8 / 10
8
しおりを挟む
ぴちょんと水上に跳ねた魚に目を奪われる。
透明度の高い水に足をつけてみたい気持ちになった。
「あーくん。あの…」
「ん?あぁ…そうだな。休憩にしようか。」
少し前を歩いていたあーくんの服の裾をくいくいっと引っ張って休憩をしませんかと提案したかったのだが上手く言葉が紡げなくて…
でも、あーくんは僕が言いたいことが分かってくれて、笑って近くの安全そうな場所に荷物を下ろしてくれた。
僕もあの大きな荷物を少しでも持てたらいいのだけど…
非力すぎて逆に足手まとい。
テキパキと野営の準備をするあーくんに洗濯をしてくるねっと告げて川へ近づく。
後ろでクスクスと笑うあーくんの声が聞こえてきてちょっと恥ずかしい。
安全そうな浅瀬の所でまずは川の観察。
濁りのない綺麗な水で、気持ち良さそうに泳ぐ川魚達が沢山いる。
服に石鹸液をつけて川から水を汲み取り服にかけて、ごしごしと擦るとたちまち服が泡まみれになる。
ぐちゅぐちゅと揉み込んで、汚れがしっかり泡に浮かんできたところで川に簡単な魔法陣がついた籠をつけてそこに泡まみれの服を入れると泡が取れお洗濯完了。
流れた泡は籠の中で綺麗な水になって川に戻る。
水をぎゅーっと絞って、パンパンっと皺を伸ばしあーくんの所へ持って行く。
「あーくん。お願いします。」
「はい。洗濯ありがとう。」
「ふふ…どういたしまして!」
服を乾かすのはいつもあーくんにお願いする。
あーくんは魔法が使えて、濡れた服も直ぐに乾かせちゃう。
出来ることが少ない役立たずの僕だけど、何かをするといつもあーくんは「ありがとう」って言ってくれる。
その言葉がいつも嬉しくてニマニマと笑ってしまうんだけど
そんな僕を見て、あーくんもニコニコ笑ってくれるからわー!って叫びたい気持ちになる。
あーくんが乾かしてくれた服を綺麗に畳んで、鞄の中に仕舞い、次に料理をするあーくんに変わって火の番をする。
あーくんが作った火を絶やさないように落ちてる木の枝を拾って継ぎ足す。
少し離れた茂みの所から小動物達が匂いにつられてやって来るけど、彼等が僕達に近づいたことは何故か一度もない。
興味はあるけど、警戒しまくってます!って感じだ。
「お待たせ。ヤト。」
今回も近づいて来ない動物達をぼーっと見ていると、料理を終えたあーくんが僕の前の前に料理を並べてからすぐ横に腰を下ろす。
僕もあーくんもお尻の下にふわふわのクッションを地面に敷いているから痛くない。
「いただきます。」
食べる前の挨拶をしてあーくんが作ってくれた最高に美味しいご飯を口へ運ぶ。
あーくんは野営食だから街の飲食店で食べるご飯の方が美味しいって言うけれど
僕はあーくんが作ってくれるご飯が大好きだ。
昔はあんまり食べることもできなかったし
役に立っていないのに、こうしてご飯を与えて貰えるだけで僕はお腹も心もいっぱい。
「ん?…あ…あーくん。僕のお米の中にお肉入ってます!!」
「ふはっ!気づいたか?ヤトが洗濯してくれてる間に獲物が獲れたんだ。」
「すごい!もったいない!飲み込めない!」
「ゆっくり噛んで食べなさい。」
「ん!」
丸い形にしたお米の塊の中にお肉を見つけ、興奮のあまりちょっと大きな声であーくんにお肉が入っていることをお知らせする。
干し肉はよく食べるけど、こんなに焼きたての柔らかいお肉は久しぶりだ!
あーくんに言われた通り、ゆっくり沢山噛んで食べて、ごちそうさまをしたらふわっと僕の体が浮いて
気づいたらあーくんの胡坐をかいた足の中に居た。
ちょっと汗ばんでいた体がすっきりしているから浄化魔法で綺麗にしてくれたのだと思う。
あーくんはやっぱり凄い人だ。
透明度の高い水に足をつけてみたい気持ちになった。
「あーくん。あの…」
「ん?あぁ…そうだな。休憩にしようか。」
少し前を歩いていたあーくんの服の裾をくいくいっと引っ張って休憩をしませんかと提案したかったのだが上手く言葉が紡げなくて…
でも、あーくんは僕が言いたいことが分かってくれて、笑って近くの安全そうな場所に荷物を下ろしてくれた。
僕もあの大きな荷物を少しでも持てたらいいのだけど…
非力すぎて逆に足手まとい。
テキパキと野営の準備をするあーくんに洗濯をしてくるねっと告げて川へ近づく。
後ろでクスクスと笑うあーくんの声が聞こえてきてちょっと恥ずかしい。
安全そうな浅瀬の所でまずは川の観察。
濁りのない綺麗な水で、気持ち良さそうに泳ぐ川魚達が沢山いる。
服に石鹸液をつけて川から水を汲み取り服にかけて、ごしごしと擦るとたちまち服が泡まみれになる。
ぐちゅぐちゅと揉み込んで、汚れがしっかり泡に浮かんできたところで川に簡単な魔法陣がついた籠をつけてそこに泡まみれの服を入れると泡が取れお洗濯完了。
流れた泡は籠の中で綺麗な水になって川に戻る。
水をぎゅーっと絞って、パンパンっと皺を伸ばしあーくんの所へ持って行く。
「あーくん。お願いします。」
「はい。洗濯ありがとう。」
「ふふ…どういたしまして!」
服を乾かすのはいつもあーくんにお願いする。
あーくんは魔法が使えて、濡れた服も直ぐに乾かせちゃう。
出来ることが少ない役立たずの僕だけど、何かをするといつもあーくんは「ありがとう」って言ってくれる。
その言葉がいつも嬉しくてニマニマと笑ってしまうんだけど
そんな僕を見て、あーくんもニコニコ笑ってくれるからわー!って叫びたい気持ちになる。
あーくんが乾かしてくれた服を綺麗に畳んで、鞄の中に仕舞い、次に料理をするあーくんに変わって火の番をする。
あーくんが作った火を絶やさないように落ちてる木の枝を拾って継ぎ足す。
少し離れた茂みの所から小動物達が匂いにつられてやって来るけど、彼等が僕達に近づいたことは何故か一度もない。
興味はあるけど、警戒しまくってます!って感じだ。
「お待たせ。ヤト。」
今回も近づいて来ない動物達をぼーっと見ていると、料理を終えたあーくんが僕の前の前に料理を並べてからすぐ横に腰を下ろす。
僕もあーくんもお尻の下にふわふわのクッションを地面に敷いているから痛くない。
「いただきます。」
食べる前の挨拶をしてあーくんが作ってくれた最高に美味しいご飯を口へ運ぶ。
あーくんは野営食だから街の飲食店で食べるご飯の方が美味しいって言うけれど
僕はあーくんが作ってくれるご飯が大好きだ。
昔はあんまり食べることもできなかったし
役に立っていないのに、こうしてご飯を与えて貰えるだけで僕はお腹も心もいっぱい。
「ん?…あ…あーくん。僕のお米の中にお肉入ってます!!」
「ふはっ!気づいたか?ヤトが洗濯してくれてる間に獲物が獲れたんだ。」
「すごい!もったいない!飲み込めない!」
「ゆっくり噛んで食べなさい。」
「ん!」
丸い形にしたお米の塊の中にお肉を見つけ、興奮のあまりちょっと大きな声であーくんにお肉が入っていることをお知らせする。
干し肉はよく食べるけど、こんなに焼きたての柔らかいお肉は久しぶりだ!
あーくんに言われた通り、ゆっくり沢山噛んで食べて、ごちそうさまをしたらふわっと僕の体が浮いて
気づいたらあーくんの胡坐をかいた足の中に居た。
ちょっと汗ばんでいた体がすっきりしているから浄化魔法で綺麗にしてくれたのだと思う。
あーくんはやっぱり凄い人だ。
28
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
弟に殺される”兄”に転生したがこんなに愛されるなんて聞いてない。
浅倉
BL
目を覚ますと目の前には俺を心配そうに見つめる彼の姿。
既視感を感じる彼の姿に俺は”小説”の中に出てくる主人公
”ヴィンセント”だと判明。
そしてまさかの俺がヴィンセントを虐め残酷に殺される兄だと?!
次々と訪れる沢山の試練を前にどうにか弟に殺されないルートを必死に進む。
だがそんな俺の前に大きな壁が!
このままでは原作通り殺されてしまう。
どうにかして乗り越えなければ!
妙に執着してくる”弟”と死なないように奮闘する”兄”の少し甘い物語___
ヤンデレ執着な弟×クールで鈍感な兄
※固定CP
※投稿不定期
※初めの方はヤンデレ要素少なめ
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
僕を愛して
冰彗
BL
一児の母親として、オメガとして小説家を生業に暮らしている五月七日心広。我が子である斐都には父親がいない。いわゆるシングルマザーだ。
ある日の折角の休日、生憎の雨に見舞われ住んでいるマンションの下の階にある共有コインランドリーに行くと三日月悠音というアルファの青年に突然「お願いです、僕と番になって下さい」と言われる。しかしアルファが苦手な心広は「無理です」と即答してしまう。
その後も何度か悠音と会う機会があったがその度に「番になりましょう」「番になって下さい」と言ってきた。
鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜
犬斗
ファンタジー
〜転生なし、スキルなし、魔法なし、勇者も魔王もいない異世界ファンタジー〜
危険なモンスターが生態系の頂点に君臨。
蔓延る詐欺、盗賊、犯罪組織。
人の命は軽く殺伐とした世界。
冒険者がモンスターを狩り、騎士団が犯罪を取り締まる。
人々は商売で金を稼ぎ、たくましく生きていく。
そんな現実とは隔離された世界で最も高い山に、一人で暮らす心優しい青年鉱夫。
青年はひたすら鉱石を採掘し、市場で売って生計を立てる。
だが、人が生きていけない高度でツルハシを振り続けた結果、無意識に身体が鍛えられ人類最強の肉体を手に入れていた。
自分の能力には無自覚で、日々採掘しては鉱石を売り、稼いだ金でたまの贅沢をして満足する青年。
絶世の美女との偶然の出会いから、真面目な青年鉱夫の人生は急展開。
人智を超えた肉体と、鉱石やモンスターの素材でクラフトした装備や道具で活躍していく。
そして素朴な鉱夫青年は、素晴らしい仲間に支えられて世界へ羽ばたく。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる