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『明日から桜羽と学校行くことになったから一緒に行けない』
そんなLIMEが送られてきた。
流石に俺は察した。ああ、バレンタインで桜羽くんと進展があったんだな。俺はついに捨てられるんだ、と。知っていたけど結構傷つく。
それから葉桐くんと顔を合わせることも無く、日々が過ぎた。そもそも葉桐くんとは僅かな時間しか過ごしていなかったけども、俺の中で葉桐くんという存在はいつの間にかとても大きな存在になっていたことを身をもって感じた。
朝、寮の前で待つ彼の姿は無い。お菓子を作る度に笑顔で受け取ってくれた顔も見ることは無い。花壇に咲く花を眺める彼の姿を隣で見ることも無い。
そしてついに「今月遊びに行くのは難しい」とLIMEが送られてきた。
……もう、俺から別れを告げた方が良いよな。きっと葉桐くんは優しいから別れようなんて言えないんだろう。だから俺の方から終わらせてあげないと。そう思いながら返事を打った。
『別れよう』
それだけ送る。するとすぐに既読がついた。でも返信は来ない。分かっていたけどやっぱり辛いなぁ……。
「あー、もう!辛気臭い!」
誰もいない部屋で叫ぶ。どうせ葉桐くんはもう連絡してこないだろうし、俺も少し距離を置いた方がいいだろう。いつまでもジメジメ部屋でいじけずに散歩でもして気分転換しよう。
とりあえずスマホだけ持って寮を出た。行き先は特に決めていない。ただひたすら歩いていく。どこに行こうかな。どこに行ってもひとりぼっちだけど。
しかし、暫く歩いていると一人の男が立っていた。男がこちらを向き、その宝石のような瞳に俺が映った途端、瞳が大きく開いた。
「琴森?」
「久東……」
「ど、どうした!?」
変わらない久東の顔を見て何故か涙が出てきた。そんな俺を見て久東は普段の仏頂面を崩して焦っている。
「何があったんだ」
「あ、はは、実は失恋しちゃってさ。情けないよね」
「失恋?とにかく泣くな。お前らしくないぞ」
人の頭を撫でた経験が無いのか、ぎこちなく俺の頭を撫でる久東。下手くそで違和感しかないのにその優しさに涙が更に溢れて、久東はそのまま俺を抱き締めた。俺も彼に甘えて久東の肩に顔を埋める。こんなに顔がぐちゃぐちゃに汚れてるのに最悪な行動だと思うが失恋して寂しいのだ。今だけ許して欲しい。
久東の身体にしがみつくように抱きついて涙を流していると、突如剥がされた。目の前の久東は俺の後ろを見て苦い顔をする。何かと思い振り向くと、そこには鬼気迫る表情をした葉桐くんがいた。
「はっ、葉桐くん?」
「来て、先輩」
「え?ちょ、ちょっと待って!」
手を掴まれてそのまま引っ張られる。痛いくらいだ。一体何処に連れていこうと言うのか。
久東に助けを求めるように目を向けると「頑張れよ」と言い残して帰って行った。置いて行かないで!
連れてこられた場所は人気のない校舎裏だった。周りには誰もいない。彼は漸く俺から手を離して壁の方へ俺を押し付けた。
「なんで別れたいの」
「え、えっと」
「なんで泣いてんの。なんで俺には何も言わないで、いつもアイツなの」
矢継ぎ早に質問される。でもその声色は怒ってるというより拗ねているという方が正しい気がする。戸惑って固まる俺に、彼は苦しげな表情をして告げた。
「……ごめん。好き、本当に好きなんだ」
「えっ?」
「先輩のことが好き。だから別れたくない」
真っ直ぐに見つめられて言われたら嫌いだなんて嘘でも言えなかった。
どう返事をすれば良いか分からず、顔を伏せて黙っていたら、彼がしゃがみ込んできて、下から覗き込むようにして視線を合わせてきた。
「ねえ、まだ俺の事好き?」
「……」
「答えて」
好きだよ。この気持ちを消すなんて無理だよ。本当はまだ恋人でいたいよ。でも葉桐くんは桜羽くんを好きになるから諦めるしかないんだ。
俺は彼に甘えたくなる衝動を抑えて、説得した。
「好きだよ。好きだから、葉桐くんが他の人を好きになるのを見たくないんだ。だから別れたい」
「どういうこと?」
困惑する葉桐くんに対して例の漫画について話した。
そんなLIMEが送られてきた。
流石に俺は察した。ああ、バレンタインで桜羽くんと進展があったんだな。俺はついに捨てられるんだ、と。知っていたけど結構傷つく。
それから葉桐くんと顔を合わせることも無く、日々が過ぎた。そもそも葉桐くんとは僅かな時間しか過ごしていなかったけども、俺の中で葉桐くんという存在はいつの間にかとても大きな存在になっていたことを身をもって感じた。
朝、寮の前で待つ彼の姿は無い。お菓子を作る度に笑顔で受け取ってくれた顔も見ることは無い。花壇に咲く花を眺める彼の姿を隣で見ることも無い。
そしてついに「今月遊びに行くのは難しい」とLIMEが送られてきた。
……もう、俺から別れを告げた方が良いよな。きっと葉桐くんは優しいから別れようなんて言えないんだろう。だから俺の方から終わらせてあげないと。そう思いながら返事を打った。
『別れよう』
それだけ送る。するとすぐに既読がついた。でも返信は来ない。分かっていたけどやっぱり辛いなぁ……。
「あー、もう!辛気臭い!」
誰もいない部屋で叫ぶ。どうせ葉桐くんはもう連絡してこないだろうし、俺も少し距離を置いた方がいいだろう。いつまでもジメジメ部屋でいじけずに散歩でもして気分転換しよう。
とりあえずスマホだけ持って寮を出た。行き先は特に決めていない。ただひたすら歩いていく。どこに行こうかな。どこに行ってもひとりぼっちだけど。
しかし、暫く歩いていると一人の男が立っていた。男がこちらを向き、その宝石のような瞳に俺が映った途端、瞳が大きく開いた。
「琴森?」
「久東……」
「ど、どうした!?」
変わらない久東の顔を見て何故か涙が出てきた。そんな俺を見て久東は普段の仏頂面を崩して焦っている。
「何があったんだ」
「あ、はは、実は失恋しちゃってさ。情けないよね」
「失恋?とにかく泣くな。お前らしくないぞ」
人の頭を撫でた経験が無いのか、ぎこちなく俺の頭を撫でる久東。下手くそで違和感しかないのにその優しさに涙が更に溢れて、久東はそのまま俺を抱き締めた。俺も彼に甘えて久東の肩に顔を埋める。こんなに顔がぐちゃぐちゃに汚れてるのに最悪な行動だと思うが失恋して寂しいのだ。今だけ許して欲しい。
久東の身体にしがみつくように抱きついて涙を流していると、突如剥がされた。目の前の久東は俺の後ろを見て苦い顔をする。何かと思い振り向くと、そこには鬼気迫る表情をした葉桐くんがいた。
「はっ、葉桐くん?」
「来て、先輩」
「え?ちょ、ちょっと待って!」
手を掴まれてそのまま引っ張られる。痛いくらいだ。一体何処に連れていこうと言うのか。
久東に助けを求めるように目を向けると「頑張れよ」と言い残して帰って行った。置いて行かないで!
連れてこられた場所は人気のない校舎裏だった。周りには誰もいない。彼は漸く俺から手を離して壁の方へ俺を押し付けた。
「なんで別れたいの」
「え、えっと」
「なんで泣いてんの。なんで俺には何も言わないで、いつもアイツなの」
矢継ぎ早に質問される。でもその声色は怒ってるというより拗ねているという方が正しい気がする。戸惑って固まる俺に、彼は苦しげな表情をして告げた。
「……ごめん。好き、本当に好きなんだ」
「えっ?」
「先輩のことが好き。だから別れたくない」
真っ直ぐに見つめられて言われたら嫌いだなんて嘘でも言えなかった。
どう返事をすれば良いか分からず、顔を伏せて黙っていたら、彼がしゃがみ込んできて、下から覗き込むようにして視線を合わせてきた。
「ねえ、まだ俺の事好き?」
「……」
「答えて」
好きだよ。この気持ちを消すなんて無理だよ。本当はまだ恋人でいたいよ。でも葉桐くんは桜羽くんを好きになるから諦めるしかないんだ。
俺は彼に甘えたくなる衝動を抑えて、説得した。
「好きだよ。好きだから、葉桐くんが他の人を好きになるのを見たくないんだ。だから別れたい」
「どういうこと?」
困惑する葉桐くんに対して例の漫画について話した。
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