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第3章
街にも良い店がある
しおりを挟む僕よりも目上の人で、にぃ様の上司でもあるお偉い方への贈り物なんてどうすればいいのか分からないので、街の通りを歩き、高級そうで展示の魅せ方が綺麗なお店ににぃ様を引っ張り店内へ。
お店では鉱物や宝石、魔石や魔力晶を加工した指輪やネックレスなどの装飾品、それから室内装飾が売られている。
「にぃ様、あまり貴族が足を運ばない所に何故このようなお店があるのでしょうか?」
見渡す限りの品全て、粗悪な物はなく、むしろ此処にある品を下街で暮らす国民達では購入できないのではないだろうかと思うほど繊細で良い品物ばかり。
そのような品を売るお店が王都ではなく、アーバスノイヤー領の街のお店に馴染んでいる理由が思い浮かばず、店員さんには聞こえないような小さな声でにぃ様へ質問をしてみた。
「此処は店主の王都で高利を得る為多少と粗悪品も混ぜた商売をするよりも、アーバスノイヤー領で本当に良い質の物だけをなかなか売れなくても必要な人の元に届くような商売をしたいという思いがあって此処にある。」
にぃ様はすらすらとこのお店について説明してくださって、店主の思いも素晴らしいと思ったが、それ以上ににぃ様が着実に時期領主として頑張られているのだと改めて感じて胸がわーっと熱くなる。
この感情は、感動だろうか?
何だかにぃ様を抱きしめたくなってしまって、ぎゅっと握っている手に力が入る。
「ルナイス?」
「…改めて僕のにぃ様の素晴らしさに感動したのです。」
そんな僕を不思議そうに身を屈め顔を覗き込んでくるにぃ様に素直な気持ちを吐露する。
変に隠すようなことではないし、ルナイスとして生きていく中で賛辞や感謝の気持ちは素直に言葉にするべきだと学んだ。
相手が嬉しそうな顔をするのが見れるし、伝えることで大切な人との信頼の気持ちを深めることができると分かった。
僕の気持ちを聞いたにぃ様は一瞬驚いた様子で目を見開いたけれど、すぐにふはっと笑い「さっさと品を決めよう」と僕の手を引いて歩き出した。
見上げたにぃ様の口角はほんのり上がっていて、耳がちょっとだけ赤く染まっている。
そんなにぃ様の様子に僕の口角も上がり、スキップしたくなるような気分になった。
「良い店でした。」
装飾店ではクラージュ殿下への贈り物として守護の効果がある魔力晶を購入した。
今思ったら殿下への贈り物を領地の街で買おう何て良くなかったなっと思うけれど、あそこのお店があってよかった。
購入した魔力晶であれば殿下へ贈るのに質素すぎないし、個人的な贈り物として高級過ぎない。
満足する買い物ができた僕はにぃ様に手を引かれて、街の中にある大きなお店に入店した。
中には沢山の領民が居て、僕達に気が付くと笑いながら軽い礼を取る。
僕はあまりお家から出ないけれど、にぃ様は最近次期領主として良く街に顔を見せているので、領民達もにぃ様も互いの存在に慣れているご様子。
僕はと言えば、明らかに「あの子がアーバスノイヤー家の次男か」という視線を向けられていることに首が引っ込んでしまっている。
悪い感情を向けられているわけじゃないが、プレッシャーがすごい。
「背筋を伸ばして堂々と歩け。」
ぽんっとにぃ様に背中を押され、僕にだけ聞こえる声で言われた言葉に背筋を伸ばす。
そんな僕ににぃ様は満足そうに笑い、僕の手を引いたまま歩き出した。
そして辿り着いた場所は個室のある料亭。
3階建ての3階にあって、他のお店より大きい面積を使っている。
その為他の店からの賑やかな客の声は聞こえず、静かな空間となっていた。
とーさまが治める領地にはこんな場所もあったんだなーっとキョロキョロしてしまうけど、誰もそんな僕を咎めることはなく、温かく見守ってくれている。(ヒュー様は未だ口封じをされているみたいだけど)
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