王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

文字の大きさ
上 下
227 / 398
第4章

鱗は意外と弾力があって暖かい

しおりを挟む

ハビット辺境伯からのうるうる視線からさっと目を逸らし、もう一つ見せたいものがあると告げハビット辺境伯とその護衛達を伴って妖精達が緑を生やしているだろう元枯れた地へ向かった。



そしてその場で驚いたのはハビット辺境伯だけではなかった。



「…ここまで求めてない。」


「どのようになどと詳しく言ってなかったからなぁ。」



元枯れた地は緑が生い茂りまくってた。

狭い範囲ではあるけど、一部だけ凄く緑なの違和感すごい。




隣のホルス様もうむってちょっと苦笑い。









「此処は…」


「ハビット辺境伯様の領地に居た妖精達に一時的にこちらへ移動してもらい、枯れた地を豊かにしてもらいました。ご覧の通り妖精族ができるのは豊かにすることで人が住めるように整備する必要が妖精達にはないのでこの地で人が生きれるようにするには人族の力が必要です。また妖精達には豊かな地を求め攻め入ってくる者達を追い払う力はあまりありません。」




すごいことになってるなーって緑生い茂る地を眺めている間にノヴァがハビット辺境伯にきちんと説明してくれていた。

僕も気を取り直してノヴァの言葉にうんうん頷いてみせる。






「…よく分かった。…よく分かったが今すぐに全てを受け入れるというのは無理だ。私だけでなく領民達もずっと妖精族の存在を知らずにきた。完全に受け入れるまでに時間が欲しい。」


「…いいよぉって言ってるよぉ。」


「まぁ、すぐのすぐには無理でしょうね。」




ハビット辺境伯の言葉にルゲイエさんが妖精達の言葉を聞き、両腕で大きな丸を作り、オーレさんは納得の頷き。






「まずは妖精族が今すぐにやって欲しいことだけ聞いてみてはいかがですか?」


僕だったら受け入れていくにしても妖精達は見えないし話せないわけだから今のうちに重要な要求を聞いておきたいと思うのでそう言ってみたらまたうるうるした目で見られたのでさっと視線を逸らしホルス様の背後に隠れる。




「そうですね。それがいいと思います。陛下には妖精と意思疎通が出来る者を派遣するよう伝えておきますがすぐには来られないと思いますので。」


すかさずノヴァがハビット辺境伯の前に体をさりげなく動かし話を次に進めてくれる。







ハビット辺境伯の屋敷に戻ってノヴァとオーレさんとルゲイエさんにハビット辺境伯へのお話はお任せした。

僕はノヴァのものなので。



彼女からの視線を避けるため僕とヨハネス達はノヴァ作のお家へ一足先に帰ってきた。





何だか身体的疲労よりも精神的疲労が強い気がして、家に戻って速攻お風呂に入ってホルス様の肉体美を眺めさせてもらっている。

むっちりした筋肉をつんつんと触らせてもらった後、部屋の中に納まるサイズのドラゴンの姿になってもらい包まれながら眠りについた。












トントンと優しく叩かれたことで意識が浮上し、重たい瞼を少し持ち上げる。


「ルナイス。夕飯だ。」


「…んぅ…ノヴァ?」


「あぁ。起きれるか?」




ぼーっと目の前のノヴァの顔を眺めて、そして僕の体を包む硬くて暖かい鱗に頬擦りする。

鱗は堅いのだけどほどよい弾力と温もりがあって安心する。




「…後にするか。」


んーんー唸る僕を見てこれは駄目だと判断したのだろうノヴァの声が聞こえてきて少し焦る。

起きたくないわけじゃないのだけど、体を持ち上げるのが億劫なんだ。


意識は徐々に覚醒してきてるから…もう少し待って欲しい。






「ノヴァ…ん。」


でも待ってくれそうにないので、ノヴァに両腕を伸ばして起こしてーとおねだり。




「ふっ…おいで。」


そんな僕にノヴァは怒ることなく、優しく抱き起してくれる。

うん。


僕は本当に素敵な夫を手に入れた。







そのまま甘えてノヴァに食堂まで運んでもらって椅子に下してもらう頃には僕も完全に目が覚めていた。


ホルス様も人型になって、席についていて、僕達が食べ始めるのを律儀に待ってくれているので、僕とノヴァで挨拶をしてご飯を食べ始めた。






食べ終えて片付けは使用人達がしてくれるので、僕は明日からの観光場所でも考えようかなっと思っているとぐいっと体が突然宙に浮いた。



「ルナイス話がある。」


「…ぅぃ。」




僕の体を持ち上げたのはノヴァで、僕は僕とノヴァの部屋へ連行された。

ノヴァの雰囲気からして、これから話すのは甘いお話ではなく真面目なお話であることが分かるから憂鬱。







しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

婚約者の恋

うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。 そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した! 婚約破棄? どうぞどうぞ それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい! ……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね? そんな主人公のお話。 ※異世界転生 ※エセファンタジー ※なんちゃって王室 ※なんちゃって魔法 ※婚約破棄 ※婚約解消を解消 ※みんなちょろい ※普通に日本食出てきます ※とんでも展開 ※細かいツッコミはなしでお願いします ※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

処理中です...