260 / 351
第4章
思ったよりも酷い状況
しおりを挟む再び馬車を動かしてヒュー様の元へ向かう間、数はあまりないけれど度々魔獣が行く手を阻んだ。
監視用に使われている魔獣は数体居ると見ていいだろう。
札が張られた魔獣を見つけ次第始末して捉えるようにも言っていて、既に5体は捉えている。
ここまでの仕掛けの規模から単独犯の可能性は低いと言える。
そういして護衛達が戦い、捉えを繰り返してやっと僕達はヒュー様の部隊と合流することができた。
「ルナイス!」
僕達の馬車にすぐに近寄ってきたヒュー様はノヴァにエスコートされて馬車から降りた僕をぎゅっと抱きしめてきた。
ヒュー様にしては珍しく、心配していたことが全面に出ている。
いつも隠して茶化すことが多い人なので驚いた。
「怪我はないか?」
「はい。優秀な護衛達が付いてますので。」
「はぁ…そうだな。ノヴァも居るしルナイスも強いからな。」
僕の言葉と笑みに安心した様子で息を吐き出したヒュー様の言葉にドキドキの心臓が脈打つ。
トキメキとかではなく、何かこう…普段あまりそう言うの言わない人から褒められたことが嬉しくて。
口喧嘩をよくする僕達だけど、小さい頃からよく一緒に居て、僕にとってはにぃ様のような存在であるヒュー様に認めてもらえているということが思ったよりも嬉しかった。
「ん?照れてるのか?」
「っ…五月蠅いです。ヨハネス!この意地悪な人間に説明してあげて!」
何時もの調子を取り戻したらしいヒュー様が揶揄いの顔で僕の顔を覗き込んでくるのを避けて、ヨハネスに説明を任せる。
ずいっと僕の前に出て説明をしてくれたヨハネスに意地悪なヒュー様は任せて、僕は心を落ち着かせるためにノヴァにくっついて離れた所からヒュー様を観察する。
ヒュー様は所々軽い擦り傷があるものの、大きな怪我はないようで、他の騎士達も同様。
しかし辺りには沢山の魔獣の死骸が散乱しており場の様子はあまり好ましくない。
ノヴァがさっそく浄化をしているが、不浄が過ぎるのか重苦しい空気はすぐに軽くはならなかった。
「ノヴァ礼を言う。ノヴァの力をもってもこの有様だ。分かってはいたが向かってくる魔獣の数が多すぎて他にやりようがなくてな…。」
珍しく元気のない感じで言うヒュー様の目は鋭く表情は今までに見たことがないほど険しい。
「この数ではそうでしょうね。剣や拳だけでは疲労が酷いはず。寧ろこの数を全員がその程度の怪我で済んでいることに敬意を表します。」
ノヴァがそう言うとヒュー様はふっと笑って「当たり前だ。」と胸を張った。
その姿は自分と自分の仲間に自信をもっていて、凄く素敵に輝いて見えたがそれをヒュー様に素直に言えば付け上がって五月蠅くなるので言わないでおく。
「まぁ、幸いにも民家を襲う前に冒険者が見つけて報告してくれたおかげで被害は出ずに済んだ…がこれが人為的なものだっていうなら油断はできねーな。しかもヒル領だけじゃなくノルデン領の方でも被害があるっつーのが問題だ。他の領地でも被害が出る可能性もあるし、最悪もう被害が出ている可能性もある。」
「とーさまには既に報告をしているから国も直ぐに動くと思います。」
ヒュー様の元に辿り着いてすぐにコルダと同じように姿を現さずに護衛をしてくれる人にとーさまに報告をするよう指示を出したので転移陣を使わせたし、もう伝わっていると思う。
この場の惨状を見て迷惑かけたくないなー、何て気楽なことを言っている状況じゃないって判断したので。
ヒュー様達だからこのくらいの被害で収まった。
そう言えるくらい本当に地面に伏してる魔獣の亡骸の量が尋常ではない。
「…ヒュー様がご無事でよかったです。」
「当たり前だ。」
つい零れた言葉にヒュー様は少し照れたように顔を背けた。
本当に彼が、彼等が強い人達でよかった。
________
こんにちは!
お気に入り数がもう少しで3000人に到達しそうです^^
この物語を綴り始めた頃はこんなにお気に入り登録をしてもらえるとは思っておらず
本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。
ここまで長編になる予定ではなかったのですがお気に入りにして下さる方、いいねをして下さる方、感想を下さる方、誤字等の報告をくださる方、エールを贈って下さる方、多くの方のお陰で物語の続きを描けています。
まだまだ言葉を紡ぐ人として未熟者ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
また3000人突破した時には何かしらイベントを起こしたいと思っていますが、今は思っているだけの段階です(笑)
何かご意見があればお待ちしております!
431
お気に入りに追加
3,107
あなたにおすすめの小説
泣かないで、悪魔の子
はなげ
BL
悪魔の子と厭われ婚約破棄までされた俺が、久しぶりに再会した元婚約者(皇太子殿下)に何故か執着されています!?
みたいな話です。
雪のように白い肌、血のように紅い目。
悪魔と同じ特徴を持つファーシルは、家族から「悪魔の子」と呼ばれ厭われていた。
婚約者であるアルヴァだけが普通に接してくれていたが、アルヴァと距離を詰めていく少女マリッサに嫉妬し、ファーシルは嫌がらせをするように。
ある日、マリッサが聖女だと判明すると、とある事件をきっかけにアルヴァと婚約破棄することになり――。
第1章はBL要素とても薄いです。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
ギャルゲー主人公に狙われてます
白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
婚約破棄された王子は地の果てに眠る
白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。
そして彼を取り巻く人々の想いのお話。
■□■
R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。
■□■
※タイトルの通り死にネタです。
※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる