72 / 351
第2章
地獄の自己紹介
しおりを挟む登校日2日目。
今日もにぃ様と馬車に揺られて登校した。
学園に到着してすぐに感じた違和感。
昨日向けられていた不躾な視線がほとんどなくなっている。
チラッチラッと見てくる生徒はいるけれど、鋭くて嫌な視線はなくなっている。
にぃ様を見上げれば、にぃ様は「もう気にしなくて良さそうだな。」と笑った。
何を?とか分からないことは沢山あるけれど、にぃ様が笑っているから大丈夫ってことだろうと解釈する。
今日はもう気にしなくていいからなのか、にぃ様とは下駄箱付近でお別れ。
にぃ様は上学年なので、下学年の僕の校舎とは大分離れているのだけど、わざわざ下学年の校舎の近くまで来てくれるので甘やかされているなぁっと改めて感じる。
教室の前で今度はヨハネスともお別れ。
「友人づくり頑張って下さい」と言われて、うむっと頷いてみせたけど、教室に入った瞬間「無理め」とつい呟いてしまった。
何故なら教室に入った僕を見るなり、皆がさっと目を逸らしたからだ。
いじめか?入学2日目で?
とりあえず、教室の後ろにある自身のロッカーの中に荷物をしまい、指定されている自分の席に着席してみる。
僕が教室に入るまでは楽しくお話していたんだろう周りが今はこそこそっと小さな声しかださない。
この空気、どうしたらいいの?とついにぃ様に縋りたくなるけれど…ぐっと我慢。
ガラッ
「朝礼をします。席に着いてください。」
そんな空気の中教室に現れたグリシャム先生のお陰で皆が動き出して少しだけ空気が和らいだ。
「まずは1人ずつ自己紹介をして頂いて出席をとっていきます。名前の他に好きなこと、嫌いなもの、伝えておきたいこと等一言お願いしますね。」
グリシャム先生のそんな言葉に生徒からは 不満の声が上がる。
「面倒臭」
「恥ずかしいよ」
などと声が上がる教室はグリシャム先生の一声でしんと静まり返る。
「この無駄な時間が面倒で、声を上げて得意気な顔をしていることが恥ずかしいことです。はい、チャチャと始めてください。そこの席から順番に。」
なかなか辛辣である。
8歳の子供に容赦ない。
声を上げていた子たちは顔を青ざめさせたり、赤くしたり…しかし誰もそれ以上声を上げることなく気まずい空気の中地獄の自己紹介がはじまった。
「テトラ・ハデス。強くなるためにこの学園に来た。都心からは離れている所で育ったので都心のルールがまだよく理解できていないかもしれない。その時は遠慮せず言って貰えると助かる。以上。」
微妙な空気をものともせず自己紹介を終えたテトラ・ハデス君。
ハデス辺境伯のご子息なのだろうな。
たまーにとーさまの口からハデス辺境伯様の名前が出ることがあるからまったく知らないお家って訳でもない。
僕がハデス辺境伯当主様にお会いしたことはないけど…。
テトラ様の自己紹介で皆が気を取られていたけど、直ぐにグリシャム先生に促されて次々と自己紹介が進んでいく。
そして遂に僕のターン。
「ルナイス・アーバスノイヤーです。友人を募集中です。よろしくお願いします!」
うん。
ここで募集中だと宣言すれば、ウェルカム感あって話しかけやすくなったでしょ。
そう思ったのだけど、なんか皆顔逸らす。
失敗したかもっと思いながら着席して、直ぐに後ろの席の子が自己紹介を始める。
とーさま、にぃ様…友人ができるのはまだまだ先かもしれません。
_____________
しばらく更新が空いてしまったので、2ページ更新いたしました。
384
お気に入りに追加
3,109
あなたにおすすめの小説
泣かないで、悪魔の子
はなげ
BL
悪魔の子と厭われ婚約破棄までされた俺が、久しぶりに再会した元婚約者(皇太子殿下)に何故か執着されています!?
みたいな話です。
雪のように白い肌、血のように紅い目。
悪魔と同じ特徴を持つファーシルは、家族から「悪魔の子」と呼ばれ厭われていた。
婚約者であるアルヴァだけが普通に接してくれていたが、アルヴァと距離を詰めていく少女マリッサに嫉妬し、ファーシルは嫌がらせをするように。
ある日、マリッサが聖女だと判明すると、とある事件をきっかけにアルヴァと婚約破棄することになり――。
第1章はBL要素とても薄いです。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
婚約破棄された王子は地の果てに眠る
白井由貴
BL
婚約破棄された黒髪黒目の忌み子王子が最期の時を迎えるお話。
そして彼を取り巻く人々の想いのお話。
■□■
R5.12.17 文字数が5万字を超えそうだったので「短編」から「長編」に変更しました。
■□■
※タイトルの通り死にネタです。
※BLとして書いてますが、CP表現はほぼありません。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
ギャルゲー主人公に狙われてます
白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる