私が君と過ごした数分間

妊娠9ヶ月のホームレス

私は家を出る決意をした。

決意というか…

家にはもう居られなかったのだ。

お腹は大きいし、学校にも行けない。

朝お母さんが仕事に出かけ、弟が学校に行くのを見送って…

身の回りの最小限の物を持って、育った家を初めて出た。


行く当てなどなかった。


公園でずっと途方に暮れていた。

気づくと夜で…
まだ1月。

寒さで凍りつきそうだった…


どうしよう…

どうしよう…


私は木嶋さんの名刺を握りしめ、連絡する事も出来ず、その日は一枚の薄い毛布を掛けベンチで眠った。



朝方だろうか。

「おい」

と誰かに声をかけられたような気がしたが目を開けず無視した。


「おいっ！お前桜葉んちのガキじゃねーか」

と、腕を引っ張られ無理矢理起こされた。


寒さと疲れで、ぼやけていた視界がその男を認識すると同時に逃げ出そうとした。



「待てっ！！座れ！」


無理矢理座らされ…カタカタと震える。


「お前何でこんなとこで寝てんだ。」

タバコをため息のように吐き

「その腹。ハッ！」

と吹き出すように笑いながら、馬鹿にするように

「ガキがガキ作ったってか！」

と、また笑った。



この男は…この男こそ私が憎む人間の一人。


殺すぞ、火を付けるぞ、売り飛ばしてやろうか。

そう脅し、私の胸とアソコを触ってきた張本人。


何て最悪なんだ。

私はどこまで運がないんだ。

何でよりにもよって、この男に見つかってしまうんだ…


この最低最悪の鬼畜に。