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第5章
爆弾付きの手紙を戦地へ
しおりを挟む「戦地にてレッドドラゴン数体の存在が確認されたそうだ。今のところはただ静観しているだけのようだが…ルナイス、何か知っているな」
目が覚めた僕は、とりあえず朝食を食べることにした。
シェフであるクレモンもここ最近の刺客処理に寝不足のようで、日に日にご飯が美味しいんだけど芸術作品のような姿になっていて面白く、今日も芸術性の高い花の形をした肉を食べようとしたところでばーんと食堂の扉が豪快に開かれた。
そこには疲れ切った顔をしたとーさまの姿が…
そして、僕を視界に捉えると開口一番にドラゴンについて尋ねてきたのだ。
「はい。と言っても、僕もほんとつい1時間程前に知ったことです…とりあえずお話する時間があるのなら朝食を一緒にどうですか?」
「…いただこう」
一緒に食べる時間あるかなぁっと一か八かとーさまに席を勧めると、話を聞きながら食べる余裕はあるようで席に座ってくれた。
すぐにクレモン達がとーさま用の食事になるものをばばばーっと持ってきてくれて、その間に僕は夢でバグさんと会ったこととバグさんから聞いたことをそのままとーさまに伝えた。
「なるほどな…ホルス様は今どこに?」
「今朝レッドドラゴン達の様子を見てくると出ていかれました」
「なに?…はぁ…」
そう。
今朝僕は庭でドラゴンの尾だけを生やした人型になって刺客を尾でばしんばしんと追い払いながら眠っていたホルス様にバグさんのことを話し、レッドドラゴン達のことも聞いた。
そしたら
『あぁ…何体かついてきてたな。今は手を出すなと言ってはおいたが…念の為様子を見てくる』
と言ってぱっとドラゴンの姿となり飛んで行ってしまったのだ。
本来のドラゴンの姿ではあまりにも目立ちすぎるから王都とか領地で飛ぶ時は、少し小さくなって飛ぶようにしてもらっているので、ぱっと見鳥にしか見えないからとーさま達のところに報告があがることもなかったのだろう。
ドラゴンについて同盟国からは不安視する声が上がったり、ドラゴンの力を意のままに扱おうと企み侵略を試みる者が居たりとする中で、再びドラゴンが戦場に姿を現すのはあまり好ましくないというのは僕でも分かっている。
だからとーさまがおっっっもたい溜息を吐きながら頭を抱えるのも分かる。
だけど
「大丈夫です。ホルス様は今の僕達の状況をよく理解してくださっていますし、問題のあの国はたぶん今あんまり動けない状況にあると思いますので」
魔界からのお仕置きなんて絶対やばいやつに決まってる。
今日は今のところあれだけしつこく送られてきていた刺客も姿を見せていないし。
「それにドラゴン達が手を貸すまでもなく、もうすぐ戦争は終わります。にぃ様もヒュー様もノヴァもテトラ君も騎士達ももう我慢の限界だと思いますよ」
実はこっそりホルス様ににぃ様達宛の手紙を届けるようお願いしたのだ。
それから一枚の魔法付与札も。
「ルナイス…何をした」
「ふふ…僕の大事な人達を何時までも戦場に独占させるわけにはいかないので、ちょっと抑止力になればなって。使うか使わないかはにぃ様達に任せてるので、使ったならその必要があったということです。何も問題ありません」
しつこくにぃ様達を戦地に留めている敵国の兵達にも帰りを待つ家族がいることだろう。
しかし戦争っていうのは残酷なもので、そんなことを気にしていては自分達が死んでしまう。
だから僕は分かっていても大切な人達を思って残酷なことをする覚悟を決めたのだ。
まぁ、よほどのことが無い限り闇奈落(威力最大)が付与された魔法付与札なんて使わないだろう。
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