王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第5章

教えてくださいよ先輩

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あの会議で僕が言った優先順位が採用されたようで、ヒュー様から負傷騎士達への慰安金が早急に配られたと連絡があった。



そして僕は何度か王国騎士団長(ヒル侯爵様)と近衛騎士団長(とーさまは長期休暇中なので違う方)とでレッドドラゴンの住まいを作成するにあたり、必要な物リストを作成した。

そのリストを元に予算を算出し、国に申請すると予想よりも早く資金が給付しれたので早急に職人に依頼しレッドドラゴンの住まいが建設された。



レッドドラゴンの住まいは騎士団合同で使用していた模擬実戦訓練地に建てられたが、元々あまり使われていなかったし住まいを建てても少しは空きがあるから問題ないみたい。








レッドドラゴンの住まいも完成し、騎士団とレッドドラゴンの溝も埋まり出した頃…やっと休めるなーっと思っている所に城から招集がかかった。

『首を突っ込んできたからには最後まで責任を持って復興に向けた会議には参加しなさい』ととーさまに言われている為、招集を無視することもできず僕は大人しく馬車に揺られ城へと足を運んだ。



憂鬱だけれど、今回はノヴァが一緒にいる。

会議には一緒に参加してくれないみたいだけど、それ以外の場には同行してくれるって言ってくれた。




帰ってきたばかりのノヴァと少しでも一緒にいたかったので、会議の間待たせるけれど、甘えて同行をお願いした。









会議があった日は夜の仕事は免除される。
というか、部下にまるなげできる。


けれど会議のない日は相変わらず夜のお仕事があって、馬鹿なこと考える奴等って減らないんだなって、何だか遠い気持ちになる今日この頃。



「ですからドラゴンの管理にこんなに活動費は必要ないと言っているんです!」

「なぜドラゴンのことをひとつも理解できていない貴方が必要ないと判断できるのかお聞かせ願いたい」

「っこの…ドラゴンは本来餌など食わずとも生きれるであろう!必要最低限に抑えれば他に回せる金ができる!」

「そのお金が誰かの懐に入ってしまうならドラゴンの生活費にあてた方がいいでしょう。それにレッドドラゴンは毎日の食を必要とする種です。これでも抑えて見積もっているのですが?」




僕は今、会議室で戦っている。

この場には王国、近衛騎士団長も同席しているが彼等は僕よりもドラゴンについて初心者さんなので容易に口を挟むことが出来ないから僕が頑張って発言をしているところだ。





「ではこの清掃費とはなんだ!これこそ必要ないであろう!」

「何を言っているのですか?住まいの清掃とドラゴンの鱗磨きが必要です」

「野生のドラゴンは鱗を磨くのか!?」

「磨きはしません。水浴びはしますけど。水が苦手なレッドドラゴンは精霊が気まぐれに綺麗にしてくれるそうです。騎士団では精霊が少ないので騎士達が綺麗にする必要があります」

「飛んで森へ行けば精霊がいるであろう!」

「許可なく国を飛行していたら文句を言う人達がいるので飛行範囲を絞ってもらっています。これ以上の抑制はドラゴンの逆鱗に触れることになりますよ」

「なにをぉ!!わしを脅すと言うか!!」




あー言えばこう言うっていうのは僕の得意分野だけど、このおじさんもなかなかだ。

財務課に勤めている副課長のようだけど今日は課長代理として会議に参加されている。
財務課として国の財布の紐を縛るのは当然のことだけれど、ここまで話が通じないのは論外だ。


先程余った金が誰かの懐に入ると言う話を振ってみたところから更に声を荒げている様子から、彼が着服している可能性は高いだろうと思う。
だから少しでも誤魔化せる資金が欲しくて声を荒げているようにしか僕には見えない。






「では一日ドラゴンのお世話体験をなさってみてはいかがでしょう?そうすれば何が必要で何が必要でないか身をもって分かっていただけると思います」

何時までも進まない話に腹が立った僕は、騒ぎ立てるおじさんの言葉を遮り少し声を大きくしてそう提案した。


「そうですね。此処は財務課副課長殿に体験していただき、国の資産を動かす先輩として必要なものとそうでないものを後輩に教えてやってください」

「なっ!何故私がドラゴンの世話など!!」


「副課長殿がドラゴンについて無知であるのに頭ごなしに必要ないと怒鳴るからですよ」


「っちょ、調子に乗るなよ!若造が!」


「調子に乗ってません。宰相様がそれがいいと言ったのですから大人しく体験なさったらどうです?教えてください先輩。何が必要で何が必要ないのか。それはどうしてなのか、までしっかりと」





賛成してくれた宰相様に乗っかって煽るとカーっと顔を真っ赤に染めた副課長が再び声を荒げようとした時





「此処は会議の場だ。子供の喧嘩はよそでしなさい」


クラージュ殿下の静かな叱責が飛び、おじさんは不服そうにしながらも口を噤んだ。

僕も目礼をし、これ以上おじさんを煽る言葉を口にしないよう口をしっかりと閉じた。






「ドラゴンにあてる資金については我々では知識不足であることが否めない。しかし新たに役職についた管理官殿の経済に関する知識が不足していることも事実。現状では財務課副課長殿または課長殿がドラゴンの管理にどれだけの費用が必要なのかを知る必要がある為、財務課副課長殿、課長殿にはドラゴンの世話について実際に体験してもらい管理官殿にご教授いただきたい。これについて意義はあるか」



「っ納得いきません!私とて暇ではないのです!」




皆が納得する中、副課長はクラージュ殿下の采配に納得できず声を荒げる。

クラージュ殿下の護衛、にぃ様からピリっとした気が放たれるが鈍いのか平気なのかおじさんはなお声を荒げ続ける。






「では課長殿にお願いしよう。君は職務に戻るといい」

「っし、失礼します!」


クラージュ殿下の冷たい視線と言葉におじさんはやっと場の空気に気が付いたのか、不敬にも殿下の言葉のまま荒々しく会議室を出て行ってしまった。

後ろを近衛騎士が付いて行っていたから、近々彼はこの城から消えるだろう。






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【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
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