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第2章

尊くて胸が痛い

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ノヴァと近々の報告と魔法についての雑談をしていると扉が開き、とーさまがご到着された。



「皆ご苦労であった。此処に居るのはアーバスノイヤー家がもっとも信頼をおいている者達だ。気兼ねなく楽しんでくれ。」


とーさまがそう言って手に持つグラスを軽く上に上げると、皆も静かに手に持つグラスを上に上げた。


僕は直前にノヴァがグラスを渡してくれたおかげで、何とか挨拶に参加できた。



王家主催の社交界では国王がグラスを掲げて挨拶をした後は「我らが王よ」と声に出して言うのだそう。

他貴族のお家のは、それぞれの爵位名(例えば「聡明な公爵に」等)を入れた言葉を返すのだとか。


アーバスノイヤー家はそういうの面倒って当主が多くて、当主がグラスを上げたら皆は黙ってグラスを上げてすぐにご飯やらお喋りやらが始まるって感じらしい。



歴代当主の面倒って気持ちすごく分かる。







「ルナイス。体調はどうだ?」


「ヒュー様…今はもう何ともないですよ。ノヴァとにぃ様の魔力操作がとんでもなく上達したので少しも苦しくないです。」




ヒュー様が傍にチルを連れて近くに来てくれて、僕は掌をぐーぱーして体に何の問題もないアピール。


今日は残念ながら来れなかったバグさんは、僕の魔力を吸収した後に一度、様子を見に来てくれた。

セクシー淫魔さんのことやらバグさんがやってる商売のことやらですっごく忙しいみたいなんだけど、様子を見に来てくれた時に、にぃ様とノヴァに捕まって魔力操作のコツを教えてくれていた。



闇属性に適正を持つ僕の魔力は魔族にとって馴染みの良く、美味いらしいらしく、また爆弾になりそうだったら気軽に呼んでくれってバグさんにこっそり言われている。

だけど、ちょっとコツを教えてもらっただけで魔力操作が超上達した二人のおかげで、バグさんに魔力をあげる日はそうそう来ないだろうと思う。


魔力が美味しいとか不味いとかっていう感覚は魔族特有だよね。






「今度俺もご教授願おうかな。」


「ヒル侯爵が既に2人に約束を取り付けたって聞いたよ?にぃ様とノヴァと家の使用人数名とヒル侯爵とヒュー様とヒル家の使用人数名で合同修行だって。」



「…初耳だが……気合いれねーとな。」



うんうん。

嬉しいような複雑なようなってお顔のヒュー様の気持ちよく分かる。



とーさまもにぃ様も容赦ないし、ノヴァも感性で魔法を扱っているところがあるからあんまし説明上手じゃない。

厳しい修行になるのは目に見えてるよね。





「ちなみに、少しだけ僕も強制参加です。」


「…頑張ろうな、お互い。」


「へぃ。」





そう。

僕も体調とか鑑みて、皆よりは少し短い時間でだけど合同修行に参加しなさいって言われている。


魔力を発散する目的もあるけど、色々ある僕はもう少し魔力操作を覚えましょうねってことで…。





「チルも…チルもしゃんかしたい!」


「お前にはまだ早い。」


「んー…チルにはきついかも…」



「ぅっ…やー!!チルもつよくなってルナイスしゃまお守りしゅるのー!!」




今までヒュー様の隣でいい子にしていたチルが手をあげて、合同修行への参加を名乗り出たが、もちろんヒュー様も僕も却下。

3歳には厳しい以前に無理すぎる。



だけど、チルの修行に参加したい理由が尊いすぎて僕は胸を押さえて蹲る。




「尊い!!」


「チルも立派なヒル家の男だな。」



蹲る僕を心配するチルの頭をヒュー様が優しく撫でる。

ヒュー様の言う通り、さすが代々王国騎士団の騎士団長を務めてきたヒル家の男である。






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