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第5章
タイムリミットは短め
しおりを挟むあまり時間の余裕もないので、寝る間も惜しんで夜中に闇に潜みながら捜査活動を進めた。
コルダはその間も痛めつけられていたが、乱暴を受けることはなかった…が、これ以上の衰弱は生命の危険があることが分かったので、やはり近いうちに決着をつけなければならない。
夜中に捜査を進める中で、僕は暗号化された文章が記された紙の燃えカスを暖炉から見つけ出し、欠片とその墨をかき集めておいた。
そして犯すぞって宣言されていた2日後。
僕は子爵と共にベッドの上にいる。
子爵は僕の上に乗りあげていて、さっきから何度も顔を撫でてくるので気持ち悪さでゾワゾワする。
あまりの気持ち悪さにぶるりと体を震わせてしまったが、それを子爵は感じていると思ったようで喜びに顔を歪めて笑っている。
性根の腐った人間の笑みって腐ってるんだなって発見。
「だ…旦那様…私…」
「何も心配する必要はない。初めは痛いが、それも癖になってくるだろうよ」
ならねーよっと心の中でツッコミながら子爵の胸にそっと手を添える。
こんな光景ノヴァに見られでもしたらここら一体消し炭になること間違いなし。
「だ、旦那様はこの国を再び戦場に変えるおつもりなのでしょうか?」
「…貴様…何を聞いた」
どうせ僕は子爵と性行為をするつもりなんて微塵もないのだから僕が潜入者であることは今日バレる。
それならば踏み込んだことを聞いて怪しがられるてもいいという判断で子爵に質問を投げかける。
案の定子爵は途端に顔を変え、額に青筋を浮かべた。
「ほ、他の使用人達が話していました!だ…旦那様はこの国をお売りになるおつもりだと!」
「っは!そうだとしてお前に何の関係がある…まさかお前、裏切者ではあるまいな?」
「違います!わ、私、知り合いが死ぬのはもう見たくないのです!」
「ははははは!!…お前のその思いに何の価値がある?その願いを聞いて私に何の得がある?」
「何故こんなことをなさるのですか!この国がなくなれば子爵様も戦争に巻き込まれ財も名誉も失われるのですよ!?」
「失わん」
目を潤ませて子爵に訴えかけるが子爵の感情は揺らがないばかりか、余裕を感じる。
まぁ、そうだろうなって反応だ。
自分に何の旨味もないことをするわけがない。
目の前のこいつは全てが思い通りに進み、自分は他の協力者との約束通り得るだけで何も失わないと思っているのだ。
こんなことを企む愚図共が平等に利益を分配するわけなどないと考えられないあたり、やはり愚かとしか思えない。
それとも、そうなっても自分が勝つ自信があるのだろうか?
「やはりお前は潜入者であったな。残念だがお前は此処で死んでもらおう。まぁ、その前に味見くらいはしておいてやろうか」
下種な笑みを浮かべて僕の服に手をかけた子爵にこれ以上の情報を得ることは出来ないと判断し、事前に用意していた魔法を発動する。
「なっ!これは!」
「愚かな子爵様。全ての情報を吐き出し罪を軽くするか、今ここで生きたまま僕の操り人形になるか…どっちを選びますか?」
影で作った分身に羽交い絞めをさせて僕から子爵を引き離す。
拘束魔法を使ってもよかったのだけど、今回の相手は手練れの者を駒として使える人間であることからあまり得意としない拘束魔法は突破される可能性があると思い得意な闇魔法を使用することを選んだ。
予想通り子爵の首に掛けられたネックレスは魔法を跳ね返す力のある魔導具であったようだが、僕の魔力量に対応できずにネックレスは粉々に砕けた。
事前にネックレスが壊れたことで、協力者に通知がいかないように阻害魔法を施しているから子爵の所へ潜入者が入ったことは他の者にはすぐにはバレないだろう。
それに気が付かず、助けがくると信じているのか…子爵は結局情報を自ら吐き出すことは選択しなかった。
洗脳魔法をかけて結局全て話させるし、その後も活用するから聞いておいて何だが、そんな抵抗に何の意味もないのだけれど。
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