上 下
212 / 351
第4章

新たな住まいへ

しおりを挟む


最終確認を終えて、ついに実家を出る時がきた。




見送りにとーさまとにぃ様、使用人達、それからナイ様が来てくれていて


そしてにぃ様の抱擁からなかなか解放されないでいる。




なんなら足浮いてる。







「アドルファス。そろそろルナイスを解放しなさい。」


見かねたとーさまがそう声をかけるが、にぃ様は黙ったまま更に僕を抱きしめる力を強くした。



「はぁ…ルナイス、お前もそろそろ行きなさい。ノヴァが待っているぞ。」



「…はぁい。」



溜息を深くついたとーさまの言葉に、僕がにぃ様の腕の中でもぞつけばすぐに解放された。


とーさまも気が付いていて僕に言ったのだけど、僕もにぃ様からの抱擁を甘受していたのだ。

にぃ様は僕の嫌なことはしないから僕が離してほしいと少し体を動かすだけですぐに察してくれることは僕も理解していた。


理解したうえで、にぃ様との別れが寂しくそしてにぃ様の腕の中が心地よくてそのままにされていた。







ノヴァも僕達のことは理解しているから再度馬車や荷物の確認をしたり、馬を撫でたりして気長に待ちますスタイルでいてくれている。










「ナイ殿、すまないな。」


「あら、まったく気にしておりません。わたくしはお二人の熱い兄弟愛に癒されておりましてよ。」




とーさまが長時間立たせっぱなしのナイ様に声をかけると、ナイ様は本当に気にしていないという様子で笑って下さっている。





「ナイ様。にぃ様のことをよろしくお願いします。」


「ふふ、任せて頂戴。貴方の大切な兄上を毒物から必ず守ってみせるわ。」





ナイ様に向いて、前にも言ったことがあるけれど再度にぃ様をよろしくと声をかければ、前回と同様、すごく頼もしい返答が貰えて満足した。


にぃ様ともう一度抱き合ってからノヴァの手を取り、馬車へ乗り込む。











「ノヴァ。頼んだぞ。」


「はい。必ず守り抜きます。」




馬車の窓越しに、にぃ様が真剣なお顔でノヴァに声をかけ、それにノヴァも真剣に返す様子に目頭が熱くなる。


ノヴァの視線は外を向いているのに、僕が泣きそうなことに気が付いているのか膝をぽんぽんと優しく叩いてくれたので、その手をぎゅっと握った。



























そうしてやってきた新たなノヴァとの住まい。



「すごい!前より綺麗になってる!」


馬車から見えた庭の様子に驚き、そして嬉しい気持ちになった。




庭には紫と赤色の花々が咲いて絶妙なバランスで咲いており生命の強さを感じる。

なにより二色の花は僕とノヴァの瞳の色で、改めてこれから此処でノヴァと一緒に暮らすのだと実感しぐっとくるものがあった。





「レドモンドが頑張ってくれた。これから俺達の好きな植物も庭で育てたいから話を聞かせてほしいと言っていた。」


「好きな植物かぁ…警備用に食虫植物系の魔植ましょくでも植えとく?」



「いいんじゃないか。」




ノヴァの許可が貰えたので、この家の庭師として新たに雇われたレドモンドに後日魔植を植えるようお願いをすることが決定した。

実は前から興味があって…是非とも侵入者にはその場所に来てもらいたい。


捕らえられた人間がどのようになるのか実際の現場を見てみたいという好奇心が昔からあったのだ。




不法侵入者なら死んでも自業自得だし!







しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

泣かないで、悪魔の子

はなげ
BL
悪魔の子と厭われ婚約破棄までされた俺が、久しぶりに再会した元婚約者(皇太子殿下)に何故か執着されています!? みたいな話です。 雪のように白い肌、血のように紅い目。 悪魔と同じ特徴を持つファーシルは、家族から「悪魔の子」と呼ばれ厭われていた。 婚約者であるアルヴァだけが普通に接してくれていたが、アルヴァと距離を詰めていく少女マリッサに嫉妬し、ファーシルは嫌がらせをするように。 ある日、マリッサが聖女だと判明すると、とある事件をきっかけにアルヴァと婚約破棄することになり――。 第1章はBL要素とても薄いです。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

嘘つきの婚約破棄計画

はなげ
BL
好きな人がいるのに受との婚約を命じられた攻(騎士)×攻めにずっと片思いしている受(悪息) 攻が好きな人と結婚できるように婚約破棄しようと奮闘する受の話です。

婚約破棄された王子は地の果てに眠る

白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。 そして彼を取り巻く人々の想いのお話。 ■□■ R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。 ■□■ ※タイトルの通り死にネタです。 ※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。 ※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。

勘違いの婚約破棄ってあるんだな・・・

相沢京
BL
男性しかいない異世界で、伯爵令息のロイドは婚約者がいながら真実の愛を見つける。そして間もなく婚約破棄を宣言するが・・・ 「婚約破棄…ですか?というか、あなた誰ですか?」 「…は?」 ありがちな話ですが、興味があればよろしくお願いします。

処理中です...