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そして葉桐くんと付き合い始めた。付き合う時に三つ約束をしたが、今もそれは守られている。
1.朝は一緒に登校すること
2.月に一度は遊ぶこと
3.付き合っていることは秘密にすること
一つ目は葉桐くんが決めた約束で、二つ目と三つ目は俺が決めた約束だ。お互い生徒会や風紀委員の仕事が忙しく会える時間は少ないが、付き合ったからにはカップルらしいことがしたいという二人の思いが一致したことにより一つ目と二つ目の約束が作られた。そして三つ目においては葉桐くんは不本意なようだったが、生徒会書記と付き合っているなんて周りに知られたら親衛隊に殺される可能性があるから俺がお願いした。
俺があんなイケメンと付き合って良いのかと不安に感じたが、思ったよりも以前と変わらず友情の延長線のような関係で安心した。
しかし、過ごす時間が前よりも長くなったため、より葉桐くんの魅力を知り、顔だけではなく中身まで好きになり、俺はすっかり葉桐くんの虜になっていた。
単に容姿が魅力的なだけでなく、仕草も一つ一つが綺麗で見惚れてしまうし、何気ない会話でも楽しくて仕方がない。
こんなにも人を好きになることがあるんだと思いながら日々を過ごしているうちにあっという間に時間は過ぎていき、いつの間にか高校三年になっていた。
このまま好きが増えていくのだろう、と呑気に考えていたが、風紀委員室から聞こえた会話にそれは壊された。
「いやー、転校生も来たし、そろそろ始まりそうですよね。王道学園!」
「口を動かさず仕事をしろ」
「でもでもマリモ頭の転校生に食堂で会長がキスってもうテンプレじゃないですか!きっとこのまま会長以外にも副会長や会計、庶務、書記、一匹狼や爽やかくんなど沢山の男達から愛され総受け展開待ったナシ!」
久東に資料を提出しようとしたが、室内で同じ風紀委員の三谷から葉桐くんの話が聞こえたため、部屋に入るのを躊躇した。しかも浮気を感じる不穏な会話だ。
転校生とは今話題の桜羽優斗のことだろう。三谷の言う通りマリモのようなもしゃもしゃの髪で顔が隠されているが、何故か生徒会長や副会長から好意を寄せられている、今最も学園で注目されている人物だ。
確かに桜羽くんの周りにはやけに美形が近寄っているが、葉桐くんも好きになるのだろうか。そんなわけない。信じたくなかった。そんな俺の思いを感じ取ったのか知らないが久東が冷たく放った。
「馬鹿馬鹿しい。有り得ないだろう」
「いやいや、でもあの会長がキスしたんですよ?もう既に爽やかくんと一匹狼は攻略されてますし、次は会計か書記あたりーーー」
俺は瞬時に部屋の扉を開けた。すると、久東と三谷は目を丸くして俺を見た。何故か二人とも慌てたように立ち上がった。
「琴森、これは違うんだ」
「そうそうっ!あくまで創作の話で実際は違うかもしれないし!」
「あ、あのっ、詳しく話を聞かせて欲しいんだけど」
三谷は困ったように眉を下げたが、俺にその王道学園というシチュエーションの漫画を貸してくれた。
一通り読み終えた後、ため息を吐いた。
……全く一緒だ。全寮制男子校ということも、美形な生徒の親衛隊があるのも、生徒会が人気投票で選ばれるのも、そしてその生徒会役員の性格も、全く一緒だ。怖いくらい同じで何だか背筋がゾワッとする。
それにこの漫画では葉桐くんにそっくりな男の子が主人公の転校生に夢中になっているのだ。しかもあの寡黙な葉桐くんが犬のように転校生に懐いて沢山話をしている。あの無口な葉桐くんが!(※葉桐では無い)
ど、どうしよう。この漫画の流れではもうすぐ葉桐くんが桜羽くんに惚れる頃だろう。俺、捨てられるのか……。
「琴森!これは現実ではなく漫画だ!」
「そうだよっ。落ち込まないで大丈夫。きっと全部が全部一緒じゃないって!」
何故か俺と葉桐くんの交際関係を知らない二人が慰めてくる。だが、俺は全然落ち着けなかった。既に俺の脳内では葉桐くんと桜羽くんのラブストーリーが流れていた。
一人で花に水をやるクールな葉桐くんの元へ桜羽くんが訪れ、上手く話せない葉桐くんに「無理に話そうとしなくてもいいよ。お前の気持ち、なんとなく分かるから」なんて言うのだ。そして葉桐くんはポッと惚れちゃう。その後、桜羽くんの真っ直ぐで素直なところにますます好きになり、二人の仲は深まる……。
「戻ってこい!琴森!」
「ごめん!俺が変なこと言ったせいで!お願いだから正気になって」
二人に体を強く揺すられ、俺は意識を戻した。
落ち着け、俺。まだ葉桐くん本人には聞いてないし本当に起こるなんて分からない。どうせ明日、一緒に登校するしその時に聞いてみよう。桜羽くんに対してどう思っているかを。
1.朝は一緒に登校すること
2.月に一度は遊ぶこと
3.付き合っていることは秘密にすること
一つ目は葉桐くんが決めた約束で、二つ目と三つ目は俺が決めた約束だ。お互い生徒会や風紀委員の仕事が忙しく会える時間は少ないが、付き合ったからにはカップルらしいことがしたいという二人の思いが一致したことにより一つ目と二つ目の約束が作られた。そして三つ目においては葉桐くんは不本意なようだったが、生徒会書記と付き合っているなんて周りに知られたら親衛隊に殺される可能性があるから俺がお願いした。
俺があんなイケメンと付き合って良いのかと不安に感じたが、思ったよりも以前と変わらず友情の延長線のような関係で安心した。
しかし、過ごす時間が前よりも長くなったため、より葉桐くんの魅力を知り、顔だけではなく中身まで好きになり、俺はすっかり葉桐くんの虜になっていた。
単に容姿が魅力的なだけでなく、仕草も一つ一つが綺麗で見惚れてしまうし、何気ない会話でも楽しくて仕方がない。
こんなにも人を好きになることがあるんだと思いながら日々を過ごしているうちにあっという間に時間は過ぎていき、いつの間にか高校三年になっていた。
このまま好きが増えていくのだろう、と呑気に考えていたが、風紀委員室から聞こえた会話にそれは壊された。
「いやー、転校生も来たし、そろそろ始まりそうですよね。王道学園!」
「口を動かさず仕事をしろ」
「でもでもマリモ頭の転校生に食堂で会長がキスってもうテンプレじゃないですか!きっとこのまま会長以外にも副会長や会計、庶務、書記、一匹狼や爽やかくんなど沢山の男達から愛され総受け展開待ったナシ!」
久東に資料を提出しようとしたが、室内で同じ風紀委員の三谷から葉桐くんの話が聞こえたため、部屋に入るのを躊躇した。しかも浮気を感じる不穏な会話だ。
転校生とは今話題の桜羽優斗のことだろう。三谷の言う通りマリモのようなもしゃもしゃの髪で顔が隠されているが、何故か生徒会長や副会長から好意を寄せられている、今最も学園で注目されている人物だ。
確かに桜羽くんの周りにはやけに美形が近寄っているが、葉桐くんも好きになるのだろうか。そんなわけない。信じたくなかった。そんな俺の思いを感じ取ったのか知らないが久東が冷たく放った。
「馬鹿馬鹿しい。有り得ないだろう」
「いやいや、でもあの会長がキスしたんですよ?もう既に爽やかくんと一匹狼は攻略されてますし、次は会計か書記あたりーーー」
俺は瞬時に部屋の扉を開けた。すると、久東と三谷は目を丸くして俺を見た。何故か二人とも慌てたように立ち上がった。
「琴森、これは違うんだ」
「そうそうっ!あくまで創作の話で実際は違うかもしれないし!」
「あ、あのっ、詳しく話を聞かせて欲しいんだけど」
三谷は困ったように眉を下げたが、俺にその王道学園というシチュエーションの漫画を貸してくれた。
一通り読み終えた後、ため息を吐いた。
……全く一緒だ。全寮制男子校ということも、美形な生徒の親衛隊があるのも、生徒会が人気投票で選ばれるのも、そしてその生徒会役員の性格も、全く一緒だ。怖いくらい同じで何だか背筋がゾワッとする。
それにこの漫画では葉桐くんにそっくりな男の子が主人公の転校生に夢中になっているのだ。しかもあの寡黙な葉桐くんが犬のように転校生に懐いて沢山話をしている。あの無口な葉桐くんが!(※葉桐では無い)
ど、どうしよう。この漫画の流れではもうすぐ葉桐くんが桜羽くんに惚れる頃だろう。俺、捨てられるのか……。
「琴森!これは現実ではなく漫画だ!」
「そうだよっ。落ち込まないで大丈夫。きっと全部が全部一緒じゃないって!」
何故か俺と葉桐くんの交際関係を知らない二人が慰めてくる。だが、俺は全然落ち着けなかった。既に俺の脳内では葉桐くんと桜羽くんのラブストーリーが流れていた。
一人で花に水をやるクールな葉桐くんの元へ桜羽くんが訪れ、上手く話せない葉桐くんに「無理に話そうとしなくてもいいよ。お前の気持ち、なんとなく分かるから」なんて言うのだ。そして葉桐くんはポッと惚れちゃう。その後、桜羽くんの真っ直ぐで素直なところにますます好きになり、二人の仲は深まる……。
「戻ってこい!琴森!」
「ごめん!俺が変なこと言ったせいで!お願いだから正気になって」
二人に体を強く揺すられ、俺は意識を戻した。
落ち着け、俺。まだ葉桐くん本人には聞いてないし本当に起こるなんて分からない。どうせ明日、一緒に登校するしその時に聞いてみよう。桜羽くんに対してどう思っているかを。
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