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第4章
新たな住まいへ
しおりを挟む最終確認を終えて、ついに実家を出る時がきた。
見送りにとーさまとにぃ様、使用人達、それからナイ様が来てくれていて
そしてにぃ様の抱擁からなかなか解放されないでいる。
なんなら足浮いてる。
「アドルファス。そろそろルナイスを解放しなさい。」
見かねたとーさまがそう声をかけるが、にぃ様は黙ったまま更に僕を抱きしめる力を強くした。
「はぁ…ルナイス、お前もそろそろ行きなさい。ノヴァが待っているぞ。」
「…はぁい。」
溜息を深くついたとーさまの言葉に、僕がにぃ様の腕の中でもぞつけばすぐに解放された。
とーさまも気が付いていて僕に言ったのだけど、僕もにぃ様からの抱擁を甘受していたのだ。
にぃ様は僕の嫌なことはしないから僕が離してほしいと少し体を動かすだけですぐに察してくれることは僕も理解していた。
理解したうえで、にぃ様との別れが寂しくそしてにぃ様の腕の中が心地よくてそのままにされていた。
ノヴァも僕達のことは理解しているから再度馬車や荷物の確認をしたり、馬を撫でたりして気長に待ちますスタイルでいてくれている。
「ナイ殿、すまないな。」
「あら、まったく気にしておりません。私はお二人の熱い兄弟愛に癒されておりましてよ。」
とーさまが長時間立たせっぱなしのナイ様に声をかけると、ナイ様は本当に気にしていないという様子で笑って下さっている。
「ナイ様。にぃ様のことをよろしくお願いします。」
「ふふ、任せて頂戴。貴方の大切な兄上を毒物から必ず守ってみせるわ。」
ナイ様に向いて、前にも言ったことがあるけれど再度にぃ様をよろしくと声をかければ、前回と同様、すごく頼もしい返答が貰えて満足した。
にぃ様ともう一度抱き合ってからノヴァの手を取り、馬車へ乗り込む。
「ノヴァ。頼んだぞ。」
「はい。必ず守り抜きます。」
馬車の窓越しに、にぃ様が真剣なお顔でノヴァに声をかけ、それにノヴァも真剣に返す様子に目頭が熱くなる。
ノヴァの視線は外を向いているのに、僕が泣きそうなことに気が付いているのか膝をぽんぽんと優しく叩いてくれたので、その手をぎゅっと握った。
そうしてやってきた新たなノヴァとの住まい。
「すごい!前より綺麗になってる!」
馬車から見えた庭の様子に驚き、そして嬉しい気持ちになった。
庭には紫と赤色の花々が咲いて絶妙なバランスで咲いており生命の強さを感じる。
なにより二色の花は僕とノヴァの瞳の色で、改めてこれから此処でノヴァと一緒に暮らすのだと実感しぐっとくるものがあった。
「レドモンドが頑張ってくれた。これから俺達の好きな植物も庭で育てたいから話を聞かせてほしいと言っていた。」
「好きな植物かぁ…警備用に食虫植物系の魔植でも植えとく?」
「いいんじゃないか。」
ノヴァの許可が貰えたので、この家の庭師として新たに雇われたレドモンドに後日魔植を植えるようお願いをすることが決定した。
実は前から興味があって…是非とも侵入者にはその場所に来てもらいたい。
捕らえられた人間がどのようになるのか実際の現場を見てみたいという好奇心が昔からあったのだ。
不法侵入者なら死んでも自業自得だし!
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