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しおりを挟む眠りに落ちると、俺に必ずキスをする男が居る。
それに気付いたのは最近だ。
最初は信じられなかった。だって場所は男子校の寮である。四人部屋のむさ苦しい男しかいない部屋でキスなんてする男はいるだろうか。考えるだけでもおえってなる。しかし、数週間前から気付いたが、就寝時間に瞼だけ閉じて寝たフリをすると、唇に柔らかい感触が落ちてくる。それも毎日続けてである。
これはおかしい。
もしかしたら他校の女と間違えた同室の男の仕業かもしれない。彼女と間違えて男としてたなんてショックを受けるだろうしそれを他の同室の奴らに知られるのも可哀想だ。
だから今まではキスくらい別にいいかと許していたが、最近は舌を入れて絡ませてきたりしてきて俺も限界だ。
今日こそは相手の顔を見てやろうと思ったものの、キスをされた瞬間目を開いたが暗くて分からなかった。ただ分かったことは自分よりも体格の大きい男ということだけだ。
「誰だ……」
教室で机の上に頬を置いて呟いた。すると、ある男が俺の顔を横から覗いてきた。
「どうしたんだよ?そんな悩んでさ」
声の主の名は犬山。同室の1人である。
同じクラスでもあり席も横。その為、自然と関わる回数が誰よりも多い。性格も明るくてノリが良い奴だ。
もしコイツがキスの相手だとしたら一発殴って他の奴にも言い触らしてやろう。犬山が彼女と間違えて俺とキスを楽しんでたなんて面白過ぎる。
「な、何急に笑い出してんの?」
「えー?別にー、ふふっ」
「何それー!そんなの気になるじゃん。教えろよ!」
軽く俺の肩を叩いてくるが、まだ黙っておこう。
お楽しみは取っておく物だし、今教えても面白くない。どうせならコイツがキスする寸前に写真を撮ってやって鼻の下伸ばすだらしない姿を残しておかないと。
しかし、一人で笑ってる俺の様子が気に食わないのか犬山は口を尖らせ真面目なトーンで聞いてきた。
「ねえ、マジで何?俺だけ知らない話?」
「犬山だけって言うか、俺しか知らない話」
「超気になるんだけど!何何?俺の何か面白いこと見つかったの?」
「言いたいけどまだ!あ、それよりさ、お前って彼女の写真持ってたりする?」
コイツが寝惚けてキスしたい程の相手はどんな顔なんだろうか。そう期待しながら聞いた。
すると、彼はきょとんとした顔で返した。
「は?俺、彼女いねぇけど」
「え」
思わず目を見開いたまま硬直した。
彼女がいないなら今考えていた事は全て有り得ない話だ。なんだ、つまらないな。
「え、てか何でそんな事を聞いて……も、もしかして俺の事」
「犬山には本当にガッカリだよ」
「は!?え、何でこのタイミングで!?」
急に顔を赤らめて興奮し始めたと思いきや、泣きながら拳で地面を叩いた。感情の起伏が激しい野郎だ。
何故こんな奇行を始めたのか分からず、立ち尽くす俺を助けるように予鈴のチャイムが鳴った。
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