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第2章

暇な時の来訪者

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あの悪鬼事件から一週間。

僕は学園を休学し、家でのんびりと過ごしている。




にぃ様に褒めてもらった後、眠ってしまった僕が目覚めたのはあの事件の日から2日経った後。

今まで抑え込んでいた魔力を開放し、無理に力を使ったせいで体が限界突破してたみたい。
ちょっと内臓傷ついてたよってウー先生に言われてびっくり。



意識を失った僕はにぃ様によって迅速に王都の国営病院に連れていかれたそう。

そこで簡単な治療を受け(僕の体の中で魔力が粗ぶっていて危険だった為、簡単な治療しかできなかったらしい)ある程度落ち着いたところで、駆け付けたとーさまによって転移魔法でお家へ連れて帰ってもらったそうな。


お家でウー先生に診てもらったら内臓傷ついてるっていうし、僕は揺すっても目を覚まさないしで、とーさまもにぃ様も凄く心配したって。
ちょっと涙ぐみながら言われた。




僕としては目が覚めた初日だけ体が重たいなぁ…くらいだったので、次の日からのんびりと敷地内を散歩している。





学園は今事件の処理があって生徒皆お休みになったみたいで、テトラ君のようにお家が遠くて寮に住んでいる子達は寮内で過ごしているらしい。

寮も学校から近いけど、きちんと騎士も巡回しているし、お家の方からも使用人と護衛が送られてきたから大丈夫だってテトラ君から魔法郵便で連絡があった。



テトラ君は疑似回復魔法が解かれた瞬間に体へのダメージが一気にきて、すぐにちゃんと回復魔法ヒールを掛けてもらったけど、やっぱり一日は起き上がれなかったみたい。

そしてテトラ君経由で回復師さんから今回は仕方ないけど、疑似回復魔法は自分にも他人にもあまり使わない方がいいですよと言われた。



大きい怪我の時ほど魔法を解除した時の反動が大きいから危険なのだ。
テトラ君には申し訳ないことをした…そう思いばぁやにテトラ君宛に以前ノヴァから大量に貰っていた身体強化ブースト付与ふだを20枚ほど贈るようにお願いした。

ばぁやは仕事が早いので、それはすぐに届けられ、そしてすぐにテトラ君から少し興奮した様子のお礼のお手紙が届いた。








学園は休学期間を二週間と定めているらしく、後一週間はお家に待機。


とーさまは学園のこともあったりで更にお仕事が忙しいらしく、お家に帰ってこられない日が続いている。
ワイアットが毎日着替えと食事を届けているけど、ちゃんと眠れているのだろうか?

にぃ様もお家待機なのだが、事情聴取に来る騎士達とお話したり、とーさまの変わりに領地のことをしたりと大変そう。




のんびり暇にしているのは僕だけ。


「ルナイス様。」



お部屋の大きな窓際の絨毯の上でユエを抱えてゴロゴロしているとばぁやが傍に来て僕を呼んだ。

声を出す気にもならない僕は転がったまま、ばぁやを見て首を傾げる。




「まぁまぁ…アーバスノイヤーのご子息様がその様なご様子では旦那様が嘆かれますよ。」


「…はぁぃ…で?なぁに?」



ゴロゴロ転がる僕を見てばぁやは呆れた様子で小言を言う。

とーさまとにぃ様のばぁやも務めていたので、ばぁやは強い。逆らえない。


素直にゴロゴロを辞めて、上半身を起こした僕を見て満足そうに頷いたばぁやが告げた言葉に僕は飛び上がった。






「ノヴァ様が起こしになられました。」


「っ!ほんと!?談話室?談話室に居る!?」


確かお手紙は届いていなかったから、急遽来たのだと思う。

ノヴァが来たことに喜んでいたが、もしかしたらとっても緊急な真剣なお話かもしれない。


興奮していた自分を落ち着かせて、ばぁやが手渡してくれた洋服に着替える。




「談話室でお待ち頂いてますよ。丁度こちらの方にいらっしゃったようで、旦那様から坊ちゃまが屋敷で暇にしていると聞いて急遽おいでになられたようです。」


ばぁやは着替えた僕のボタンやら髪の毛やらなんやらかんやらをテキパキと整えながらノヴァの急な来訪の理由わけを教えてくれた。

ばぁやの言葉にどうやら緊急を要するようなことではないのだと分かりほっと息をつく。





ばぁやのチェックが終わって談話室へ行くと、ノヴァは何かの紙をじっと読み込んでいた。

しかし、部屋に到着した僕に気がつくとすぐに顔をあげてほんのりと微笑んでくれた。



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