248 / 398
第4章
なめてかかると痛い目を見るよ…ほんとごめん。
しおりを挟む大体話がまとまったところで報告の為とーさまと辺境伯様は転移で王都へ行くこととなった。
その間僕達はハデス家に滞在することになったのだけど、にぃ様が警備要員として残られたのでお話しできるなーっと思って鼻歌を歌ってしまうほどご機嫌になった僕ですが…
只今にぃ様をテトラ君に取られています。
僕がにぃ様にくっつく前にテトラ君がにぃ様に稽古をつけてくれと言って訓練場へと連れて行ってしまったのだ。
僕も慌てて後を追ったけれど、訓練場へ着いた時には既に稽古が始まっていた。
「…にぃ様容赦ない。」
「昔テトラ様を稽古と言ってぼこぼこにしていたしな。」
仕方なく見学していた僕は、にぃ様のあまりに容赦のない攻撃にちょっとテトラ君へ同情した。
しかしそこはテトラ君なので、寧ろ容赦のない攻撃を躱したり、受け止めれた時なんかはすごく嬉しそうで楽しそうにしている。
隣で呟かれたノヴァの言葉に学生の頃、直球すぎる物言いでちょっとやばめな質問を僕にしてきたテトラ君をしばいたにぃ様とヒュー様を思い出す。
身内贔屓の目で見ても、ちょっと大人げない。
だけど、それでお互い良しとしているのだから外野がやいのやいの言う必要はない。
しばらく見ていたのだけど段々僕もやりたくなってきた。
人が楽しそうにやってるのを見ると興味湧くよね。
それに僕意外と剣術とか戦闘訓練好き。
近くでテトラ君達の訓練を見ていた騎士に木刀の予備を貰い、未だ打ち合いをしているにぃ様達へ近づくと二人は直ぐに気が付いてくれて動きを止めた。
「ルナイス、危険だ。」
顔を顰めたテトラ君が邪魔をするなと言うように声をあげるが無視。
にぃ様はぽんっと僕の頭にぽんっと手を置いて「やるか?」と聞いてくれたので強く頷く。
「テトラ。今から私の代わりにルナイスが相手をする。」
にぃ様がテトラ君にそう言うとあからさまに嫌そうな顔をする。
というか「えー」っと声に出して不満を表している。
だけど、にぃ様が相手になるとお互い怪我をさせたくない気持ちが勝ってあまり良い打ち合いが出来ないのだ。
ここはテトラ君に相手をしてもらわねば。
そして僕より先ににぃ様に相手をさせた恨みも晴らさねば。
今度はにぃ様とノヴァ他騎士達が見守る中、僕とテトラ君の戦いが開始された。
テトラ君は僕が学園を卒業した後にも訓練を重ねていることは知らないし、学生の頃も魔法や魔術を使った戦闘をよくしていた僕なので剣術の方はあまりできないと思われているのだろう。
相手してやるかって感じの態度が気に食わない。
手始めにって感じで振り下ろされた木刀をスッと払い、木刀の持ち手の方でみぞおちに思いっきり打撃するとぐぅっと苦しそうな声をあげてテトラ君はすぐさま距離を取った。
だけどそこを追尾して更に今度は木刀を横に振るい脇腹を殴打する。
が、それは反応したテトラ君の木刀によって防がれてしまったので今度は僕がすぐに距離を取った。
「っ…ルナイス、お前」
「僕が剣術もそこそこ出来るって知らなかったでしょ。」
悔しそうに僕を睨みつけるテトラ君に笑いかけてやれば、テトラ君の瞳に一層力が宿る。
「どぅら!」
びゅんっと飛んできて間合いを瞬時に詰めたテトラ君の木刀の先が目前に迫るのを体を捻って寸前で避ける。
戦闘には力も必要だけど、体を柔らかく動かすことも大切。
猫みたいに体を捻ることができ且つ軽やかに動けると戦術の幅も広がる。
避けられるとは思っていなかったようで一瞬の隙ができたテトラ君目掛けて木刀を振り上げた。
「ぐふっ!」
「「「「「あ」」」」」
僕の振り上げた木刀は見事テトラ君の股間に的中し、一瞬白目を向いたテトラ君が地面に叩きつけられるのを慌てて頭をキャッチする。
意識はあるようだけど激痛のあまり内股になって声も出せず悶えているテトラ君に流石に申し訳なさすぎてどうにかしてやりたいと思ったが、今下手に動くと余計に打撃を与えてしまいそうでどうすることもできずオロオロするばかり。
見かねたノヴァが凄く嫌そうな顔でテトラ君の股間に手を翳し治療を施してくれてやっとテトラ君の体から力が抜けた。
額には汗が滲んでいて、痛みが取れた今は軽い放心状態。
「誰かテトラを自室に運んでやれ。」
流石に可哀想だと思ったのかにぃ様が近くにいた騎士達にそう声をかけると、テトラ君は2人の騎士によって屋敷内へと運ばれていった。
522
お気に入りに追加
3,268
あなたにおすすめの小説
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?

婚約者の恋
うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。
そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した!
婚約破棄?
どうぞどうぞ
それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい!
……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね?
そんな主人公のお話。
※異世界転生
※エセファンタジー
※なんちゃって王室
※なんちゃって魔法
※婚約破棄
※婚約解消を解消
※みんなちょろい
※普通に日本食出てきます
※とんでも展開
※細かいツッコミはなしでお願いします
※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる