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第2章
担任は決して生徒に好かれるタイプではなさそう。
しおりを挟む下を向いて周りの視線から耐えているとジジジという音の後、渋めの男の人の声が体育館内に響き渡った。
「本日はお忙しい中ご来賓頂きまして誠にありがとうございます。そして新入生の皆さん、ご入学おめでどうございます。これからこの学園で助け合える友を得、勉学に励み将来の可能性を広げ、理不尽に打ち勝てる力を身に着けていってもらいたいと思っております。よろしくお願いします。」
舞台の隅でそう言って挨拶を終えた先生らしい人は一礼をして舞台袖にはけて行った。
そしてその先生と入れ替わりで、今度は舞台の中央に立った人。
確かあの人はこの学園の学園長。
この学園ができる前は、教会などで無償で子供達に教育をしていたのだとか。
教育というのは学だけのことではなく、処世術なども教えていたそうだ。
例えば、人の物を盗んではいけない。なぜなら~という風に何をやってはいけないのか…そしてそれをすると何故いけないのかという理由までしっかり教えていたという。
根っからの教育者だ。
そんな風に話されている学園長は確かに威厳のある人だった。
これだけの人を目の前にしても少しも緊張をしている様子もなく、堂々としており落ち着いている。
「私は長年子供達に色んなことを教えてきた。多くの教え子達はこの学園を巣立ち、国に貢献したり、あるいは外国で偉業を成し遂げたり。様々な形で私を楽しませてくれている。しかし…中には残念なことに、悪の道に足を進めて行く者もいる。君達の中から悪の道へ足を踏み入れ、恐ろしい猛獣に噛み千切られないことを真に願っているぞ。」
学園長はそう言って舞台袖にはけて行った。
最後の方に目がばっちし合ったように感じたけれど気のせいだろうか?
もし気のせいでないのなら…
学園長は僕をもしかして問題を起こすような厄介な生徒だと思っているのだろうか?
初対面で?
後でにぃ様にご相談してみよう。
その後も長ったらしく話をする教員はおらず、学園での大きな注意点だったり、学業の大まかな説明だったりを受けてそれぞれ決められたクラスへ移動するように指示が出た。
それぞれのクラスを案内してくれるのは教員ではなく、在校生のようで、僕の所属するクラス1組を案内してくれるのはどうやらにぃ様のよう。
嬉しくて駆け寄りたい気持ちだったけど、今はそのように振る舞うべきではないと理解している為ぐっと堪えて、お行儀よく並び案内されるままに歩いて行く。
すでに仲のいい友人同士でくっついて話している人が多くいて、僕みたいに一人で黙って歩いている生徒はまばら。
何かやらかした記憶はないが、ひしひしと感じる「関わってくれるな」オーラが凄いので、僕から周りの生徒に話をかけることもできずとぼとぼと歩くしかなかった。
別に誰かといないと不安なタイプではないので、一人で行動するのはいいのだけど…これからあるだろうグループでの授業を思うと少しばかり憂鬱ではある。
きっと誰も僕と組みたくなくて一人ぽつんと弾かれていることだろう…。
鬱鬱としながら辿り着いた教室で自分の名前が表示されている机に座り机の上に置かれていた教材をチェックしていく。
にぃ様は僕達を案内し終わると颯爽と教室を出て行かれたのでもう居ない。
一通り教材のチェックと片付けが終わった頃、教室に担当の教師だろう人が現れて、バラけて話し込んでいた学生達がささっと自身の席へと戻っていく。
「今日からとりあえず一年、1組の担当となりました、エドガー・グリシャムです。君達が面倒ごとを起すような生徒でないことを期待しています。では、配布されている教材に不備がないか確認します。不備があったものは速やかに挙手するように。」
自己紹介をした担当の教師はきちんと僕達と一線を引いて、教師と生徒という立場をはっきりとさせた。
そんなグリシャム先生に対して顔を顰めている生徒が数名いたが、先生は気にする様子もなく淡々と配られている教材を口にしていく。
熱血教師とかでなかったので僕は万々歳だけど、なかなかにクールな先生故に生徒たちからは好かれにくいだろうグリシャム先生は配られた教材に不備がなかったことを確認し終わると、今日はもう解散と告げて教室をばばばっと出て行った。
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