王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

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第2章

始めての来客案内

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その後、ルナイス・アーバスノイヤーの取り扱い説明を終え、今日は久しぶりに家族が揃っているということでちょっと豪華なランチ会を開催することに。


そして急遽ヒル侯爵家もお招きして、プチお疲れ様会を開いた。





「あっ!ルナイスしゃまぁぁあ!!」


「チル!!うっ…よ、よくきたねぇ。」


屋敷を訪れたヒル侯爵家のお出迎えに立っていると馬車の扉が開いて婦人と一緒に地に足をつけたチルが僕を見つけ、ビュンっと物凄い速さで僕に突っ込んできた。

弾丸の如く僕の腕の中に飛び込んできたチルを足をぐっと踏ん張り、何とか抱き留め可愛い小さい子の頭をわしゃわしゃと撫でまわす。




色々あってチルと会うのはとっても久しぶり。



「チル、大きくなったねぇ。大きくなっても可愛いねぇ。」


「きゃふふ!チル、大きくなったでしょ~?」



尊いっとなかなか離せないでいる僕にチルはぎゅうっと抱き返してくれ続けていて、無邪気な笑い声で僕の鼓膜を揺らしてくれる。

色々あって疲れた脳みそが癒されていく…




「感動の再会のところ悪いが、そろそろ中に入れてもらうぞ。」

ぎゅうっとくっついて離れない僕達を二人纏めて抱きかかえたヒュー様がそう言ってズンズン歩き出す。


チルはきゃーって楽しそうだけど、僕は軽々と二人人間を抱えて歩き出すヒュー様の逞しさに憧れるやら恐怖するやら…。
僕だけでも下してくれっとコソッと頼んだが、聞こえないフリをされて、チルが一緒に抱えられているので暴れるわけにもいかず…結局屋敷の中に入るまで一緒に抱きかかえられるしかなかった。






「んん…ヒル侯爵様ご機嫌よう。ヒル侯爵夫人におかれましてはお初にお目にかかります。アーバスノイヤー家次男のルナイス・アーバスノイヤーと申します。」


屋敷の中に入ってやっと床に下ろされて、気を取り直し先ほどまでのことはなかったかのように華麗に侯爵夫妻へご挨拶を。

侯爵様にはとーさまを通じて何度かお会いしているけれど、夫人にお会いするのは実は今回が初めて。


僕は社交界にあまり顔を出さないし、婦人はチルを身ごもられていたりと顔を合わせる機会がなかったのだ。





わたくしはローゼン・ヒルと申します。旦那様と息子達が世話になっているというのにご挨拶が遅れたこと、ここに深くお詫び申し上げます。今後ともどうぞ息子達と仲良くしてやってくださいまし。」


ヒル侯爵夫人は侯爵の後ろから一歩前へ出てきて、何事もなかったかのように胸に手を当て軽く礼をしてくれた。

夫人は元騎士だと昔ヒュー様から聞いている。
とても美しく強い騎士と話題の人であったのだとか。




挨拶を終えて、チルの手を繋ぎながら侯爵家の皆様をバンケットルームにご案内した。

僕達に気が付いた使用人がすぐに扉を開けてくれて、扉の向こう側は、急な予定であったにも関わらず完璧に用意の整った状態であった。






ヒル侯爵家に休憩に使えるお部屋も簡単に説明して、僕はノヴァのいるところへ。


「ノヴァ。」


「公爵様ももう準備が出来たようだ。」



近づいた僕に気が付いたノヴァがふっと笑ってくれて、もうすぐとーさま達が来ることを教えてくれる。





「ルナイスはこういった会は随分久しぶりではないか?」


「うん。侯爵様達でも案内するの緊張した。」


「ヘレナさんが感動して泣いていたぞ。」


「え!?…なんか…恥ずかしい。」




たぶんばぁやは「立派になられて」何て言って泣いていたのだろうけど…ちょっと照れくさい。



ばぁやは3日後、アーバスノイヤー家から去ってしまう。

けれど、ばぁやのお家はそんな遠くもないので、偶に会うことはできる。
本来屋敷を去った使用人が再び屋敷に足を運ぶことは滅多にないのだけど、長年ずっとアーバスノイヤー家の者を見守り使えてくれていたばぁやは自由に出入りできる権限をとーさまが与えたのだ。





それに今後ばぁやのお孫さんがアーバスノイヤー家に使えにやってくる予定があるから、その時には必ず会えるだろう。








「寂しいか。」


「うん。ばぁやは本当に最初からずっと優しく僕を見守ってくれた人だもの。」



母親のような…そんな温かい存在だ。



「でも、無理をして体を痛めてほしくないし…大好きな旦那さんとの時間も大切にしてほしいって思ってる。」


「…そうだな。」



ノヴァはこちらに視線は向けずに穏やかな笑みを浮かべて話を聞いてくれる。

そんな横顔をこそっと見て、やっぱりノヴァは綺麗な人だなって改めて見惚れた。






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