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第2章
抱っこ訓練【番外編】
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ルナイス 0歳
ルグノス25歳
ルナイスの小さな心臓はバクバクとせわしなく動いていた。
なぜなら今自分を抱き上げている人物の抱き方がぎこちなく、今にも地面へ叩きつけられそうだからだ。
ルナイスも緊張しているが、ルナイスをぎこちなく抱き上げている父、ルグノスと抱き方を指導しているヘレナ(ばぁや)の心臓もバクバクとせわしなく動いている。
アドルファスが産まれた時はルグノスも忙しい時期で、産まれたばかりのアドルファスを抱き上げる機会は片手ほどしかなかった。
アリアが居たし、ルグノスはアリアに抱かれているアドルファスの頭をそっと撫でたりするくらいしかしてこなかった。
更にアドルファスが産まれてからルナイスが産まれるまでに7年という月日が経っている。
産まれたばかりの赤子を抱くのは初めてだと言っていいレベルだ。
「旦那様、しっかりと首を支えませんと!」
「さ、支えている。」
「貴方が支えているのは首でなくて頭なのです!」
先ほどからヘレナが何度も首を支えるようにルグノスに指導するがどうにも上手くいかない。
ルナイスは不安を感じながらもどうにかできないかと考え、そして決意する。
「っ!」
「お、落とさないでください!!」
ルナイスはウゴウゴと体を動かし自らフィットする位置へと頭をどうにかこうにか動かした。
赤ん坊のルナイスにはとんでもない重労働であったし、正直座っていない首をどうにかしようと無理に動かしたので首が痛い。
けれどやっと安定した体制になって一安心し、強張っていた体から力を抜き父親であるルグノスに身を任せると体が楽になった。
「まぁ!天才です!ルナイス様は天才です!」
「…なるほど。こちらも安定し抱きやすくなった。」
ヘレナは自ら落ち着く位置へ動いたルナイスに感動し、ルグノスは抱き方の正しい位置を理解した。
重労働をしたルナイスは睡魔に襲われ、抵抗することなく安定した父の腕の中で眠りについた。
「大丈夫だとは思いますが、念のため回復魔法を首に。」
ヘレナは心配そうにルナイスを見つめ、少し痛みを和らげる程度にしか使えないが回復魔法をかけた。
眠りながらも痛みが和らいだことでルナイスの体から更に力が抜けた。
ルグノスは腕の中で眠る息子を見て何とも言えない感情を覚えた。
改めて腕の中に居る命が、自分の子であるのだと認識した。
もちろんルナイスが自分の子であることを疑っていたわけではない。
アリアは誠実であったし、彼女が不貞を働くことなど考えつかない。
だが、恐らく自身が腕の中の存在の父親であるという意識が薄かったのだ。
『守らねば』
今腕の中にある小さな命を自分は守らなければならないという使命感を抱き、思わずルナイスを抱く力が強くなってしまったが、もぞもぞっと動いたルナイスに慌てて力を緩めた。
「ふふ…もうルナイス様を抱っこするのは大丈夫そうですね。」
ヘレナが赤子を抱くルグノスを温かい目で見つめ微笑む。
ルグノスもルナイスの寝顔を見て、自然と口角が上がっていた。
end
ルグノス25歳
ルナイスの小さな心臓はバクバクとせわしなく動いていた。
なぜなら今自分を抱き上げている人物の抱き方がぎこちなく、今にも地面へ叩きつけられそうだからだ。
ルナイスも緊張しているが、ルナイスをぎこちなく抱き上げている父、ルグノスと抱き方を指導しているヘレナ(ばぁや)の心臓もバクバクとせわしなく動いている。
アドルファスが産まれた時はルグノスも忙しい時期で、産まれたばかりのアドルファスを抱き上げる機会は片手ほどしかなかった。
アリアが居たし、ルグノスはアリアに抱かれているアドルファスの頭をそっと撫でたりするくらいしかしてこなかった。
更にアドルファスが産まれてからルナイスが産まれるまでに7年という月日が経っている。
産まれたばかりの赤子を抱くのは初めてだと言っていいレベルだ。
「旦那様、しっかりと首を支えませんと!」
「さ、支えている。」
「貴方が支えているのは首でなくて頭なのです!」
先ほどからヘレナが何度も首を支えるようにルグノスに指導するがどうにも上手くいかない。
ルナイスは不安を感じながらもどうにかできないかと考え、そして決意する。
「っ!」
「お、落とさないでください!!」
ルナイスはウゴウゴと体を動かし自らフィットする位置へと頭をどうにかこうにか動かした。
赤ん坊のルナイスにはとんでもない重労働であったし、正直座っていない首をどうにかしようと無理に動かしたので首が痛い。
けれどやっと安定した体制になって一安心し、強張っていた体から力を抜き父親であるルグノスに身を任せると体が楽になった。
「まぁ!天才です!ルナイス様は天才です!」
「…なるほど。こちらも安定し抱きやすくなった。」
ヘレナは自ら落ち着く位置へ動いたルナイスに感動し、ルグノスは抱き方の正しい位置を理解した。
重労働をしたルナイスは睡魔に襲われ、抵抗することなく安定した父の腕の中で眠りについた。
「大丈夫だとは思いますが、念のため回復魔法を首に。」
ヘレナは心配そうにルナイスを見つめ、少し痛みを和らげる程度にしか使えないが回復魔法をかけた。
眠りながらも痛みが和らいだことでルナイスの体から更に力が抜けた。
ルグノスは腕の中で眠る息子を見て何とも言えない感情を覚えた。
改めて腕の中に居る命が、自分の子であるのだと認識した。
もちろんルナイスが自分の子であることを疑っていたわけではない。
アリアは誠実であったし、彼女が不貞を働くことなど考えつかない。
だが、恐らく自身が腕の中の存在の父親であるという意識が薄かったのだ。
『守らねば』
今腕の中にある小さな命を自分は守らなければならないという使命感を抱き、思わずルナイスを抱く力が強くなってしまったが、もぞもぞっと動いたルナイスに慌てて力を緩めた。
「ふふ…もうルナイス様を抱っこするのは大丈夫そうですね。」
ヘレナが赤子を抱くルグノスを温かい目で見つめ微笑む。
ルグノスもルナイスの寝顔を見て、自然と口角が上がっていた。
end
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