仲良くしたいと考え、里から出て、人間と恋に落ちた魔女だった。
　しかし、不幸があれば毎度彼女のせいにする村人たちの影響を受け、恋人も悪いことが起これば「魔女の呪いだ」と嘆くようになったのだ。悲劇はそこから始まり、「このまま放っておけば悪いことが起こるに違いない」と考えた彼らは追い出すでもなく、説得するでもなく、暴力に走ってしまう。理由は簡単。
「魔女」という都合のいい言い訳がいなくなってしまえば困る者たちがいたからだ。
　そんな身勝手な理由はつゆ知らず、彼女は数々の嫌がらせや暴力行為に涙を呑のむ。耐えて、耐えて、耐え続けた。この理由も簡単で、人間や恋人を信じていたかったからだった。
　しかし、とうとう一部の村人が「なぜ生かしておくのか」と怒りを持ち、その心を殺意に変えてしまった。
　彼は魔女の頭をめがけ、勢いよく矢を放ったではないか！
　運よく難を逃れた彼女だったが、首からは血が流れ落ちていく。我慢していた魔女はついに堪忍袋の緒が切れて涙を流しながらこう言った。

「呪いはあなたたち自身よ」

　言葉を放つとともに赤い瞳は光を帯び、そのとき初めて彼らは、彼女が真しんに魔女だったのだと思い知らされる。
　全ては自分たちが招いた過ちゆえだった。