BL短編集【二話目執筆中】

薄明 喰

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それでも君と(旧:君が僕から離れても)

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透鯉とおり。帰ろ」


「あ、一汰君!うん、帰ろ」




一汰君から告白されて早一ヶ月。


彼は静かな人で、そして凄く優しく僕に触れてくれる人だと知った。
静かだけど無口なわけじゃなく、静かに色んな話をしてくれるし、話を聞いてくれる。

騒がしいのが好きじゃない僕は、そんな彼と話をしながら過ごす時間が凄く心地良くて好き。




数日前に一汰君の目の前で僕を「こんな不細工でダサい奴、本当に好きなのか?考え直せ」と言った恐らく彼の友人であろう見知らぬ男子生徒に一汰君が静かに怒ったのをきっかけに僕への悪口を聞こえるように言ってくる人は随分減った。

偶に廊下でわざとぶつかってくる人はいるけど…。
あれ痛いなっとは思うけど、どういう意味があってやってるんだろ?




あの時の一汰君は怖かったけど、恰好良かった。

「俺が誰を好きになるかまでお前達に決められる筋合いはない」

っとはっきりと言ったんだ。


確かにその通りって思った。

誰かを好きだと思う気持ちは他人が決めれるようなものじゃないし、僕がこの先もし一汰君とお付き合いすることになったとして、そのことを他人にとやかく言われる筋合いはないと僕も思う。










「一汰君。本屋さんに寄ってってもいい?」

「あぁ」


帰り道、そういえば続けて買っている漫画の新刊が出るんだったと隣を歩く一汰君に寄り道をしてもいいかと尋ねると嫌な顔せず頷いてくれる。

本屋さんに入ると鼻を刺激する本屋さん特有の紙と印刷のにおいが好きだ。
目一杯その場の空気を吸い込む。

これが古書店になると空気を吸い込んだ瞬間咳き込むので、新書を置いてある本屋さんでしかできないことだ。





「僕漫画を買うんだけど、他の所見てる?」

「いや、一緒に行く」


漫画を置いてあるコーナーを指さして言うと、一汰君は僕と一緒に行くと着いて来てくれた。
他に見たいのある?と聞いたら今はないって。



「一汰君はあんまり漫画でも本って読まないの?」

「そうだな…漫画はあんまり…調べたいこととかある時だけ買う感じ」


へーっと相槌を打ちながら目的の漫画があるか視線を棚に向けて探す。

頭の隅でちょっと素っ気ない返事になっちゃった…会話続かないって思われてるかもなっと気になったけれど今更言葉を紡いだところで、気を使ったって相手にも伝わっちゃうし変な感じになりそうだよなっと無理に言葉を紡ぐのは止めた。





「あった。じゃあ僕レジに行ってくる。出口らへんで待ってて」

「ん」


目当てのものを発見して一汰君にそう言うと彼は僕の予想に反してちょっと楽しそうな表情で頷き、すっと出口方面へと歩いて行った。

どうやら僕の返事が素っ気なかったこと、彼は気にしてなかったみたい。




漫画を購入して出口付近で待っていてくれた一汰君におまたせと声をかけ、本屋さんから出た。

僕を待っていた一汰君はぼぅっとしていたのだけれど、そんな彼を本屋さんに入る人出る人、ほとんどの人がチラチラと彼を見ていた。
それは「何この人?」ってよく僕が向けられる視線ではなく「誰この格好いい人」って感じの視線だ。

間違いない。




やっぱりどうしてそんな恰好良い人が僕を好きになったんだろう?って不思議な気持ちになるけど、イケメンだろうがブサメンだろうが好みは人それぞれ。

あんな真剣な顔をして告白をしてくれたんだ。
彼が僕を好きな気持ちは疑ってはいない。






「一汰君は今度の土曜日って空いてる?よかったら遊ばない?」

「遊ぶ」


告白してきてくれたのは一汰君で、僕と親交を深めて再度告白するっと言ったのも彼だけれど彼は一緒に帰ろうと誘うばかりでお休みの日に会おうとは誘ってこなかった。

休みの日にまで会いたいと思っていないのか、言い出しにくいのかは分からないけど僕から誘ってみようかなっと声を掛けると食い気味に返事が返ってきて思わず笑ってしまった。



一汰君は自分でもあまりにも即答であったと思ったのか耳を赤くして分かりにくいけど照れているご様子。




思い切って誘ってみてよかったなっとほっこりしながら、ぽつりぽつりと話をして僕達はゆっくりと歩いて帰宅した。








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