67 / 398
第2章
ばぁ!
しおりを挟む嵐は突然やってくる。
学院入学を明日に控えた今日。
アーバスノイヤー家の屋敷は朝から予想外のお客様に大騒ぎです。
「だから何度も言っているだろう!あの小僧を使って魔力晶を作り出し我が領土を守れと!」
「ですから、何度も言っています。マーフィー領は貴方のものではなくなりました。今は貴方の娘アニペ・マーフィーが当主です。そして、貴方がアーバスノイヤーの領土に足を踏み入れることは禁じられているのですが…どうやら裏切り者が居るようですね。」
お爺様再来。
騒ぎ立てるお爺様と静かなとーさまですが、どちらも激おこ。
僕はこっそり応接間の窓がある茂みから盗み聞き中。
傍にはヨハネスが仕方ないという感じで部屋からは見えない位置に立ち、僕を見守ってくれている。
「ヨハネス、裏切り者がいるって。」
「そのようですね。あの人が来てからすぐに警備隊が動いてます。」
裏切り者って誰だろう?
まさかばぁややヨハネスなんかじゃないよね?
うん。ありえないな。
ばぁやはとーさまの時から仕えてくれていて、とっても硬い忠誠心があると言っていたし、ヨハネスは強い人がすきだから自分よりも弱いお爺様には付かない。
誰なんだろー
「舐めるなよぉお!!貴様などいつでも殺せるのだからなぁ!」
ヨハネスと誰だろうねぇって話してたら今までよりも大きなお爺様の怒号が聞こえてきて慌てて窓から覗くとお爺様が机を持ち上げていた。
え?
お爺様元気。
とーさま含め扉の傍で控えていたワイアットも呆れ顔だ。
全然脅されてない。
あ!いいこと思いついた!
「!ルナイス様!」
どぼんと影の中に入り込んでさささーっと移動。
ノヴァとの訓練で大分闇魔法をものにしたのだ。
今こそ、その成果を見せる時!!
せーっの!
「ばぁ!!」
「ひぃ!」
ガッシャーン!!
「…あーあ。」
「ルナイス…何をしている。」
「悪口言ってる本人が突然現れたらびっくりして逃げ帰るかと思ったのですが…予想と結果が違いました。」
ちょっと不満。
予想では「ひぃ!覚えてろー!」て此処から出ていくはずなのに、なに自分が持ち上げてた机の下敷きになってるの!
影から伸び出してお爺様をびっくりさせようっていう子供のちょっとした悪戯じゃないか。
コンコン
「失礼致します!ルナイス様を回収しにまいりました!」
慌てた様子のヨハネスがすっ飛んできて僕を小脇に抱えて深くとーさまに頭を下げる。
持ち方よ。
当主の前で当主の次男小脇に抱えるなんて…
「よい。ルナイスも今回は相手がこれだから良かったものの、客人に悪戯してはいけない。」
「大丈夫です。これだから悪戯してもよいと判断したんです。」
「ならばよい。」
「良くないわ!!わ、儂を誰だと思っておる!そこの者共も!はよ儂を救出せんか!!」
あ、生きてた!
良かった良かった。
死因が僕の悪戯キッカケの事故死なんて目覚めが悪いもんね。
結局お爺様は禁止命令に違反した罪でお縄となり、裏切り者は見つかったらしく適切な処分を受けたと聞いた。
裏切り者が誰だったか教えて貰おうと思ったけど、誰も教えてくれなくて、でもよく僕の部屋の近くの廊下の窓を拭いていた使用人を見かけなくなったからたぶん彼だったんだろうと推理している。
514
お気に入りに追加
3,268
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?

婚約者の恋
うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。
そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した!
婚約破棄?
どうぞどうぞ
それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい!
……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね?
そんな主人公のお話。
※異世界転生
※エセファンタジー
※なんちゃって王室
※なんちゃって魔法
※婚約破棄
※婚約解消を解消
※みんなちょろい
※普通に日本食出てきます
※とんでも展開
※細かいツッコミはなしでお願いします
※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる