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第5章
戦況は厳しい
しおりを挟むとーさまに会う前にクラージュ殿下には他国との会議の結果、どうしても安心することができないというならば僕達も他国への説得に協力しますと伝えているので、取り合えず他国との問題は国王にお任せだ。
王家が考えを改めてくれたと言っても、ホルス様達はまだ呼べない。
ドラゴンを所有物のように扱うことに怒りはしたが、他国に不安視される原因をつくったのは間違いなく僕なのだ。
だからとーさまも今回大人しく軟禁されていたわけなので、まったく知りませんとはいかないわけで…だから、これ以上混乱を招かないためにもまだホルス様たちに戻って来てもらえないのだ。
その間、敵国からの侵略には以前通り騎士達だけで対処することになった。
騎士達も本来はこうであったのだし、ドラゴンの力ばかり借りていては体が鈍ってしまうと言い、この状況に不満はないと聞いている。
まぁ…近衛騎士団長と王国騎士団長に言われては文句も不満も口にすることはできないだろうけど。
僕はと言えば、昼間はアーバスノイヤー家でのんびりと過ごし、夜は王家が忙しくしている間に悪さをしようと企む輩を排除する日々を過ごしている。
夜に活発に動くから昼間は眠たくてぼーっとしていることが多い僕の所へ偶ににぃ様やヒュー様、ノヴァやオリヴァー達がやって来て、お話したり僕の世話を焼いたりとしてくれている。
一度マルコシアスさんがやって来て、ドラゴン達は皆魔界でのんびり過ごしているよっと教えてくれた。
どうやら魔力溢れる魔界はドラゴンにとって中々に心地の良い場所らしい。
もしかしたら戻ってきても大丈夫だよって伝えても何体かは魔界に残ると言うかもしれないけれど、それはそれでいいと思う。
暮らしやすい所で過ごすのがお互い一番だし。
マルコシアスさんはこちらの事情をホルス様から聞いているようで、こちらの世界は本当に面倒な所ですねっと面白そうに笑っていた。
侵略してこようとする他国を蹴散らしながら、同盟国に理解を得るため王家を説明をして周ること3カ月。
季節は冬を迎え寒くなってきたので、久々に魔導研究所へ顔を出し脹脛に巻き付ける暖かい熱を火傷しない程度に発する布を作成するのに勤しんでいる時に王家からの呼び出しを受けた。
足布を作る作業はオリヴァーに続きを頼んで、城に出向くように念の為用意していた服に着替え迎えの馬車に乗る。
今日はノヴァは戦地の前線に駆り出されている。
やはりドラゴンなしでは一回の戦争は長引くし、アーナンダ国の騎士達はもう長い事色んな国を相手していて疲労も溜まっている。
段々と負傷者が数を増やし、戦死者の数も増えてきた。
そこで王家よりノヴァに出陣命令が出たのだ。
魔法に優れたノヴァが戦に参加することで事態が大きく好転するのは明らかで、だから僕も今回はノヴァを大人しく見送った。
本当は行かせなくなかったけれど、戦場にはにぃ様もヒュー様も、そして今回は北の方で怒った戦だったからテトラ君も居る。
僕も行きたいところではあるが、僕には別にやらなくてはならないことが沢山ある。
城に着き馬車を降りると、とーさまが待っていてくれた。
近衛騎士団長を休憩して王城に滅多に近づかなくなったとーさまだけど、ここ最近は頻繁に出入りしている。
自分は騎士であって参謀ではないのだがっと苦い顔をされていたけれど、とーさまは頭も良いから頼りにされてしまうのは仕方ないと思う。
宰相様一人だけでは賄えないところもあって、とーさまはそこを補う役目を担っているらしい。
「研究所に居たと聞いたが何を作っていたんだ?」
「脹脛に巻いて体をあっためる布を。僕個人も使いたいのですが、寒い北の地で兵士達の足が温まれば動きやすくなると思いまして…続きの作成はオリヴァーに」
案内される部屋の途中でとーさまからの問いに答えると「それはいい」と笑って頷いてくれる。
こうしてとーさまとの会話も久々だ。
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