王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第4章

とーさまからの贈りものに王家からの謝罪文

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話し合って僕達は僕が学園を卒業する日に入籍をすることに決めた。


これについては後日とーさまにきちんとお話して、良しを貰えたら決定することだけれど、ずっと一緒にいたし遅かれ早かれ結婚する未来は変わらないのだから早い方がいいんじゃない?って話にまとまった。







ナイ様がそう遠くない未来、アーバスノイヤー家に住まいを移されるし

そんな新婚夫婦の住まう家に新郎の弟がいつまでも同じ家に住んでいるのは外聞が悪いし、とても気まずい。




恐らくにぃ様もナイ様も気にしなくていいよって言ってくれるだろうけど…僕が耐えられない。




僕もノヴァと入籍をして住まいを移したいと話したのだが…






住まいをどうするか、という話に今なっている。


というのも、ノヴァは一代限りの男爵で今の住まいはちょっと人が往来しずらい森の中。




ノヴァ一人ならそのままでいいのだけど、そこに僕が住むとなると色々問題がある。


まず何より、とーさまとにぃ様が許さない。



自慢じゃないが、僕は今世産まれてからずっと誰かに身の回りの世話をされて生きてきた。

一人でできないわけじゃないけれど、貴族に生まれたからには誰を雇い養わなければならない。





ヨハネスは僕の専属護衛騎士だから一緒に移動することになる。

コルダは分からないけれど、警備隊の誰かは絶対つけられると思う。






僕達だけじゃなくて、使用人まで増えるってなると今のノヴァの家じゃ手狭すぎるんだ。


ということは、新たな住まいを建てなくてはいけないのだけど…これがどこに建てるかで困っている。


ウォード男爵に領地はない。
今まで魔怨の森が領地みたいなものだったから。



建てるとしたらアーバスノイヤーの領地か王都になるのだけど……








コンコン


「ワイアットです。」



「どうぞ。」




んーっと考えていると、扉がノックされてワイアットの声が聞こえたので入るよう促す。





「この度はお二人のご婚約、誠におめでとうございます。」

入ってきたワイアットはそう言って深く礼をとった後、そっと僕達の前にケーキののったお皿を置いた。



「ささやかながら私奴わたくしめからのお祝の品でございます。」



「ワイアットが作ったの?クレモンが血の涙を流しそうなケーキだね。」


「お褒めに預かり光栄でございます。」



「…褒め言葉なのか?」




ワイアットが持ってきたケーキは料理人顔負けのクオリティだった。

一口食べた味もとろける触感で控えめに言って最高。


うちの料理人シェフであるクレモンがギリギリと歯を食いしばりワイアットを睨みつけている様子が目に浮かぶ。




そんな僕達のやり取りに、ノヴァが首を傾げているけれど、これはちゃんとした褒め言葉だよ。








「んまぁ…それで?」


一口食べるごとに「んまぁ」っと口に出してしまうほど美味しいケーキを作るなんて…万能執事すぎる。


そう思いながら、ワイアットに本題に入るよう促す。




「当主様より新居についてはこちらで用意するので気にしないように、との伝言をお預かりしてまいりました。」



「そ…そこまでしていただくのは!」




あ、そうなんだー。くらいにしか思わなかった僕とは違い、ノヴァは顔を顰めてワイアットを見ている。


確かに、ノヴァ的には嫁いでくる所謂、嫁的な僕のとーさまに家を建てさせたとなると外聞が悪い。

ノヴァのプライド的なこともあるのかもしれないし…だって、すごーーーーーく、今まで見たことないくらい顔を顰めている。






「ノヴァ様。大変紛らわしい発言をしましたことお詫び申し上げます。当主様がご用意されますのは新居となる土地と優秀な建築家。新居への金銭に関しましては、今まで王家からノヴァ様に本来支払われるべきであった給金がございます。」


ワイアットがそう言ってパチンと指を鳴らすとワイアットの後ろに控えていた使用人がさっと机の上端に大きなケースを乗せ、蓋を開いた。



「…ワイアット。何故支払われるべきであった給金がこんなにもあるの?」




ケースの中にはびっしりと大量の札束が入っており、パッと見ただけでもかなりの額だと分かる。

それを見て抱いた感情は怒り。


これ…とーさまが暴かなかったらノヴァの元にはきていないお金ってことだよね?






「どうやら老害共が横領していたようです。もちろん既に処罰を与えて二度と王都に足を踏み入れられないようにしております。王家からの謝罪文もここに。」


ワイアットは懐から出した手紙をノヴァに渡す。


王家は魔法送書が使えない。
防犯の面から王家からも送られてこないし、王家へ送られることもない。

だからこうして王家とのやり取りは紙が使われて、身分が証明できる使用人から受け取る。




しばらく手紙に目を通したノヴァははぁっと重たいため息を吐き出して手紙を閉じた。





「当主様は何時頃お手すきですか。」


「はい。礼を言いに来る必要はない。文句があるなら聞こう。と聞いておりますが。」


「…ご厚意に甘るとお伝えください。」


「かしこまりました。では、失礼いたします。」




ワイアットが退室するのを見送って、ノヴァは再び重たいため息を吐き出す。


手紙の内容が気になるけど、見せてなんておねだりは、はしたない。



それに僕が見てもいい、見なければならないものならノヴァは見せてくれるだろうし。





とにかく今は疲れ切った顔をしているノヴァの口にケーキを運ぼう。




____________


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