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第1章
弟sideアドルファス
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ルナイスと離れて領地運営の勉強などをして夕飯の時。
今日は父上は仕事で帰って来れないらしく、僕とルナイスの二人での夕飯なのだが食堂にはルナイスの姿がなかった。
「アドルファス様…ルナイス様は閉じ籠ってしまわれて部屋から出てきてくれそうにございません。」
困った顔でそう言ってきたのはばぁや。
小さい頃は僕もお世話になった人で父上の第二の母のような存在の人でもある。
「見に行こう。」
偶にルナイスは部屋に閉じ籠ってしまう時がある。
全身で他者を拒否する姿は見ていて心が痛くなる。
どうにかしてあげたいと思うのに、どうすることもできない自分の不甲斐なさに泣きそうになる。
ルナイスが閉じ籠ってしまっている時は、扉をノックしても意味がないので極力気配を消して扉を開ける。
「なっ!!」
「そんな!!」
そこには驚きの光景があった…否、光景ではない。
扉の向こうには何もなくて、只々真っ黒な空間が広がっている。
部屋が暗いのではない。
ブラックホールのようにそこには闇しかない。
「っすぐに父上を!!」
「は、はい!!」
頭の中はパニックで、今すぐにでもこの暗闇の中に駆け込み、ルナイスを探し出したいが何とかその気持ちを堪えてすぐさま使用人達に支持を出す。
真っ黒な空間からは仄かにルナイスの魔力を感じる。
この中にルナイスがいることは間違いない。
もしかしたらこれはルナイスの魔法?
もしくは魔力暴走だろうか?
「…ノヴァも呼んだ方がいいかもしれない。」
「すぐに!」
ぼそりと呟いた言葉にばぁやも何か思うところがあったのか、すぐにノヴァを呼ぶ為走ってくれた。
15分ほどして、ノヴァの魔力を屋敷の外に感じてすぐにノヴァが部屋の前まで来た。
「これは…」
部屋の状況を見たノヴァは何か心当たりでもあるのか顎に手を当てて考え出す。
そうしている今度は父上の魔力を屋敷の外に感じた。
父上はすぐに部屋の前まで来ると部屋の状態を見て目を見開いた。
「…アドルファス、よく飛び込まずに冷静な判断をしてくれた。」
父上が呆然としたのは一瞬だけで、部屋の前で立ち尽くすしかない僕の頭を撫でた。
ルナイスを探し出したくて焦っていた気持ちがほんの少しだけ和らぐ。
「ノヴァ、どうだ?」
「…この空間は恐らくルナイス様の一種の魔力暴走が原因かと。…亜空間…入るのは危険…ひとつだけルナイス様の元に辿り着けるかもしれない方法がある。」
ノヴァはそう言うと僕達に何を言うでもなく突然姿を消してしまった。
「はぁ…ヘレナ、ワイアット、サロンを整えておくように。アドルファス少しでも食べておけ。」
父上は突然消えたノヴァに大きなため息を吐き、使用人達に支持を出し僕に食事を促す。
正直ご飯何て食べる気になれないが、それは父も分かっていることだろう。
それでも食べておくように僕に言うのだからと食堂に行き席につく。
もそもそと食べているとすぐ近くに料理がおかれ父が隣に座られた。
こんな近い距離での食事は初めてで戸惑った。
が、すぐに不安な僕を気遣って父上が近くで一緒に食事をしてくれようとしているのだと分かりほっと息を吐き出した。
「今私達に出来ることはない。悔しいがな。」
「…はい。」
父上はそう言ってお肉を豪快に頬張る。
僕も真似をして肉を頬張る。
食事を終えてサロンでノヴァがルナイスを連れて帰ってくるのを待つ。
小さい頃からルナイスは赤ん坊なのに大人達の言っていることを理解しているように感じた。
僕でも理解の難しい話もルナイスは分かっているような反応をすることが何度かあった。
僕や父上、今屋敷にいる者達は只ルナイスを可愛いと思っているがルナイスが産まれてから暇を出した使用人の中にはそんなルナイスを不気味だと話しているのを何度か聞いた。
普通じゃない
自分たちを雇っている貴族の子を屋敷内でそんな風に噂する使用人は必要ないと言って父上は皆追い出した。
母上を失って父も僕も悲しみに沈んでいた。
そして、母上を失ったことを悲しんでいるのはルナイスも同じだったと思う。
ルナイスは理解しているんじゃないだろうか。
自分が産まれてくる為に母上が死んでしまったのだと…。
ルナイスが何にも掴まらず歩けるようになった頃、剣術の稽古を終えて自室に帰っている途中で母上の部屋の前でじっと立っているルナイスを見た頃がある。
隣にはばぁやが居て、ばぁやは母上の部屋の前でじっと立ち止まるルナイスを心配そうに見守っていた。
どんな思いで今は亡き母の部屋を見ていたのかは、ルナイスの表情からは読み取れなかった。
無表情…とも少し違ったように思う。
あの時はそんなルナイスに声をかける勇気はなくて…結局少し遠回りをして自室に帰った。
あの亜空間がルナイスの魔力暴走によって生み出されたものなのだとしたら、今ルナイスはどんな思いを抱えているのだろう。
今は無理でも、いつかはルナイスが抱えているものを僕に話してくれる日はくるのだろうか__
今日は父上は仕事で帰って来れないらしく、僕とルナイスの二人での夕飯なのだが食堂にはルナイスの姿がなかった。
「アドルファス様…ルナイス様は閉じ籠ってしまわれて部屋から出てきてくれそうにございません。」
困った顔でそう言ってきたのはばぁや。
小さい頃は僕もお世話になった人で父上の第二の母のような存在の人でもある。
「見に行こう。」
偶にルナイスは部屋に閉じ籠ってしまう時がある。
全身で他者を拒否する姿は見ていて心が痛くなる。
どうにかしてあげたいと思うのに、どうすることもできない自分の不甲斐なさに泣きそうになる。
ルナイスが閉じ籠ってしまっている時は、扉をノックしても意味がないので極力気配を消して扉を開ける。
「なっ!!」
「そんな!!」
そこには驚きの光景があった…否、光景ではない。
扉の向こうには何もなくて、只々真っ黒な空間が広がっている。
部屋が暗いのではない。
ブラックホールのようにそこには闇しかない。
「っすぐに父上を!!」
「は、はい!!」
頭の中はパニックで、今すぐにでもこの暗闇の中に駆け込み、ルナイスを探し出したいが何とかその気持ちを堪えてすぐさま使用人達に支持を出す。
真っ黒な空間からは仄かにルナイスの魔力を感じる。
この中にルナイスがいることは間違いない。
もしかしたらこれはルナイスの魔法?
もしくは魔力暴走だろうか?
「…ノヴァも呼んだ方がいいかもしれない。」
「すぐに!」
ぼそりと呟いた言葉にばぁやも何か思うところがあったのか、すぐにノヴァを呼ぶ為走ってくれた。
15分ほどして、ノヴァの魔力を屋敷の外に感じてすぐにノヴァが部屋の前まで来た。
「これは…」
部屋の状況を見たノヴァは何か心当たりでもあるのか顎に手を当てて考え出す。
そうしている今度は父上の魔力を屋敷の外に感じた。
父上はすぐに部屋の前まで来ると部屋の状態を見て目を見開いた。
「…アドルファス、よく飛び込まずに冷静な判断をしてくれた。」
父上が呆然としたのは一瞬だけで、部屋の前で立ち尽くすしかない僕の頭を撫でた。
ルナイスを探し出したくて焦っていた気持ちがほんの少しだけ和らぐ。
「ノヴァ、どうだ?」
「…この空間は恐らくルナイス様の一種の魔力暴走が原因かと。…亜空間…入るのは危険…ひとつだけルナイス様の元に辿り着けるかもしれない方法がある。」
ノヴァはそう言うと僕達に何を言うでもなく突然姿を消してしまった。
「はぁ…ヘレナ、ワイアット、サロンを整えておくように。アドルファス少しでも食べておけ。」
父上は突然消えたノヴァに大きなため息を吐き、使用人達に支持を出し僕に食事を促す。
正直ご飯何て食べる気になれないが、それは父も分かっていることだろう。
それでも食べておくように僕に言うのだからと食堂に行き席につく。
もそもそと食べているとすぐ近くに料理がおかれ父が隣に座られた。
こんな近い距離での食事は初めてで戸惑った。
が、すぐに不安な僕を気遣って父上が近くで一緒に食事をしてくれようとしているのだと分かりほっと息を吐き出した。
「今私達に出来ることはない。悔しいがな。」
「…はい。」
父上はそう言ってお肉を豪快に頬張る。
僕も真似をして肉を頬張る。
食事を終えてサロンでノヴァがルナイスを連れて帰ってくるのを待つ。
小さい頃からルナイスは赤ん坊なのに大人達の言っていることを理解しているように感じた。
僕でも理解の難しい話もルナイスは分かっているような反応をすることが何度かあった。
僕や父上、今屋敷にいる者達は只ルナイスを可愛いと思っているがルナイスが産まれてから暇を出した使用人の中にはそんなルナイスを不気味だと話しているのを何度か聞いた。
普通じゃない
自分たちを雇っている貴族の子を屋敷内でそんな風に噂する使用人は必要ないと言って父上は皆追い出した。
母上を失って父も僕も悲しみに沈んでいた。
そして、母上を失ったことを悲しんでいるのはルナイスも同じだったと思う。
ルナイスは理解しているんじゃないだろうか。
自分が産まれてくる為に母上が死んでしまったのだと…。
ルナイスが何にも掴まらず歩けるようになった頃、剣術の稽古を終えて自室に帰っている途中で母上の部屋の前でじっと立っているルナイスを見た頃がある。
隣にはばぁやが居て、ばぁやは母上の部屋の前でじっと立ち止まるルナイスを心配そうに見守っていた。
どんな思いで今は亡き母の部屋を見ていたのかは、ルナイスの表情からは読み取れなかった。
無表情…とも少し違ったように思う。
あの時はそんなルナイスに声をかける勇気はなくて…結局少し遠回りをして自室に帰った。
あの亜空間がルナイスの魔力暴走によって生み出されたものなのだとしたら、今ルナイスはどんな思いを抱えているのだろう。
今は無理でも、いつかはルナイスが抱えているものを僕に話してくれる日はくるのだろうか__
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