王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰

文字の大きさ
上 下
37 / 398
第1章

番犬そして暗い部屋

しおりを挟む
夜中に彼等の威嚇する鳴き声を耳にしたことは何度もある。

だけど、僕が初めて彼らの前に立った時から彼らはしっぽをちぎれんばかりに振り姿勢を低くして僕を倒さないように優しく身体中舐めてきた。


なんで?と疑問は今もあるけど、嬉しいので僕も地面に座って彼等を受け入れる。




黙って座り犬に舐められまくる3歳児と僕を囲って舐めまくる犬たち。

いつも犬達をお世話してる調教師は何とも言えない顔でそんな僕達を見ている。


ヨハネスも微妙なお顔してるけど、座る僕のお尻の下にさっとハンカチを引いてくれている。





犬達が満足するまで舐められる僕は、偶に止まらない犬達にべっちょべっちょにされ見かねたヨハネスに抱き上げられる。


それに満足してない犬達はヨハネスに向かって吠えまくる。



ワン!

グルルルル


この時の顔は少し番犬さが垣間見える。



「またくるね。」

でも僕が手を振るとさっきまでの顔が嘘の様に可愛い顔をしてキャンと鳴く。

そのあまりの変わり様が面白くて可愛い。


ヨハネスはうんざりしてるけど。





ヨハネスに抱かれたまま、犬小屋を出ようとした時急に空気が変わった。

ピリッとしてヨハネスも調教師も鋭い目をしている。


犬達も低く唸り、リードを外された瞬間犬小屋の外に飛び出して行った。




グゴォォォオォォオ


犬達が飛び出して行ってすぐに低い唸り声が聞こえてきた。

その声には魔力が混じっているのか地面が大きく揺れた。




「ルナイス様、避難室へ。」

ヨハネスはそう言って僕を抱えたまま走り出す。


屋敷の方へ向かう僕達とは逆に屋敷から外に出ていく使用人達とすれ違ったが、皆険しい表情をしていた。

チラリと見えた屋敷の門付近には大きな黒いドロドロとした何かと、それを囲い剣を使っての攻撃を仕掛ける者や魔法を使っている者などが居た。


その中には先ほど犬小屋の外へ飛び出していった犬達もいて、彼等も魔力を使ったりしながら大きな黒いドロドロした何かへ勇敢に挑んでいる。





「坊ちゃま!ご無事ですか!」

屋敷に入ってすぐにばぁやが僕達の所へ駆け寄ってきて、僕に怪我がないことを確認してすぐにスタスタと屋敷の奥へ歩き出す。

ヨハネスは避難室と言っていたが、僕は屋敷の中にそんな部屋があることを知らなかった。

ばぁやは普段は入ってはいけないと言っていた地下へ続く階段を降りていく。


そこは真っ暗で明かり一つないけど、ばぁやもヨハネスも明かりを灯すことなくズンズン進んでいく。

暗すぎてどこに何があるのか僕には分からないけれど、ばぁやもヨハネスもまるで見えているように歩いて行く。



しばらく歩いて辿り着いたのは、少しほこりっぽい部屋。

此処でもばぁやもヨハネスも明かりをつけることはないようだ。



「坊っちゃま、暗いですがすぐ側におりますので安心してくださいね。」

ばぁやの声がしてすぐ側にちゃんとばぁやが居ることが分かる。

暗いのは平気だ。
闇属性だし。


でも闇属性故に僕にはこの暗闇に不安があった。


それは不意に闇の中に体が沈んでしまいそうになることだ。





ヨハネスに抱えられているから何とか闇に沈まないでいられるけど、離されたら沈む自信が僕にはある。


「ヨハネス。」


ヨハネスに離さないで欲しくて、名前を呼びぎゅっと抱きつくと僕が怖がっていると思ったのか「大丈夫です」と声をかけられより強く抱きしめられた。


ヨハネ達が心配してるのとは違う理由で怖いんだけど、それは今言わなくてもいいだろう。




しおりを挟む
【お知らせ】登場人物を更新しました。世界観など設定を公開しました。(R6.1.30)
感想 42

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

処理中です...