王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第4章

会議①sideアドルファス

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ルナイスの新婚旅行を見送って数日後には西の問題の報告が

そのまた数日後には北での問題の報告が

そして今回東の地では更に大きな問題が国の上層部へと報告された。




問題全てにルナイスが関わってしまっており、上位貴族の中にはルナイスが黒幕ではないかと疑う愚か者が数名居たが父上が「貴殿等の顔と名前はしっかりと憶えておこう。」と告げたことで今は震えて大人しくしている。



東の地にてルナイス達が襲撃を受けたと聞いた時には剣を片手に飛び出そうとした俺をレオが必死に羽交い絞めにして揉み合った結果、家の一部を破壊してしまった。

帰還された父上に殴られて少し冷静になった俺は今、父上と共に王城の会議室に居る。






「こ、今回もアーバスノイヤーの次男が関わっているとききき聞くぞ!」


知能の低い馬鹿が人差し指をこちらへ向けて声を荒げるが、父上の睨みにビビッているのか声が震えており恰好が少しもついていない。



「私の息子は優秀なのでな。国の大事に関わる事件をいち早く発見し早期解決の為に本来を引き受けてくれているのだが…何か文句がおありか?」


「ひっ!こ、こんなに行く先々で問題が起こるなど怪しいではななないか!!き、貴殿のむ、息子は!直ちに!王都へ!帰還し!尋問を!受けるべきだ!!ひぃ!!!」




黙っていればいいのに、男は父上に噛みつき睨まれただけで悲鳴を上げ気絶しかけている。

本当は今すぐあの男を切り捨ててやりたいところだが、此処は王城。
下手に動けば俺だけでなく父上まで拘束されるうえに、ルナイスにも害が及ぶ可能性があるので下手には動けない為、大人しく父上の後ろに控えているが後日あの者は不幸に見舞われることになるだろう。





「今はそんなことよりも今回の件をどう対処するかを話し合うべきではないのか。」


ずっと腕を組んで黙っていたヒル侯爵様がトントンと机を指で叩き全員の注目を自身に集めそう言うと、父上はふんっと鼻を鳴らしながらも目を瞑り黙った。

ルナイスが怪しいと騒ぎ立てていた者共も黙りこんだところで会議室の扉が開かれた。







「国王陛下がお見えになられました。」


会議室に現れたのはアーナンダ国王。

父上に着いて何度か顔を合わせることがあったが、その時には見られなかった真剣な顔で着席された。




「此度の件に関しては我も早急な対応が必要であると感じている。既にルナイス・ウォード、ノヴァ・ウォードが調査を進めていると報告に受けているが彼らは訓練を受けた戦士ではない。王国騎士団は直ちに東へ向かい調査へ当たるよう命じる。ルグノスは万が一に備えて王都に居てもらうが、私兵を動かすことを許可する。犯罪者共が何を企んでいるかは未だ分からぬが、東の地は古来より有事の際にアーナンダ国が保護することを約束している特別な地である。各々の考えや思いがあるだろうが今はそのことで時間を無駄にしている余裕はない。問題解決に専念するよう此処に命ずる。」




国王様がそう言うと父上達は立ち上がり胸に手をあて騎士の礼を取った。

俺や数名の貴族達が遅れて同じように礼を取ったのを確認した国王様は着席するよう命じた。



正直、隙あらば自分の思い通りに動かそうとする国王様に苦手意識があったし父上が何故大人しく国王様に従っているのかが理解できていなかったが今の国王様を見て納得した。




ルナイスも国王様は注意しないといけないけど悪い人じゃないよっと言っていたのはこういう人だと分かっていたからなのかと思うと、弟の優秀さに表情筋が緩みそうになる。







再び着席した後は淡々と今後の動きや、情報のすり合わせなどが行われた中、扉のノックする音が響いた。


こういった会議の際に話を途切れさせるノックがされるのは有事の際か緊急の重要な知らせが届いた時で場が更にピリついたものになった。





「失礼致します!ファクター公爵様よりご報告でございます。『従者の中に敵が潜んでおり、精神操作を受けていたことにルナイス・ウォードが気づき急遽各領地にて怪しい人物がいないか調査中である』。続いてノヴァ・ウォード様より『捉えた人物を尋問したところ敵は闇属性適合者の集団であることが判明した』。以上でございます!」


報告を届けてくれた従者に国王様が下がる様告げた後の部屋は報告を聞く前よりも空気が重たくなっている。



「やはり闇属性の者は排除するべきなのです!!国王陛下!!」


「精神操作をされていたなど…やはり闇属性は危険すぎます!」



報告の内容に国王様が入室される前に騒いでいた馬鹿共が再び騒ぎ立て始めた。

それに対して国王様は何も言わず目を瞑り、熟考されている様子の為馬鹿共は余計騒ぎ出す。


会議の場であるとはいえ、王の御前でよくこれだけ騒げるものだ。





「今回敵が闇属性適合者の集団であることが分かったのはルナイス・ウォードの功績であることは間違いない。しかし、相手が複数の闇属性適合者であることを考えると一度適合者を拘束する必要があると考えるが、皆はどう考える。」



しばらくして考えが纏まったのか、国王様がそう発言された。

闇属性の適合者の拘束となれば、ルナイスも拘束対象となる。


ただでさえ、肩身の狭い闇属性適合者が何の罪もないのに拘束されるとなれば今よりも大きな反感を買うことになる危険性を国王様はどのようにお考えなのか。




「それがいい!さすがでございます国王陛下!」

「ルナイス・ウォードも怪しいではありませんか!これを機に尋問をなさるべきです!」

「むしろ闇属性の適合者など一掃してしまわれればよろしいかと。」




これ幸いと声を上げる馬鹿共は下品な笑いが隠せていない。

いや、隠す気もないのだろう。


目の上のたんこぶであるアーバスノイヤー家を一気に傾けられるかもしれない機会を逃すまいと涎を垂らしているのだ。
気色の悪い奴等だ。





「ふむ。トゥワイマン侯爵はどう考える。」


「はい。私は拘束には反対です。保護、であるならば賛成いたします。」



国王様が名指しでトゥワイマン侯爵様に声をかければ、なるほどっという意見が出てきた。



「国王陛下!彼の弟君はアーバスノイヤー公爵の元妻であるマーフィー伯爵家の縁者でございます!正しい判断ができるとは思えません!」




トゥワイマン侯爵様の発言に納得のいかなかった馬鹿がそう声を上げると国王様はチラリとその者へ視線を向けたがすぐに興味を失くした様子で次にホーク子爵へと声をかけた。





「はい。私も拘束するという意見には賛同しかねます。理由としましては何も弟が仕えている家の子供が関わっているからというものではもちろんございません。余計な混乱と反感を起こさないために拘束するという手段に反対いたします。」


ホーク子爵はピシっと姿勢を正して国王へと告げる。

その際に先ほどの馬鹿にさりげなく意見しているところはさすがワイアットの兄である。






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【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
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